第3話 旅立ち
1週間が過ぎ、ついにピッツを離れる日になったが
「納得できません。この子にはなんのスキルもないのです。外で暮らし、生きて行くには辛過ぎます。それにまだ成人してもいないのですからなおさら孤児院から出すわけには生きません。
院長が反対しまくっていて旅立つことができずにいた。
「だから、私が責任を持つと言っているではないですか。何が不満なのですか?」
ガルバンが聞くと院長はかなり怒った様子で
「だからこそです。商人の方を完全に信用するわけにはいきません。」
少し前ある商人から格安で小麦を買ったところ半分以上がクズ同然でパンすら作れなかったことから自分から話を持ちかける商人を院長はあまり信じなくなっていた。だけど、それでは俺の道が開けることはない。
「院長俺からも頼むよ。この目でいろんな世界を見てみたいんだ。だから、お願いだ!俺を縛り付けないでくれ!」
それでも院長の表情は変わらなかったがガルバンがある提案を出したことで渋々納得した。
ガルバンはこれから先1年間小麦をピッツの孤児院に対し原価で売りつけることを約束し浮いた金で他の手が回っていないところに金を出すなり、いざという時のために貯蓄するなりすればいいと提案しその代わり俺を連れて行くと言った。
「あんなこと言ってよかったの?金のことで院長は納得していたけど多分不信感は拭えていないよ?」
「いいんだよ先行投資の一部だと考えれば安いもんだ。それに小麦は売れ残っているやつが少しあるから在庫処分になってちょうどいいしな。」
商人の考えはイマイチわかんないけどまぁいいか。
そんな会話をしていると、街の関所にきた。
「次は、、、おぉガルバンさんじゃねぇか!さっさと終わらせるよ!」
「おぅ!いつもありがとな!女将さんの調子はどうだい?」
「あんたが売ってくれた薬のおかげですっかり良くなったよ!また頼むぜ?」
「そうかいそうかい。そこで一つ相談なんだが、もし中央騎士団のやつがきたら少しだけでいいから足止めをしてくれないか?少しだけでいいんだ。実は貴族に狙われている要人がいてな、、、」
「薬を安くで売ってくれたしなぁ、、、あんまり期待はしないでくれよ?」
「助かるぜ。また来たときにはなんか買ってくれよな。」
関所を抜け俺は初めてピッツの外に出た。初めて見る外の景色に俺はずっと興奮していた。外は見渡す限りの平原で少し先に山が一つある程度。その山の向こう側に目的の王都があるが山を迂回して通り直進できないために時間がかかってしまうらしい。予定では13日で着くらしい。ソフィアたちとは違うガルバンと一緒の馬車に俺は乗っていた。
「2〜3日で着く村で休憩しよう。領都エルサーレを通らないからやはり時間がかかるな。」
「ガルバンさん、なんでエルサーレを通らないん、、、ですか?」
敬語というのは不慣れなため語尾が不安になってしまう。
「ははっ!俺たちしかいないときは敬語なぞ使わんくていいぞルクソル。」
「助かるよ。どうして通らないんだ?通ったほうが早いんだろ?」
「お前のことを報告しなかった貴族がその街に住んでいるんだよ。近道したいからってそこを通ってお前が見つかったら本末転倒だ。ここの領主ウサンはすでに失脚が3日前に確定している。まだ後任が決まっていなくて領主の仕事をしているがな。そのせいでお前を探す目的が変わっている。」
「見つかったら消されるってことか、、、」
つくづく思うよ、貴族ってのは腐っているってな。この国はどうして、いや貴族が腐っているのはこの国だけではないのかもしれないな。
『そうだな、、、』
今なにか聞こえた気がしたが気のせいか?ともかく俺はこんなところで死ねない。俺は英雄になるという夢がある。ならば道中でやることは1つ、能力の効率運用を考えておくべきだと思った。【英雄模倣】の統合・分割を試すことにし、この前少しだけ使用した【攻撃増強】Lv1というスキル、それと悪ガキを倒した【空間把握】Lv3を統合してみた。
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【攻撃増強】Lv1
・発動条件
使用者による発動意識あるいは宣言。
・発動内容
発動者の筋力を強化し攻撃力を3%上昇させる。
・留意点
強化できる範囲は発動者の筋力量による。
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孤児院の壁を直す木材運ぶ時に使ったけどすごい楽だったんだよなぁ。だけど筋力量によって強化できない場合もあり、俺の筋力量だと3%までの強化しかできなかったためLv1以外は使っても意味がなかった。筋トレしよう。それは置いといて、さっそく統合してみるか。
俺はすぐにMP30を消費して2つのスキルを統合した。できたスキルは【範囲攻撃増強】だった。
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【希少能力】 範囲攻撃増強Lv2
・発動条件
使用者による味方の認識。
使用者による発動意識あるいは宣言。
・発動内容
使用者が味方と認識した対象(2〜3人)の筋力を強化し攻撃力を4%上昇させる。
・留意点
強化できる範囲は発動者の筋力量による。
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レアスキルができるとは思っていなかった。統合したスキルは過去に使用したスキルの履歴から消え再度使うまで復活しない。統合や分割は慎重に行うべきだな。道中はこんな感じでスキルを確認していった。
3日が過ぎようやく村が見えてきた。
「今日はこの村で護衛の冒険者を雇う。」
「なんでピッツで雇わなかったの?」
「賃金がバカみたいに高くなるんだよ。この村まで大した魔物も出ないのにかかる費用は全く同じとくりゃぁ雇わずに自分らでなんとかしたほうがいいだろ。」
ここまでの道中3日分の賃金をプラスで支払うのはかなり勿体無いらしい。金銭感覚は良くわかんないけど勿体無いらしい。村に到着した後、宿に向かわず護衛依頼を出すために冒険者ギルドへと向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ。ご依頼ですか?こちらの用紙に条件を書き込んでください。」
ガルバンは慣れた手つきでさらさらと内容を書き込んでいきすぐに依頼を出した。俺も文字の読み書きできるようになりたいな。その後俺たちは宿に行きみんながそれぞれの部屋で寝始めた。気がつくと俺はよくわからない空間にいた。
『やぁ。初めましてルクソル。』
『誰だよあんた』
目の前には偉そうな感じの人が立っていた。