第5話:輝ける景色の中で
登場人物
主人公:滝野翼
ヒロイン:水澤美紗姫
正直、待たせ過ぎたかなと心配していたが、彼女は俺の心配をよそにベンチで気持ち良さそうに眠っていた。
「どうしよう……」
あまりにも幸せそうな寝顔に声を掛けるべきか?
躊躇してしまった。
この最高に可愛いらしい表情をもっと眺めていたかったが、折角のデートなのだ。
何時までもこのまま寝かせたままにしておく理由にはいかなかった……
とっ、思いつつも彼女を起こさないまま俺は柔らかな彼女の太腿に頭を埋めた。
それは何時も彼女にやってもらっている行為であった。
気分が落ち込んだ時や喧嘩に負けた時、勉強に嫌になった時など、嫌なことがあった時は何時もこうして彼女の太腿に頭を埋めていた。
そして、彼女は決まって俺の頭を優しく撫でながら一生懸命励ましてくれた。
それこそが傷付きながらも俺が彼女の傍を離れなかった理由。
この大切な居場所を護るためならば、俺はどんな苦難にも立ち向かう勇気を持つことができる。
そう信じて、ずっと戦い続けてきた。
「……何をやっているの?」
俺が最高の幸せを噛み締めていると深い眠りから醒めた彼女が驚きの表情で俺の顔を見下ろしていた。
「えっと……これは……」
いきなりの事態に上手く舌が回らなかった。
「美紗姫が気持ち良さそうに眠っていたから……」
「それで……どうして、翼くんが私の太腿の上で横になってるのかな?」
彼女の言う通り、確かに理由になっていなかった。
「ごめんっ。ついつい気持ち良さそうだったから……」
俺は慌てて彼女の太腿から顔を上げようとしたが、彼女の腕がそれを許さなかった。
「ついでだから……何時ものアレをしよ」
彼女は優しく微笑むと膝の上に俺の顔を置いたまま手提げ袋の中から化粧箱を取り出した。
「ここでやるのか?」
あの行為をこんな人の目のある場所でやることに抵抗を感じていた。
はっきり言って恥ずかしかった。
「翼くんも出して気持ち良くなりたいでしょ?」
彼女の甘い囁きが俺の耳を擽った。
「そりゃ、そうだけど……」
彼女の言う通り、それをされるのは嫌ではなかった。
むしろ、やってもらえるならば是非ともやってもらいたい。
だが……こんな人前で無防備な姿を晒すのは、やはり抵抗が感じられた。
「ここじゃ、恥ずかしいから……また今度、家の中でしよう……」
「だ~め、今ここでするの。これは私を放ったらかしにした翼くんへの罰なんだから……」
俺の耳に甘えた声を響かせると静かにジッパーを開いた。
そして、中から棒を探り当てると丁寧に外へと引っ張り出した。
「動くと危ないからじっとしていてね……」
彼女は俺の耳元で優しく囁くとその棒を穴の中へと静かに埋めた。
「んっ……んん……」
「ちょっと……変な声を出さないでよ」
「仕方がない……だろ。誰だって……穴に棒を入れられたら……気持ち良くて……思わず……声が漏れちまう……」
込み上げてくる快楽を必死で抑えながらぎゅっと拳を握り締めた。
「変なの……何時も勉強の息抜きでやっていることじゃない?何を今さら恥ずかしがってんのよ?」
「確かに……そうだけど……」
勉強の合間に俺達は度々こういう行為を繰り返していた。
「だったら……もっと我慢していてね」
「ああ、わかったよ。煮るなり、焼くなり、好きにしろ……」
下唇を噛み締めると声が出そうになるのを必死で堪えた。
「随分と溜まっていたのね。こんなにたくさん出たわ」
彼女は嬉しそうに穴から取り出したものを見せると軽く棒をしごいた。
「今度はこっちの穴ね」
再び棒を握り締めると今度はその棒をもう1つの穴の中へと突っ込んだ。
「ぬぐっ……」
「もうっ……動かないで……」
「んっ……んん……」
「擽ったいから……」
もじもじと恥ずかしそうに太腿を動かすと両腕で俺の身体をしっかりとホールドした。
「うっ……うう……」
「頑張って……あと少しだから……」
「も、もう、のおおお~~」
あまりの気持ち良さに思わずあられもない本音を漏らしてしまった。
「……はい、おしまい」
出した棒を元にあった場所に戻すと静かにジッパーを閉めた。
「どうだった?」
「とても気持ち良かった……」
「そうでしょね。あれだけ出せば、さぞスッキリしたでしょ?」
俺の耳元で優しく囁くと小悪魔のような可愛らしい笑みを溢した。
「確かに……耳の中がスースーするな」
「本当に?どれどれ?」
円らな瞳で耳の中を覗き込むと優しく息を吹き込んだ。
彼女の息は春に吹く風のように何とも心地よい爽快感を身体の中へと響かせた。
「ちょっ……いきなり何をするんだよ」
彼女のいきなりの不意打ちに耳を真っ赤に染めた。
「こうしておかないと耳カスが残るかもしれないでしょ?ほら、反対側も……」
素早く顔を逆方向に向けると同様に俺の耳の中へと息を吹き込んだ。
「だから……気持ちが良すぎなんだよ……」
俺は迫り来る爽快感に身悶えしながら身体を震わせた。
この息抜きはもともと疲れた俺が頭を休めるため、彼女にしてもらっていた行為であるが、ある時を境に耳の掃除も追加されるようになった。
耳の中を綺麗にしておけば、学習内容も入りやすくなるだろうという彼女なりの気遣いであった。
その行為に甘えて俺は何度も彼女に耳の中を掃除してもらっていた。
流石に外でされたのは今日が初めての体験であったが、彼女の手際は日に日に上手くなっているようだった。
あまりの気持ち良さに彼女の膝の上で寝てしまうこともしばしばあった。
「よしっ、そろそろ行くか?」
彼女の身体から上半身を起こすと大きく背伸びをした。
「そうね……そろそろ行きましょう」
ベンチの上に出したものを手提げ袋の中に片付けると腰を持ち上げた。
「とっ、その前に……」
ポケットの中から先程購入したウサ耳パンダ猫を取り出した。
「美紗姫……これやるよ」
「えっ?」
突然のプレゼントに驚きの表情を浮かべた。
「これって……」
「お弁当と耳掻きのお礼だよ。そういうの好きだろ?」
「うん……ありがとう。可愛い……大切にするね」
ウサ耳パンダ猫のキーホルダーを手提げ袋の金具部分に取り付けるとはにかんだ笑顔を浮かべた。
「それじゃ、デートを再開するとしよう」
「そうね……」
彼女の手を取ると俺達はコーヒーカップやメリーゴーランドなどのゆったりとした観覧系のアトラクションを中心に回った。
「……そろそろ時間かな?」
「どうかしたの?」
スマートフォンの時刻を確認していると彼女は不思議そうに首を傾げた。
「そろそろ帰りの時間かなって思ってな」
「もうそんな時間なの?」
彼女もスマートフォンを取り出すと時刻を確認した。
現在の時刻は午後4時45分頃である。
「帰るにはまだ早い気がするけど?」
「最後に美紗姫と一緒に乗りたいアトラクションがあってさ……」
「どこに連れて行く気なの?」
「それは……着いてからのお楽しみってやつだ」
彼女の手を引くと観覧車を目指して歩き出した。
「あれは……もしかして、翼くんが最後に乗りたいって言っていたアトラクションってあれのこと?」
天高く聳える観覧車を指差すと俺の顔を見た。
「ああ、そうだよ。最後に……あれに美紗姫と一緒に乗りたかったんだ」
流石に大きな観覧車の存在を何時までも彼女に隠し通しておくことができなかったため、素直に打ち明けた。
「へぇ、そうなんだ……」
「嫌だったか?」
「そんなことないよ……」
何か随分と素っ気ない態度だな?
もしかして、あまり好きじゃなかったのかな?
彼女の態度を見て今更ながらに乗るべきではないんじゃないかと不安を感じた。
だけど……ここまで来て諦めるわけにはいかなかった。
あそこからの最高の瞬間の絶景を見れば、彼女もきっと喜んでくれると信じて最後までエスコートすることにした。
「思ったよりも人が並んでいないね?」
彼女の言う通り、観覧車の前には10数人ぐらいしか並んでいなかった。
それもそのはずである。
整理券の配布は既に終わっている。
予約時間の5分前に辿り着いていれば、簡単に乗ることができる。
少し早く来すぎたかな?
現在の時刻は16時50分……列に並ぶにはまだ大分早い時間であった。
「それじゃ、早速並びましょうか?」
「いや……整理券があるから。もうしばらく、どこかで時間を潰すとしよう」
普通に並んでしまった場合、先に予約をした人がいない場合は通常の列に並んでいる人を優先的に乗せてくれる。
だが……それは今の俺は望んでいない。
折角、ベストなタイミングで乗れる夢のチケットがあるのだ。
並ばない方が得策であった。
「それまでどうしようか?」
「翼くんに任せるわ」
「そうだな……」
辺りの様子を見渡すと適度に時間を潰せる場所を探した。
……あれだっ!
俺の目に止まったのはこの遊園地の中心にある大きな噴水であった。
「あそこで……しばらく時間を潰さないか?」
噴水を指差すとそこで休憩することを提案した。
「そうね……それも良いかもね」
「それじゃ……」
彼女を噴水へとエスコートすると彼女の服が濡れないようにベストな場所を探した。
※『私の神シチュ』は「膝枕からの耳掻き」になります。
このシチュエーションを描くために主人公の背景を追いながら、その行為に至るまでの過程について納得できる状況を前段階で描かせていただきました。
そんな大切なシーンなのに何ふざけたことを書いてんだと思った読者の皆様……
本当は膝枕からの耳掻きが如何に素晴らしいのかについて熱く語ろうと思ったのですが、それじゃ、何だか面白くないので敢えて性癖ぽくっ紛らわしい書き方をして表現ギリギリを攻めてみましたw
楽しんでいただけたならば幸いです~♪
この物語はまだ続きます。
この後の展開も楽しみにしていただけると嬉しいです。