第6話 誰もが認めるボッチなVTuber! その名はシラユキ!
シラユキがログアウトして12時間。暇し過ぎて寝たけど、逆に寝すぎてつらくなってきた。
暇なので今の自分のステータス画面を開いてみる。
ステータスを見てみるとこの前よりもスキルの詳細が『火の玉』とだいぶ簡略化して纏められていたけど、解説欄に『最近歪み始めた』とか要らないことが追記されてる。
というか【失われし視力の光】って書いて『ブルーライトビーム』って読むのは良くないと思う。明らかに他人の視力を狙ってるじゃん。
これは法律的に良いの!?
「あっ、これ昨日の服……」
ステータスを閉じて部屋中を見て回るとクローゼットの中に昨日シラユキが大量に買った服があった。
「べ、別にそういうのじゃないんだから……!」
これは暇だから仕方なく可愛い女の子が色んな服を着てるのを鏡で見て楽しむだけであって別に僕がそういうのに嵌まったというわけじゃない。
そう強く思いながらクローゼットの1番手前にあったメイド服をワンタッチで着る。
元々着ていた初期装備であるワンピースは綺麗に折り畳まれ、ベッドの上にあった。
メイド服のスカート丈はちょうど膝ぐらいで白い靴下と共に清楚感を出している。
しかし僕は今は違えど、元男子校生だ。当然その下だって気になる。
例え童貞と言われても構わない! 僕はその下が見たいんだ……!
僕は恐る恐るとスカートに手をかけ、ゆっくりと捲り上げた。
そして鏡を見てみるとそこには白い光が現れており、ガッチリとガードをしていた。
「おわった……」
僕は崩れ落ちて両手を地につき、「何故見れないのか」と俯いて考えた。
感覚としては間違えなく履いてないということはない。つまり女の子のパンツというのはR18の描写だったということだ……!
「あっ、メイド服。ズルい!」
「っ!?」
いきなり後ろから声を掛けられ、ビクリと肩が震えた。後ろを振り返るとそこには僕のことをジッと見つめてくるシラユキの姿があった。
一体何がズルいのだろうか……?
「いやっ! これは違っ━━━━!」
僕はシラユキに必死に弁明をしたが、シラユキはただニッコリと笑顔を浮かべて微笑ましそうに見ているだけだった。
そして僕の弁明が尽きたその時、シラユキが僕の肩に手を置いてきた。
「大丈夫だよ。ネムちゃんも女の子なんだからオシャレしたくなるのは普通なんだよ」
シラユキが温かい目で僕のことを気を遣って慰めてくるけど、実際は何も慰めにはなっていなかった。
僕が初期装備のワンピースに着替えるとシラユキの所に1通のメッセージが届いた。
内容を読むとシラユキが少し慌て始めた。
「ネムちゃん! 今からお仕事だよ!」
シラユキはそう言うと僕の手を引いて駆け足で街の広場まで向かった。
広場には昨日までは無かった特設ステージがあった。
━━━━もしかしてあそこに立つの……?
「ネムちゃん……? えっ、ちょっ!?」
僕は必死にシラユキの掴んでる手を振りほどいて逃げようとするが、シラユキも僕の腕を強く掴み、逃がさないように取り抑えようとしている。
STRは僕の方が格段に低いので取り抑えられるのはあっという間だった。だがシラユキに抱き上げられてもなお、駄々をこねる子供みたいに暴れて抵抗した。
「ネムちゃん!! こっち!」
「やぁだ!」
その様子を見ている早めに広場にやって来ているプレイヤーたちは世にも恐ろしいものを見たという顔をしていた。
恐らくダンジョンでの生放送が思ったよりも反響していたのだろう。
「よし! もう逃げられないからね!」
「やぁだ! やだやだやだ!!!」
シラユキは必死に抵抗する僕を肩に抱えてそのまま僕を特設ステージの横にあるテントの中に運び込んだ。
「【動くな】!」
シラユキの管理者能力によってまるで紐に縛られてるかのように動けなくなった僕。
するとシラユキは僕に顔を近づけて睨むように言った。
「他所様に迷惑をかけるのダメ絶対。即罰則モノ。……大人しくできるよね?」
その時のシラユキはいつもの明るい性格とは打って変わって、まるで悪魔の化身のようだった。
そんなシラユキに対して、僕は怯えながら首を縦に振ることしかできなかった。
「シラユキさん、出番です」
「はーい! ネムちゃん、行くよ?」
「はい……」
シラユキはスタッフさんに最高の笑顔をして高い声で返事を返すと僕の方を睨み、低い声で威圧してきた。
この日、僕はシラユキの裏面を見てしまったのだった━━━━━━
「というわけで本日のゲストは人気VTuber シラユキさんです!」
「はーい! どうもこんにちはー! リンゴ好きなVTuber! シラユキです! 今日はよろしくお願いします!」
シラユキが挨拶している横の椅子に座らされているが、たくさんの観客たちの視線に凄い緊張している。
「あれ? シラユキさん二人になってませんか?」
白々しい司会役の人の演技が入る。ここで僕の紹介という感じなのだろう。
「この娘は私の妹だよ!? 私の妹!」
「でもその娘、サポートキャラですよね? あれ? それほどにまで話し相手が欲しかったんですか?」
「ボッチじゃないから!!」
シラユキは大声を出して司会役の人に否定する。
僕が死んでからサポートキャラになるまで1ヶ月ぐらい掛かってるので、その間にボッチがバレてそういう属性が付いてしまったのだろう。
「ボッチですね」
「ネムちゃん!?」
僕は基本的にシラユキに「ボッチですね」と言ってるだけで60分が過ぎ、公演が終わる頃となった。
「ではシラユキさん、第2回チーム対抗戦について最後に一言お願いします」
「人数で調子ノッてる諸君にソロの強さを教えてあげるよ!」
「はい、優勝宣言いただいた所で本日は終了させていただきます。ありがとうございました」
本人は優勝宣言したつもりはないのだろうが、残念ながらチーム対抗戦を1人で戦うアホなんてそうそう居ない。
なのでこれはもう優勝宣言と言っても過言ではない。
というわけで明日から第2回チーム対抗戦の始まりだ!
名称 ネム(サポートキャラ)
ランク:C- 親密度:40%
解説:人気VTuber『シラユキ』の可愛い妹。触れた異性を【魅了】にするが、最近歪み始めた。
・特性:【自動魅了付与】、【破壊不能】
・パラメーター
STR:70(+70) INT:210(+20)
AGI:350 DEX:80%
・スキル(10枠中5枠使用中)
・使用スキル
【ファイアボール Ⅳ】 【ウィンドカッター Ⅵ】
【アイスランス Ⅱ】
・常時スキル
【歪み始めた人工知能】【守護者】
・装備品
【契約の腕輪】【絆の短刀】
・固有スキル
ーーーーLv.0