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どうも悪役令嬢です。婚約破棄ありがとうございます。隠しキャラのお嫁に行きます。

作者: 下菊みこと

どうも悪役令嬢です。婚約破棄ありがとうございます。隠しキャラのお嫁に行きます。

私は、あんなに愛されていなかった。


「オーギュスティナ・ギレム!貴様との婚約は破棄させてもらう!そして今ここで、私の愛しいウラリー・コルベールとの婚約を宣言する!」


学園の卒業パーティーで、いきなり私にそう突きつけるのはリュドヴィック・フィリップ王太子殿下。…まあ、そうなりますわよね。だって私、悪役令嬢ですもの。


はじめまして、ご機嫌よう。私、オーギュスティナ・ギレムと申します。公爵令嬢です。そして、この乙女ゲームの世界の悪役令嬢ですわ。今、婚約者に婚約破棄されているところですの。


私、前世で毎日のようにこの乙女ゲームをプレイして、いつも王太子ルートを選んでいましたわ。あまりにもリュド様が好きだったから。二次元とわかっていても、本気で恋をしていましたの。とても楽しかったですわ。そして、それを見た異世界の神さまはあまりの私の執着ぶりに一周回って感服したとおっしゃって、私の次の人生を推しキャラの婚約者にしてくださいましたの。でも、私が望んでいたのはヒロイン転生ですわ。ヒロインに向ける柔らかな笑顔、花を愛でるような優しい声、暖かな指先。それらを求めていましたのよ。


「承知いたしました」


えっ、という顔をするウラリー様とリュド様。私が何か言ってくると思っていたのね。残念ですが、私、もう諦めましたの。


「ま、待て、貴様の断罪を…」


「婚約者として至らなかった私を身分剥奪の上国外追放されるのでしょう?」


またえっ、て表情。仮にも王太子殿下とその婚約者がしていい表情ではありませんわよ。


「そ、そうだ。だが貴様への断罪は婚約者として至らなかったからだけではなく、ここにいるラリへの嫌がらせの結果だ!」


「そうです!最後に一言謝ってください!」


「あら、それはごめんあそばせ。だって私、婚約者であったのにも関わらず、ウラリー様に向けるような愛を向けていただいたことが一度もないんですもの」


せめて。せめてウラリー様と出会う前に、少しだけの間でもその愛を向けて貰えればそれでもよかった。喜んで身を引いたし、なんなら本当に悪役令嬢を演じてもよかった。でも、リュド様は私とはあくまでも政略結婚。愛を育むつもりなんてありませんでしたわ。例えウラリー様の魅了魔法にかかっているからといって、もう情状酌量の余地もありませんわ。


「ふん!だからといってラリに嫌がらせを行うなど、公爵令嬢として恥ずかしくないのか!」


「勘違いしないでくださいませ」


私は切れた。感情の起伏に合わせて雷魔法が発動し、私の周りがばちばちと音を立てて火花を放つ。


「私は嫌がらせなどただの一度も行っておりませんわ。証言も証拠もありましてよ。ウラリー様が事前にリュド様に対し私に虐められたと証言された日、私はいつも早くに帰って王城で王太子妃教育を受けていましてよ。あと、一つ言っておくと、公爵令嬢がたかだか男爵令嬢を虐めたところで何の問題にもなりませんわ」


「なっ…な、」


リュド様が口を開く前に終わりにする。


「では、国王陛下。裁定を。」


「っ!?…父上!?」


私の言葉で、別室で待機し今までの様子を投影魔法を使ってみていた国王陛下がパーティー会場に入ってくる。


「バカ息子め!一体何をしておる!」


「わ、私は…っ!私はただ、婚約者として相応しくないオーギュスティナを断罪し、愛するラリを婚約者としようと!」


来るはずのなかった、怒り心頭気味の父王にややたじろいだものの、すぐにそう切り返すリュド様。


「それがバカだといっておる!簡単に魅了魔法なんぞにかかりおって!大体オーギュスティナ嬢以上に王太子妃に相応しいものはいないだろうが!」


父王のあまりの怒りにちょっと冷静になったのか、リュド様は魅了魔法、という言葉に反応した。


「魅了魔法?」


「ああ、そうだ!お前はそこな娘を愛してなどいない!」


「ちょっとま…」


ウラリー様が会話に入ってこようとするが、国王陛下に俺は発言を許していない!と一喝されて黙った。


「神官長!こやつの魅了魔法を解いてやれ!」


「はい!」


そうしてリュド様にかかっていた魅了魔法は解かれました。リュド様は真っ青になります。


「リュド様…」


ウラリー様が縋るような瞳でリュド様を見つめますが、リュド様は自分の腕に胸を当てるように抱きついているウラリー様を突き飛ばす。


「きゃっ…」


「貴様っ!よくも私を謀ったな!」


「リュド様…!」


ウラリー様は悲鳴のようにリュド様の名前を叫ぶ。


「ティナ、すまなかった。迷惑をかけて…」


「いえ、リュド様との関係もここまでですもの。最後の置き土産ですわ」


「え?」


呆然とした様子のリュド様。そりゃああれだけバカにされて元鞘に戻るバカはいない。


「バカ息子が!ここまで迷惑をかけたのだ、オーギュスティナ嬢とお前の婚約は解消だ!そしてお前は廃嫡だ!第二王子を王太子とし、オーギュスティナ嬢の婚約者とする!」


「なん…で、」


「自分の胸に手を当てて考えよ!」


「ティナ!」


「私はここで失礼しますわ。それでは皆様、ご機嫌よう」


最後に綺麗にカーテシーを決め、学園を後にする。ヒロインが急に暴れ出したが知らない振りをした。…多分、ヒロインが狙っていたのは王太子ルート後の隠しキャラルート。私はいつもフラグを折って王太子ルート一直線だったが、王太子ルートの最後の選択肢に王城で第二王子に会えるルートがあるのだ。


隠しキャラの第二王子、ミカエル・フィリップ様…いえ、ミカエル王太子殿下はリュド様と正反対。リュド様が天才系溺愛王子なら、ミカエル王太子殿下は努力型俺様王子だ。第二王子でありながら、その立場に甘んじずに、ひたすら努力を積み重ねて父や兄の背中を追いかける。そのため自分にも他人にも厳しく、プライドが高い俺様キャラ。私はあまり好みではないのだが、同じく乙女ゲームを何度もプレイしていた友達曰く本当は優しくて一途なちょっと不器用な人らしい。将来の義弟として接したことも何度かあるが、苦手なタイプではないし、友達の言っていた通りの人なんだろうという印象。うん、嫁ぎ先としては悪くない。あとは愛を育むことが出来れば完璧だと、そう思っていたのですが…。


ー…


「ティナ!今日も可愛いな、愛しているぞ!」


「ティナ…早く俺だけのものになってくれ」


「ティナ。他の男なんかより俺のことを見てくれ」


ティナ、ティナ、ティナ、ティナ、ティナ。自分の名前がゲシュタルト崩壊しそうですわ。私とミカ様はお互い、思っていたより相性が良かったようですぐにラブラブカップルになった。…のはいいのですけれど、ちょっとミカ様の押しが強いんですの。


でも、私もここまで愛されると悪い気はしませんわ。


失恋したらさっさと次に行く。それも一つの選択肢ですわね。


ヒロインは俺様キャラ好みでした

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