第1話 能力
「なんだこれ、、、」
俺は自分のステータスを見てスキルがあったことに驚いた。あの貴族は俺みたいな孤児に金を使うのが勿体無いと思ったのかもしれないな。でもスキルがあるのであれば、とりあえずは安心だ。どんなスキルかはわかんないけど固有ってあるぐらいだし、きっとすごいスキルなんだろう。
ステータスは読むというよりかは感じるという感覚で、俺みたいな孤児でも内容は把握できた。
「そうですよね、、、スキルがないと不安ですよね。ですが大丈夫です。レアスキル以外は成長すると手に入れられることがあると言います。剣術などがそうですね。」
「へー、スキルって絶対に手に入らないわけじゃないんだな。」
「えぇそうです。さて、ステータスについてですが、Lvを上げることで基本ステータスが上昇します。HPは残りの体力で0になると死に、MPは魔力量で0になると気怠さを感じ動きが鈍くなってしまいますが、元からMPが0の人もいます。そう言った人はそもそも魔法が使えませんし、気だるさなどもないそうです。攻撃力や防御力は指標です。その数値よりも自分の数値が低いからと言って攻撃が通らなかったり、攻撃を防げないというわけではありません。素早さは走った際の限界速度を表しています。魔法発動速度にも関わっていると聞いたことがありますね。スキルについてはご自身で念じれば詳しく詳細が出ます。これからスキルを身につけても使い方がわからなければ意味がないですからね。」
「ありがとうございました。」
シスターは微笑み、手を振りながら見送ってくれた。
俺はシスターに言われた通りスキルの詳細を念じてみた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【固有能力】 英雄模倣
・発動条件
使用者による発動意識あるいは宣言。
MP消費30〜(英雄の所持した能力を使用する時のみ)
・発動内容:以下の内容から選択
この世界に存在した英雄の能力の鑑定、または使用。
過去に自信が使用した能力を統合、または分割使用。
統合または分割した能力の貯蔵。
この世界に存在するあらゆる能力の鑑定。
・留意点
この能力による自身への新たな能力の付与は不可。
MPが足りない場合代償を必要とする。
効果時間はその能力による。
能力のみの模倣でありステータスは変化しない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かなりすごいスキルなんじゃないかこれ、、、MPか代償を支払えば英雄が使っていたスキルを確実に発動できるんだもんな。だが、代償がなんなのかはいまいちわからないな。このスキルについては秘密にしたほうがいいな。絶対に厄介ごとに巻き込まれる。
「一体あの光はなんだったのだ?」
教会で仕事を終えた貴族は呟く。
「あんな光は初めてみたレアスキルを発見したときよりも眩かったがなんのスキルも表示されなかったな。もしや転移系のスキルなどの特殊能力かとおもぅたがあんな孤児院のガキに発現するわけもないな。ガハハハハハハハハ!!!!」
その言葉を聞きシスターは
(あれはあの鑑定水晶では読み取れないほどのスキルなはず。一応司祭様を通して国に報告すべきかしら、、、)
ルクソルの能力が読み取れなかったのは用意されていた鑑定水晶が特殊をギリギリ読み取れるもので、固有を読み取ることはできない中級水晶であったからなのだ。本来ユニーク級のスキルは発現することがあまりなく20〜30年に1〜3人いるかどうかであり眩い光に包まれた後、スキルが表示されない場合を発見次第報告するように国王が定めていた。王都ランドアルトで上級の鑑定水晶で確認するためだ。そのことを忘れていたこの街ピッツを含むエルサー領の領主であるウサン・クーク・エルサーは上機嫌で自分の住む領都エルサーレへと帰って行った。
1ヶ月後イスヴァール王国王都ランドアルトにて
「なんということだ、、、」
国王アインザック・アイエス・ランダル・イスヴァールはことの重大さに嘆いていた。地方協会からの報告によりこの国に現れたはずの固有能力保有者をみすみす手放してしまったのだ。
「リューベス!!この報告にある子供を探せ!!まだエルサー領からは出ていないはずだ。」
「ここからエルサー領まではどんなに急いでも6日。ピッツまではさらに5日はかかります。その頃には出てしまっているやもしれませんな。」
「構わんさ。かの子供を失うだけで我が国は損失でしかない。これ以上の損失なぞ存在しまい。」
「承知しました。すぐに騎士を派遣します。」
「うむ。任せたぞ。」
この出来事で宰相リューベス・ライノス・インタリオは激務に追われる日々を過ごすことになる。
ステータスチェックが終わってから2ヶ月間、俺はひたすらバカにされた。理由は簡単だ、、、俺にはスキルがないからな!ユニークスキルはあるがあれは使い勝手がわからなかった。スキルを発動しようとするといろんな名前が出てくる。まずMP30で使えるスキルを探す。そしてその中から一つを選びスキルをさらに使うこの段階で相手は目の前で、なすすべもなくボッコボコ。だからこそ未だに孤児院から出られずにいる。いつもボコボコにされて帰ってくる俺を見て、院長は俺のことが余計に心配になり15歳までは外に出さないつもりらしい。
「このままじゃまずいよなぁ。」
行くあてもなくフラフラとしていると集団でリンチしている現場を見てしまった。関わっても勝てないしスルーする、、、いや待てよ。ここで救えば俺は彼らにとっての英雄になれる。英雄への第一歩だ。そうと決まれば早速行動開始だ。
「【英雄模倣】」
その中で俺が使えるのはMP30で発動できるスキルのみ。膨大な量のスキルの中から選んだスキルは【空間把握】のスキルだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【能力】空間把握(Lv3)
・発動条件
使用者による発動意識あるいは宣言。
・発動内容
敵の数人(3〜5人)の位置の完全把握。
・留意点
効果時間3分
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
LvとMPがないせいでLv3以上のスキルは使えないが十分だ。
「おい、お前ら何やってんだよ。弱い者いじめか?」
「誰かと思えばスキルなしのへっぽこじゃんか!またボコボコにされたいのか?混ぜてやるよ、ハハハッ!」
「早くボコそうぜ。どうせ雑魚なんだしよ、ギャハハ!」
俺はからかってくることを意にも介さず、リンチされている子供達がいい服をきていることに気づいた。多分商人か貴族の子達だろうな。
「お前ら、俺の後ろに隠れとけ。」
「ぁ、、、ぁり、、がと、、」
「助かるよ。」
「あんな奴らやっつけてください!」
「おい無視してんじゃねーよ!」
その瞬間悪ガキ一号が俺に殴りかかった。俺はそれを右に避け背中を軽く押してやると勢い余って顔から壁にぶつかり、頭をこすりながら倒れる。
「これは避けれねぇだろ!!!」
「雑魚が調子乗んなよ!!!」
続いて悪ガキ二号と三号が左右の死角から拳を振り上げてくるが【空間把握】のおかげでどこからくるか丸見えだ。俺が前に動くことでお互いに思いっきり殴り合う。
「「グヘェェッッッッッ!」」
「クソが!!タダで済むと思うなよ!!」
俺が前に出た瞬間悪ガキ四号は長めの角材を上段から振り下ろしてきたが、俺が避けた先にいた悪ガキ五号の頭に命中し気を失わせる。
「あっ、、、ヤベェ、、、なんでだよ、、、」
「お前らがバカだからだよ!」
俺は怯んでこちらに背を向け走り出そうとしている悪ガキ四号の股を思いっきり蹴り上げた。
「はぅうっ、、、」
悪ガキ四号は力なくカエルのような姿になりながら道端に倒れた。
「これで終わりかな。やっぱスキルってすげぇなあ。」
俺は初めて能力を使用した。