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ある令嬢の奮闘







「それでね、サラってば頬を膨らませて怒るんだけど全然怖くなくてさ、むしろ赤くなってるから可愛くって」

「そうですか」


 なんで王宮の素敵な部屋での贅沢なお茶会でノロケ話を聞かされないといけないわけ?たとえ相手が王太子だろうが勘弁してほしい。

不満を態度に隠すことなく出してるというのに王太子はまったく構うことなく話し続ける。

婚約者で想い人でもあるサラさんと想いが通じ合って嬉しいのは分かるけどさぁ~。

「サラは最初から私に余所余所しくてね、ずっと気になってたんだ。最初は嫌われてるのかなと思ったけどそうじゃなくて、どう接したらいいか悩んでたみたいでね、

 打ち解けた雰囲気になるとまずい!って顔して余所余所しくするし、気まずい雰囲気になるときもしまった!って必死に取り繕うとするし、仲良くしたいのかそうじゃないのか迷走する姿が面白くって、時々本人も混乱してすごく情けない顔するんだ。もうその顔が見たくてわざと悲しそうな顔したりしてたよ」


 うわぁ、ドS~。

まさか優しい王子様が実は意地悪だったなんて思いもしなかった。




この世界が前世の乙女ゲームの世界で自分がヒロインだと気づいたのは社交デビュー前。マナーと一緒にどんな貴族がいるのかを学んでいるときに攻略対象者たちの名前があったから。

好きなゲームだったからテンション上がっちゃって家庭教師に怒られたっけ。

タイトルは『ロマンス円舞-ワルツ-』で、西洋っぽい世界でドレスとか社交界とかトキメキ要素満載な王道まっしぐらな内容なんだけどそこがいいのよね!

攻略対象者は5人と割と少ない代わりに一人一人のストーリーがしっかりあってそこもよかった!

しっかり恋愛ものだったからこのゲームにはハーレムエンディングはなかったんだけどそれでいい。私は一人と運命の恋をしたいの!

一番好きだったのは未来の宰相候補のハイド様。クールなインテリ系で最初は冷たい態度なんだけど徐々に気を許してくれて、笑顔がもう胸キュン!!

冷たい態度をされると挫けちゃう女の子が多いと思うけど私はゲームのおかげでハイド様の本当の姿を知っているから平気よ。

目指せハイド様との恋愛エンディング!ワルツを踊ってやるんだから!!


 出逢いイベントは5人等しく起こるから仕方ないけどその後はひたすらハイド様の好感度を高めようと頑張った。

王宮に行かないと会えないから勉強のためにと王宮にある図書館へせっせと通った。(ハイド様がインテリなので勉強頑張ってるアピールは好感度が上がりやすいの)

姿を見かければ必ず声を掛けたんだけどなんか思ってたより冷たい態度だった。最初はテレビの画面越しとの違いかなと思ってた。

ついでに王太子ともよく会っちゃってたんだけど完全に要らなかった。しかもどんどん遭遇する回数が増えてきてこいつストーカー!?とか心の中で罵ったりもした。

で、先日これ以上係わり合いたくなくてさっさと去ろうとしたら足がもつれて、それを王太子に助けられて、しかもそれを王太子の婚約者に見られたときは真っ青になっちゃった。

だってこれって王太子と恋愛エンディング確定イベントとそっくりだったんだもん!うそでしょ!?私は全然これっぽっちもこの人に恋してませんけど!?

サラ様お願いだから身を引くなんてしないでよ~。

まぁ、慌てて追いかけた王太子の姿を見ちゃったら彼が誰を好きかなんてまるわかりで、ほっとしたんだけど。結果私を放って置いちゃったからお詫びにって今日お茶会に呼ばれたわけ。

別に全然気にしてくれなくて良かったんだけど、むしろノロケたかっただけな気がする。謝罪最初だけだったし…

「サラ様のこと好きなくせになんであんなに私に構ってきたんですか?普通好かれてるかもって誤解しちゃいますよ?」

「ハイドへの猛アタックを見てたからその心配はしてなかったよ」


 そうですね、脇目も振らず頑張ってたもんね。今となっては黒歴史だわ。

「実は君のことだとサラがヤキモチ妬いてくれたからなんだ」

「は?」

「他の令嬢の話をしても平気そうなんだけど君の話だとどうしても気になるみたいでね、それでついついやりすぎちゃって避けられたのは誤算だったな」


 こんな意地悪な人が結婚相手なんてサラ様に同情するわ。

「なんで私だけ気になるんですか」

「さぁ?はっきり答えてくれないんだ」


 私はある可能性に気付いた。

もしかして同じ転生者とか?ゲームの知識があるからヒロインを気にしたとか、考え過ぎかな…

「そういえばサラは時々砕けた口調になるんだけどなんだかその時は君と似てるって感じるよ。私は全然構わないのにすぐ直しちゃうのが残念なんだよね」




帰り道もう一度状況を整理してみた。

この世界はゲームとは違うところがあって、王太子ってゲームでは優しくて誠実な性格なんだけど実際は好きな子に意地悪しちゃうとかだし。

しかもサラ様は婚約者候補だったはずなのに婚約者になってたし。気に入ったから早々に手に入れるとか腹黒さを感じるわ。

ヤキモチ妬かせたかったから私に接触してたとかありえない!おかげで私はハイド様に王太子を誘惑する悪い女って思われたのよ!!

王太子とサラ様との修羅場の後ハイド様がそれはそれは冷たい目で現れた。

「常々君の言動は軽薄だと思っていたがまさか王太子にまで媚を売っているとは思わなかった。二度と目の前に現れないでくれ」


 あんまりな言葉に頭が真っ白になってハイド様が去っていくのを呆然と見送った。

ハイド様もゲームと違ってた。あれはクールっていうより冷たい、鬼畜よ!


確かに私の言動は薄っぺらかったかもしれない。なんせゲームの知識でやったことだから本心じゃない。

それを見透かされてた、だからゲームより冷たい態度だったんだ。

だからってあんな言い方なくない?私は別に王太子に媚なんて売ってないっての!

所詮私が好きだったのはゲームのハイド様であって現実のハイド様じゃなかったのよ。もう様なんて付けるもんか、あんな嫌味野郎なんてお断りよ!

「……って結局本当に好きじゃないってのも見透かされてたんだろうな」


 さすがに反省。よく知らない女からあなたのこと解かってますってな顔されたらイヤよね。

「いつまでもくよくよしててもしょうがない。せっかく可愛く生まれ変われたんだし好みの世界だし、命短し恋せよ乙女なんだから!この反省を活かして次の恋よ!」





  

 とにかくパーティーに出まくった。だけど惨敗。身分を鼻に掛けてる人って合わないのよね。やっぱりゲームの攻略対象者たちに比べるとね~。

頼もしい年上クローヴィス様も純情年下エニス様も平民出身ド根性マキアスくんとかいずれも性格良しのイケメンがいるんだけどゲームの知識のある私は攻略対象者を恋の相手に選べない。

答えを知ってる分真剣に向き合えないと思うから。これ教訓、私はただでは転ばないのよ!

「でもいい男がいないんじゃ意味ないわ」


 今日も今日とて収穫無しのままがっかりして帰ろうとしてると溜息が聞こえた。なんと、同士か!と視線をやると広間の開いた扉の影に佇む少年、王太子の弟エニス様がいた。

わぁ、さすが攻略対象者美少年!!目が合ってエニス様が気まずそうに顔を背けたんだけど顔が赤いの丸分かり、かわいい~癒される~。

「失礼しました。私もため息を吐きたい気分だったのでつい誰かと見てしまいました」

「貴女も?」

「ええ」

「ふふ、同じですね」


 兄の王太子が悪魔だから余計に天使に見えるわ。一度出会いイベントを済ませているのでお久しぶりですと挨拶した。

ここでため息を吐いていた理由を聞いてはいけない。攻略する気ないし、そもそも初対面でそれは図々しいし聞いてあげないのがマナーでしょ。

男のプライド的に弱みを見せたくないだろうし、理由知ってるし…

なんでも完璧にこなす兄にコンプレックスがあるのだ。あ、兄弟仲は悪くないはずよ。それでも下の子の負けん気っていうのか同じようにできない自分が悔しいみたい。

まぁ、ゲームではですけど。私はもうゲームの知識を利用しない!

これ以上係わらないほうがいいと別れの挨拶を口にしようとしたら邪魔が入った。

「こんなところにいたのですかエニス様。お一人でいなくならないでください」

「ごめん、ハイド」

「もう少しご自分の立場を考えてください」


 素直に謝ってるエニス様になおも嫌味を言いやがって相変わらずなんだから!一人になりたい時だってあるでしょ、もう少し他人を思いやりなさいよ!

睨んでる視線に気付いたのか冷たい眼がこっちを見て、もっと不快気な顔をされた。

「君は……、性懲りも無く王族に近づいて」


 はぁ――――――――――!?

こいつまた私のことそういうイヤらしい女だって言いたいわけ?名誉きそん!

「ハイド様って優秀な方だと思ってましたけどそうでもないんですね」

「何?」

「実際は偏見だらけで思い込みが激しくて頭が固いんですもん」

「私が君を誤解しているとでも?」

「私は王族の方に下心で近づいてません」

「純粋に慕っていると?」


 馬鹿にした笑みがむかつくー!!ゲームではそんな笑みしてなかった。やっぱり現実はゲームと違う。

「一国民として尊敬してます!この前のあれは事故で、助けてもらっただけで何でもありませんから!!」


 眉間に皺を寄せて疑わしそうに見るハイドマジむかつく。

「そんなに疑うなら王太子様に確認したらどうですか?」

「……いや、君がそうであろうとなかろうと私には関係ない。失礼する。エニス様行きましょう」

「え、あ、……うん」


 散々けなしといて関係ない!?私がどんな女か興味がないってことね、なによ!

奴は去り際にさらに嫌味を残していった。

「君の言葉遣いは知性が感じられない。もう少し勉強するんだな」


 なによーーーーーーーー!!!

 






 悔しくってあれから王宮の図書館で本当に勉強する日々、別にハイド攻略狙ってないのにまた通うとか複雑ではあるんだけど。

前に習ってたマナー講師とは相性悪くって、私褒められて伸びるタイプだから、ガミガミ言われるくらいなら本で勉強しようと思ったんだけど…

王宮にせっせと通ってる理由をまたハイドに変に疑われるのはいやだなぁ…

ため息吐きつつふと前から来る人に気付くと向こうもこっちに気付いたみたいで驚いた表情をしていた。

初対面やあまり親しくない場合身分が下の私が足を止め道の端に避けて身分が上のサラ様は通り過ぎるのが普通なんだけど、思わず立ち止まってしまってどうしようという感情がはっきり伝わってくる。ついついからかっちゃうって言ってる王太子の気持ちがわかるわ…

サラ様の印象はまさにこうあるべきという何事にも動じない冷静な令嬢だったんだけどもろ顔に出てる。

どうしようか迷ってる間にこのまま立ち去るには不自然になってて挨拶したほうがいいのか、でも用も無く話しかけるのも相手を混乱させてしまうかもしれない、

という葛藤か手に取るようにわかってしまう。私と今まで係わったことがないのに思わず立ち止まってしまうほど王太子の言うようにサラ様って私のこと意識してるんだ。

おろおろしてるサラ様に私から名乗り挨拶するとぎこちないながらも名乗り返してくれた。ライバル認識してたにしては敵意は無さそう。

むしろ私が王太子に失恋して、その原因が自分で申し訳なく思ってそう!おろおろからおどおどに態度が変わってる!!

「先日は私の不注意でお二人にご迷惑を掛けてしまい申し訳ありませんでした」

「え、いえ……」


 明らかに気まずそうだ。私に恨みごと言われると思って怯えてる!私があの王太子を好きとかそんな誤解許せない!!

「私王太子様のことなんとも思ってませんから!」


 突然の否定にサラ様は戸惑いながらも強がってる?って思ってる。だから素直に受け止めてよ!

「私が王宮に通ってたのは図書館に行きたいからで王太子様に会いに来てたわけじゃないんです!」


 狙ってたのはハイドって言ったほうが誤解が解けるんだろうけど言いたくない。

いくら言葉を重ねても強がってるようにしか聞こえないのだろう。戸惑うばかりで納得した様子が見られない。

よく見て!感じて!こんなに否定してるのよ!

「どうしたら信じてくれるんですか!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!信じますぅ!」


 つい叫んでしまったらサラ様も大声で返してきた。なんか私いじめてるみたいじゃない?

「じゃあ、どうしてあのイベントが……」


 思わず呟いたサラ様の言葉に息を呑む。あのイベントってこの間のあれ?知ってるってことはやっぱり転生者?確かめようとしたら鋭い声が邪魔をした。

「何をしている!」


 最悪だ、ハイドが何を誤解してるかなんて嫌でもわかる、さっき私も思ったもん。

「サラ様が誤解してるようでしたので否定してただけです」

「誤解?」

「私が王太子様を慕っているという勘違いです」

「勘違い……、そうであっても君の態度は頂けない。こんな廊下で淑女が叫ぶなど」

「ご、ごめんなさい」


 そうでしょうね、サラ様も大声出してたもんね。私を非難した結果サラ様も非難することになってしまって奴は非常に気まずそうな顔をした。ざまぁ。 

「いえ、そもそもそこの令嬢が大声を出したからつられてしまわれたのでしょう」


 なにを―――!あくまで悪いのは私と言いたいわけね!

「でもそれは、あの、私がなかなか信じられなかったからで」

「誤解させるのが悪いのです」

「へぇー、じゃあ王太子様も悪いんですね」

「不敬罪になるぞ」


 にらみ合う私たちにサラ様が再びおろおろしだした。だけど今は構ってられない。今日こそは言い負かしてやる!

「誤解だというがレオン様と頻繁に会っていたのは事実だろう?」

「たまたま偶然です。私は図書館に通ってたんですから」

「図書館?それにしては学が無さそうだ」

「だから今勉強中なんです!」

「なかなか成果は無さそうだが?」

「そんなの人それぞれでしょ!私はゆっくりなほうなのよ!」

「威張れることか。第一勉強しに来てたわりに王宮のいろんな場所をうろついていたのはどういうことだ?」

「それは……、今はうろついてないでしょ!」

「よく私の前にも姿を見せて耳障りの良い言葉をいろいろ並べ立てていたようだが…」


 私の消したい過去をほじくり返さないでよ!

「あ、図書館ってハイド様に会うために」


 サラ様もゲームの知識を今思わず呟かないで!

「は?私に会うため?」

「そうよ!私は王太子様じゃなくてハイド様に会いに行ったのよ!王太子様よりハイド様のほうが好みだったから、いろんな男に言い寄ってなんかない!ハイド様だけによ!

でも今はもうこんな嫌味なやつ好きじゃないけどね!!だいたい王太子様とよく会ってたのは向こうが会いに来てたからなんだからね!それもサラ様にヤキモチ妬かせるために!」


 もうこうなったらヤケだというように全て吐き出した。言い切った瞬間はすっきりしたんだけどその後続いた沈黙が……え、なによこれ。

そんな微妙な中に王太子がやって来た。

「あれ、3人でいるなんて珍しいね。どうしたの?」


一斉に集まった視線に動じないとかさすが王太子。

「いえ、大した事では」

「別に何でもありません」

「リオン様……」

「ん?どうしたのサラ」


 甘い雰囲気出してるけど王太子、よく見て、サラ様の雰囲気不穏だよ。

「ユーリア様とよく会っていたのはわざとだったのですか?私にヤキモチ妬かせるために」

「えっ」


 答えを聞かなくても一目瞭然な王太子の態度にサラ様が切れた。

「リオン様ひどい!」

「わ、悪かった!サラ許して!」

「いやです!」


 そのまま去っていくサラ様を追いかける王太子の姿に威厳は無かった。ざまぁ。

「悪い笑みだな」


 おっと、いけないいけない。婚活してる身として見せてはいけない顔だったわ。  

「二人が仲違いしたのがそんなに嬉しいか?」

「それってまだ私のこと王太子妃を狙ういやらしい女だって言ってます?」

「ふんっ」


 さすがに叩いても良い気がする。こぶしに力を込めているとハイドが顔を背けたまま不機嫌な声で訊いてきた。

「さっきのことだが、私が先の宰相候補だからか?」

「はい?」

「私のことを好みだとか言っていただろうが」

「なっ……」


 他人のしかも本人から言われるとか恥ずかし過ぎるわ!しかも何よ、宰相候補だから好みとか、ゲームのキャラなんて顔と性格に決まってるでしょ!

「他の令嬢たちもそうだからな」

「だからなんなの?」


 このひねくれ魔人が!

「将来性のある人が良いなら王太子様もいるし、エニス様もいるし、騎士のクローヴィス様だって軍兵のマキアス様だっているじゃない!その中であなたがいいって言ってるんだからいいじゃない!

それに宰相候補ってのは能力と努力が評価されたからでしょ?そんな人に魅力を感じるのは当たり前だわ!」

「……君もそうだと言うのか?」

「は?私は違うわよ!」

「じゃあ君の言う私の好むところとは」

「あ、あれは……、あなたじゃないわよ!」

「は?」

「私が好きなのはハイド様であってあなたじゃないから!!」

「私以外その名はいなかったと思うのだが……」

「とにかく、あなたじゃないの!勘違いしないでよね!!」


 今更なんてことをぶっちゃけちゃったのよと恥ずかしくなって私は早々にその場を去った。









 次の日私はサラ様の屋敷へ訪れて彼女が転生者なのかどうか確かめた。

「そう、あなたもそうだったの」

「ええ、前世のネット小説でもよくセットだったものね、ヒロインとライバル令嬢の転生」

「ではあなたは最初からハイド様狙いだったのね?」

「まあね」


 念押しにまだ私が王太子が好きなんじゃと疑ってたのかと呆れる。そう思ってたら意外なことを言われた。

「私ケンカップル大好きなんです!」

「は?」

「昨日のお二人を見てとっても萌えたわ!」

「おろおろしてたじゃない!」

「最初は仲が悪いのかと思ってたので」

「今も悪いわよ!」

「うふふ、昨日の捨て台詞ツンデレで素敵でした」

「は?なんで聞いてるのよ、先に帰ってたじゃない!」

「それがすぐに捕まってしまいまして」


 お恥ずかしい限りです、じゃないわよ!

「お互い素直になれずついつい言い合いになってしまうんですよね。ハイド様はきっとユーリア様が他の人にも良い顔してたと勘違いして嫉妬なさってたのよ」

「は~?君の言動は薄っぺらいとか言ってたけど?」

「ゲームより警戒心が強くて皮肉屋なんですね。そしてユーリア様もゲームと違ってツンデレ!ああ、ときめく!」


 ちょっとこのお嬢様思い込み激しいんじゃない?私と王太子様のこと想い合ってるって思い込んでたみたいだし。

「ゲームと違うといえば王太子様も違うわよね?どうなの、あの性格。違ってても好きになれたの?」

「それは、まぁ、違いますけど…」


 もじもじしてるの見ると満更じゃない感じね。

「いいわね、好きなキャラと結ばれてさ」

「あの、実は前世はクローヴィス様推しで……」

「え、そうなの?」

「大人で頼もしくて優しくて、でも大人扱いしてもらえなくってっていうのが!!」

「なるほど……」

「そうなんだ」


 第三者の声に空気が固まる。

キィとやたら響いた音で扉が開きすっごくにこやかな王太子が入ってきた。

「やあ、ユーリア嬢ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう」

「……リオン様」


 顔を引きつらせるサラ様にゆっくり近づく王太子。逃げて~と念じてしまうほど恐怖を感じた。

「ふ~ん、クローヴィスね。知らなかったな」

「違うんです、私じゃないんです!前世です!!」

「ん?君じゃなくてゼンセって人の話だったってこと?」

「そうです!前世です!」


 う~ん間違ってはいないけど、通じるのかこれ。

「じゃあ、君の好きな人は?」


 そんな心配をよそにイチャつきだしたので退散することにする。

「王太子様、私失礼します」

「ああ、そうだね。他人がいるとサラが恥ずかしがって言ってくれないしね」


 ね、と同意を求められたサラ様は退路を断たれたのだった、まるっと。

帰りの馬車の中でしみじみ思った。

サラ様は前世では子ども扱いされてからかわれるのが好きだった。今は王太子にからかわれてるから…  

ドSとドMでお似合いだと後日サラ様に伝えたら「ドMじゃない!」と否定された。











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