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僕は二人の君に恋をした  作者: ラリックマ
僕と彼女と彼女
6/12

探求心

 下駄箱で靴に履き替えると、僕は自転車に乗りそのまま通っている塾に向かう。

 学校はだいたい3時30分ほどで終わるので、5時から始まる塾には十分間に合う。

 急いで校門を抜けて、寄り道もせずに一直線に塾に行く。

 10分ほどして塾に着くなり、僕は塾長に挨拶をする。


「こんにちは酒井先生」


「お! 勇気。今日も早いな」


「はい、今日もいつも通り早く来ました」


 いつも通り塾長とそんな会話をする。

 この酒井先生は、僕が心を開いている数少ない人間だ。

 もうかれこれ4年ほどの付き合いになる。

 中学の頃からずっとこの先生だけは変わらずに居るので、いやでも仲良くなる。

 僕の通っている塾は個人塾なので、各々好きなように勉強する感じになっている。

 僕も自分の好きなように好きな場所を進めるのが好きなので、この塾のスタイルに合ってた。

 一応授業はあるのだが、授業というよりも自習に近い……。

 なので僕も気楽に勉強ができるというものだ。

 授業開始まであと一時間ほどあるので、鞄から塾の課題を取り出すとそれを復習する。

 僕が塾の課題を机に並べて勉強を始めようとすると、パソコンの前で座っていた酒井先生がプリントを持って近づいてきた。


「どうしました先生?」

 

 僕がそう質問すると、酒井先生は持っていたプリントを僕の目の前に出した。


「見てみろ勇気! この前の模試の結果が帰ってきたぞ。見ろこの順位を! 先生は鼻が高いよ」


 酒井先生にそう言われてそのプリントを見てみると、全体で128位と書かれていた。

 さすが僕だな……。

 何万と受けているであろうこの全国模試を三桁台なんて天才すぎる。

 四六時中常に勉強しているだけあると、我ながら悦に(ひた)る。

 だがここで調子に乗らないのが僕だ。

 酒井先生の方を向いて、『まだまだですよ』とわざと謙遜(けんそん)する。

 心の中ではそんなことを思ってはいないが、ついつい口ではそんなことを言ってしまう。

 あぁ、とても気持ちがいい。

 僕はこのために勉強をしているといっても過言ではない。

 この”本当はすごいと分かっているけど自分ではそんなこと思ってませんよ”と言った態度を取るのが最高に気持ちがいい。

 僕は渡された模試の結果表を鞄にしまうと、課題の続きを始める……。

 しばらくして5時になり授業開始のチャイムが鳴ると、酒井先生が授業の始まりの挨拶をする。


「えーそれじゃあもう授業が始まるので、今日も元気に行きましょう。それじゃあお願いします!」


 元気よく挨拶する先生に合わせて、僕たち生徒も挨拶をする。

 それからは普段通りに課題を進めたりして、いつも通りの時間に塾が終わった。

 

「それじゃあ勇気。また金曜な」


「はい先生。それじゃあまた」


 そういって塾を後にする。

 そして僕はいつも通り自転車にまたがり、いつも通りのルートを通って家に帰る。

 自転車に乗り、遅くも早くもない速度で走っていると、学校の近くの大通りに出た。

 ここの交差点の信号を渡れば、後は何もなくすぐ家に着く。

 僕がまだかまだかと信号を待っていると、僕の反対側に僕と同じ制服を着た生徒が信号待ちをしていた。

 別に学校の近くだし特別珍しくもないのだが、その生徒は鞄も何も持っていない。

 普通この時間なら部活帰りとかだと思うのだが、その生徒は遠目から見たら何も持っていなかった。

 どうして何も持っていないのだろうと疑問に思っていると、信号が青になった。

 僕はその信号を渡る際にどんな生徒なのか少し気になったので、その生徒の横を通るように信号を渡ると、その生徒の顔を見て僕は驚愕(きょうがく)した。

 透き通るような白い肌と長い髪に、あまり高くない伸長。

 この学校の生徒ならだれもが知ってるであろう人間……。

 その生徒とは、あの笹川詩織だったのだ……。

 こんな時間にこんなところであの有名人が何をしているのか……。

 彼女の背中を見ながらそう思った。

 正直気になる……。

 今朝のあの質問のせいもあってか、僕はやたらと笹川詩織を意識している。

 ……。

 よし。

 僕は彼女が今から何をするのかこの目で確認することを心に決めた。

 


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