第4話 初代国王
王権のスキルの留意点に回数制限を設けました。流石に回数制限なしは強力すぎるので。
『まぁまぁ、そんなに警戒しないでくれよ。僕はイスヴァール王国初代国王ウルガドラ・ランダル・イスヴァールだ。』
『初代?生きてもいない人間がどうやって俺に話しかけているんだよ。』
『君が持っているスキルのおかげかな。僕が使った【王権】と【譲渡】のスキルはうまく発動したようだね。君が持っているスキルはね、僕と思考が最も似通った人間に僕のスキルを継承させるために作られたものなんだよ。僕が望んだ形とは少し違ったけどね。』
【譲渡】の能力は有名だ。初代国王は犯罪奴隷などから有用なスキルは取り除き自分の側近に与えることでこの国を作り上げたとされている。2つのスキルの詳細は
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【特殊能力】 譲渡
・発動条件
発動する対象同士への接触
・発動内容
自身または他者の保有する能力を自身以外の生き物に移す。
・留意点
自分自身へ他者の能力を移すことはできない。
【固有能力】 王権
・発動条件
使用者による発動意識あるいは宣言。
・発動内容:以下の内容から選択
希少能力以上を持たない相手に対する強制命令。
代償と引き換えに自身に対し絶対の忠誠を誓う騎士の召喚。
代償と引き換えにこの世界に干渉しうる限りの自身の意思の反映。
・留意点
強制命令には回数制限あり(1日につき3回)
代償として使用されるのは魔石などの魔力のこもったものか人の命。
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だったよな。これでどうやって俺に英雄模倣を渡したって言うんだよ。
『そんなの簡単さ。僕の【譲渡】を【王権】でスキルの内容を書き換えた上で未来に存在する僕に最も波長の合う人間に僕のスキルを全て使えるようにしたんだ。だけど、まさか英雄全てとは思わなかったよ。』
俺の思考を読まれた?
『ここはいわば僕が作り出したスキルが君の意識を呼び込んだ世界だ。君がいま考えていることは基本的に僕に筒抜けだよ?』
『じゃあ、隠し事とかできねぇじゃん!』
『うん。無駄だね。』
とりあえず、こいつのおかげで俺にはスキルがあるってことだよな。確かに有用なスキルだけど。
『それは置いといてさ、君にやってほしいことがあってこのスキルを託したんだ。僕の子孫が継承してくれるのが嬉しかったんだけどまぁいいや。』
『いいのかよ、、、』
ウルガドラ王の心残りは簡潔に言うと腐敗した貴族の粛清。この国を建国する際に周辺の有力者を使い無理やりまとめ上げたために完全な忠誠を持つ家臣が少なく、金儲けするために汚職が多かったと言う。そいつらのことが心残りで晩年に自分の意思を継ぐものを探すためにこんなことをしたらしい。
『うんうん。君も感じていただろ?この国の汚さにさ。僕に近しかった人たちはそんなことなかったんだけどこの国の大半の貴族はそういう奴らなんだよその中でも特にひどい貴族が上流貴族にいてね、そういう奴らのせいで国の発展が遅れているんだよ。だから君には王族に協力してこの国を変えてほしいんだよ。その為にできることはしてあげるよ。起きたらステータスを確認してみてよ。それじゃあね。』
意識がだんだん薄れ気がつくと宿の天井が見えた。とりあえずステータスをチェックしておくか。
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・名前 ルクソル
・年齢 10歳
・種族 人族(混血)
・能力値
Lv:1
HP:200/200
MP:31/31
攻撃力:40
防御力:37
素早さ:21
・魔法
なし
・能力
【固有能力】
英雄模倣
・加護
英雄王の加護
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加護ってのが増えているな。なんか効果があるのかな?
『見てくれたみたいだねぇ。詳細を見てみなよ。』
今の声ってウルガドラ王?なんでだ?とりあえず詳細を
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英雄王の加護
・効果
Lv上昇時にMP上昇の効率化。
助言の受け取り。
【英雄模倣】で英雄王の能力を使用する際に消費されるMPを軽減。
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『どうだい、役に立つだろ?とりあえず僕のスキルを使ってみるといいよ。じゃあ頑張ってね。あとLvは早めに上げて置いたほうがいいよ。』
ありがとうございます。これで色々試せそうだな。
王宮より派遣された騎士たちはルクソルたちと入れ違いになるようにピッツに到着した。
「まだこの街から出てないと思いますよ?」
ガルバンに言われた通りに門番の騎士は中央騎士たちを足止めしていた。孤児院で連れ去られた後だと聞きすぐに門番を確認しに来たのだ。
「そうか。情報をありがとう。数日はこの街で情報を集める。各員情報を集めてきてくれ。」
(ガルバンさん何に手を出してんだよ。中央騎士が動くとか相当な事態だろ、、、)
実際中央騎士が活動するのは、国を脅かす対罪人が逃亡した際か、国家反逆罪を書けられた人間を捕縛する際など国の一大事に駆り出される騎士たちであり、戦争では国王を守る近衛兵や龍種などの災害クラスの魔物を相手にする精鋭部隊である為普通は外に出ず、王都ランドアルトで待機しているのがほとんどだ。
(まさか国の要人って叛逆者じゃないよな?俺まで国家反逆罪に問われかねないぞ。)
その心配は実際杞憂なのだが、門番は知る由もない。
2日後中央騎士副団長ローアン・バルザックは宿でため息をついていた。
「だいたいことが起こったのは2ヶ月近く前のことなのに情報がそんなにぽんぽん出てくるわけもねぇんだよなぁ。団長は何もわかってねぇよ。子供の行動力舐めすぎだぜ。俺がガキの頃は10歳の時にはすでに王都に自力で行って兵隊として志願したってのに。貴族の価値観だけで物事語りやがってヨォ。」
本来ルクソルを探す仕事は王国から出された出動命令であり、軍を指揮するのは団長であるクルスト・ヴァン・ロックの仕事であるが貴族出身の彼は孤児のためなんかに動くのが嫌という考えがありすべての仕事をローアンに押し付けていた。
「バルザック隊長。集められる情報はこれが限界です。あの門番も自分が贔屓にしている馬車に孤児が乗っていると気がつかなかったようですし、すでに王都へ向かっているのかもしれません。」
「ったくよぉ。ガルバンのやつ何考えてんだ。とりあえず早馬を王宮に向かわせろ。絶対に他の貴族に知らせるな。副団長権限で情報を漏らしたやつには厳罰を処す。そして騎士連中を全員集めろすぐに出立する。」
「はっ!了解しました。」
会話を終え、騎士が足早に宿をさっていくと同時にローアンは王都へ戻る準備をし始めた。