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僕は二人の君に恋をした  作者: ラリックマ
僕と彼女と彼女
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嫌いな人間

「お前も昨日のドラマ見てたの!? 俺もなんだよ!」


「いやーあれ見てない奴は時代遅れでしょ!」


 教室に(ひび)くクラスメイトの笑い声。

 自分が置いて行かれないようにするために、無理して話題を振っている。

 実に滑稽(こっけい)だ……。

 どうしてそうまでして群れようとする?

 好きでもない奴とどうして一緒にいようとする?

 実にくだらない。

 教室の端で一人、勉強をしながらそんなことを思う……。

 どいつもこいつもみんな群れてばかりだ……。

 自分一人じゃ何もできないから群れるしかない無能共が……。

 どうせ卒業したら関わりがなくなるような薄い関係の癖に、あたかも周りに仲のいい様に見せつけている。  

 僕はああいう群れていないと何もできない人間が大っ嫌いだ。

 だが人間というものは基本的に集団で生活している。

 いや……させられている。

 集団で生活することを強制され、それが出来ない人間は孤立させられる……。

 でも仕方ない。

 それが世の中の摂理(せつり)なのだから。

 誰が決めたことかは知らないが、この世界はそういう風に出来てしまっている。

 その中で僕は孤独だ……。

 多分いろいろと合わないのだろう。

 他人とも、世界とも……。

 

「はーい皆さんちゅうもーく」


 ガラガラと教室のドアを開けて入ってきた女性は、クラスに入るなり手をパンと叩いてクラスメイトの注目を集める。


「今日からこのクラスの担任をさせてもらう鈴木(すずき)京子(きょうこ)でーす」


 おっとりした雰囲気のその女性は、今日から高校二年生になる僕の担任になる方のようだ……。

 優しそうな人で良かったと少し安堵(あんど)する。


「えーと、これから全校集会があるので番号順に廊下に並んで体育館の方に向かってください」

 

 担任がそう指示を出すと、座っていたクラスメイト達が立ち上がりぞろぞろと廊下の方に並んでいく。

 僕もその波に乗るように廊下に出る。

 僕の苗字は秋口(あきぐち)なので、前から三番目だ。

 僕がその場所に並ぶと、後ろの方から女子達の愉快な喋り声が聞こえてくる。


「いやーあの詩織ちゃんと同じクラスだなんて私嬉しいよ!」


「本当だよ! 笹川さんすごく有名だし前から仲良くなりたい! って思ってたんだ」


「そんな、私なんか別にたいしたことないよー」


 そんな愉快な話し声が聞こえてくる。

 今話題の中心になっているのは、あの有名な笹川(ささがわ)詩織(しおり)のようだ……。

 同じクラスになったこともないし、喋ったこともない僕ですらその名前を知っているほどの有名人だ……。

 容姿端麗(たんれい)、頭脳明晰、誰にでも分け隔てなく喋るその性格の良さなど、どれをとっても完璧らしい……。

 僕が一番嫌いなタイプの人間だ。

 そんな完璧で非の打ち所がないような奴が僕は嫌いだ。

 嫉妬とかそういうものは無い。

 ただ純粋に気持ち悪い……。

 全て完璧にこなせます?

 そんなの人間らしくなくない。

 人っていうものは失敗して成長していくものだと僕は思っている。

 それなのに失敗しない!?

 こんな奴のことを気持ち悪いと思わない方がおかしい……。

 っと、良くも知らない相手のこを毛嫌いしてしまう僕の悪いところが出てしまった。

 でも別に誰かに言うわけでもないし、ばれたところでどうでもいい。

 他人の評価を気にして生きていくほど僕の心は狭くない。

 それに彼女と僕は正反対だ。

 多分この先一生関わることはないだろう……。

 そんなことを思いつつ、行列に流されるように僕は体育館に向かう。

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