第93話 河本智広と神林友子
Side わんこの弟
最近姉ちゃんの様子がおかしい。正確に言うと夏休み明けぐらいからおかしい。
それを確信したのは姉ちゃんが俺の部屋に着て頼みごとをした時だった。
「弟の智広にお願いがあるの」
姉ちゃんが態々「弟の智広」と言うのは姉としてのプライドだと本人は言う。俺が小学校二年の時に姉ちゃんの身長を超えた事がきっかけだ。それ以来ずっと「弟の智広」と呼ぶ様になった。
俺より頭一つ分小さい姉ちゃんは俺と一緒にいると必ず妹と間違えられる。その事もあるのだろう。
「お願いって?」
「これで私を撮ってほしいの。写真じゃなくて動画でね」
そう言いながらスマホを受け取る。可愛い犬のストラップが付いていた。
「じゃあリビングで私を撮って」
二人で一階のリビングへ行きスマホを動画モードへ切り替えた。
「姉ちゃんいつでも撮れるよ」
「うん、それじゃお願い」
姉ちゃんはその場で四つん這いになり頭をソファーにこすり付ける。しばらくそれを続け次は後ろ足で、正確に言うなら右足で自分の脇腹をこすりつけようとしている。
うちの姉ちゃんは何でこんな事を録画までしてやっているのだろうか?
次の行動で俺は少しだけ姉ちゃんがしたい事に気が付いた。
四つん這いの姉ちゃんはお尻からブルブルと体を揺らし下から上へと、最後には頭まで揺らした。
これ犬がたまにするアレじゃね? カーミングシグナルだっけ? それとも濡れた時にする行動かな?
「弟の智広ありがとね。どうだった?」
どうだっただと!? 変だよ! 絶対変だよ!!
姉ちゃんは学校でいじめられているのか?
そんなことが頭にちらつく。でも中学の頃の姉ちゃんはみんなに可愛がられる人気者だったし・・・いや高校生にもなると・・・姉ちゃんの親友だった神林先輩とも高校は違うと言うし・・・
やばい、すごく気になる。
「ねぇ感想ちょうだい!」
考え込んでいた俺に姉ちゃんがスマホを奪い取りながら言ってきた。
「なぁ、姉ちゃんは高校でいじめにあってたりするのか?」
素直に聞こう。これが一番早いし動揺すれば顔にも出やすいだろう。
「何で? うちのクラスはイジメなんてないよ?」
首を傾けながら言ってくる姉ちゃんが心配だ。学校でイジメられている事に気が付いてないかもしれない・・・
「ひとつ聞いていいか? 今のは犬のモノマネか?」
「うん! そっか。説明なしに聞いちゃったね。文化祭で犬の役やるの。これはその練習」
「犬の役? 姉ちゃんのクラスは演劇やるの?」
「違うよ。喫茶店」
喫茶店で犬の役? なんだそれ。俺の中の常識にない事なんだが・・・
しばらく考え込んだ俺に姉が色々説明してくれた。
「その女神喫茶って言う喫茶店で、女神に撫でられる犬の役って事なんだな?」
「そうだよ! 大役なんだよ! みんなに羨ましいって言われてるんだから」
そう笑顔で話す姉ちゃん。イジメではなさそうだ。ただ意味がよくわからないが・・・
「俺さ、姉ちゃんの文化祭行ってみていい? 俺もそこ受験しようと思ってるしさ」
「うんいいよ。女神喫茶の予約チケット貰ったらあげるね。あっでも・・・」
何やら考え込む姉ちゃん。何かあるの? もしかして弟が来ると恥ずかしいとか?
「うちの文化祭ってかなり厳重に人の管理するから招待できるのは三枚もらうチケットで一枚当たり五人までなの。だからさ、友ちゃんと一緒に文化祭来てもらってもいい? 他にもチケットあげたい人がいるから」
「友ちゃんって神林先輩だろ。あの人彼氏とかいねぇの? 変に誤解されたりしたくないけど」
「大丈夫だよ。友ちゃんはずっと合コンしてって言ってるぐらいだから。何なら友ちゃんと付き合ってみる?」
確かに神林先輩は美人で明るくてスタイルも平均より上な人だろうけど・・・ヤバ、想像したら顔熱くなる。
「あはは、真っ赤になって可愛い弟の智広」
笑うなよ・・・
「友ちゃんは友達も誘うって言ってるから当日はハーレムだね。ちゃんと弟の智広とも回ってもらうように言うから安心してね」
年上の女性四人と回るとか大丈夫だろうか。って、その心配より姉ちゃんの事だよ。ちゃんとイジメられてないか当日確かめないとな。
Seid 友ちゃん
千和からの電話で文化祭の約束したぜぃ。
休憩中なら一緒に回れるらしいけど、あまり時間は取れないらしい。あの弄りがいのある弟と一緒に回ってほしいと頼まれたのがびっくりだが・・・
それにまた兎月優くんに会える。フヒヒヒヒ。
「絶っ対! 彼氏を作るぞ~!」
「変な事言ってないで早くお風呂に入りなさい!」と下にいる母に叫ばれた。
恥ずぃ・・・でも彼氏はゲットだぜ!
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