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第9話 罰

 

 ピンクに染まる休憩室。比喩表現じゃなく、カーテンにソファーやテーブルそして壁紙までピンク色。母さんが好きな色なのはわかるが、ここまでピンクに統一されると心が休まらない。僕はもっと落ち着いた部屋でゆっくり休みたい。


 「優様どうぞ」


 うちのメイドちゃんがお茶と大福を差し出してくれた。笑顔でありがとう。これ大事。小さい事だけどお礼はしっかりしないとね。


 「みんなの分はちゃんとある?」


 「はい三つ余るようですので最後にジャンケンしようかと」


 メイド長は嬉しそうに答えてくれた。


 「ベヒャーーーーーーーーゴッホゴッホ。水 水 頂戴」


 壮大に咽る母さんを横目に僕はニヤニヤが止まらない。罰が下りたな!新入生挨拶の事を伝える通知を隠した罰がな!鼻水と涙を流し水を飲む母さん。

 ちなみに母が食べたのはイチゴ大福に見えるように作ったワサビ大福。和菓子の栗田屋の栗田さんにお願いして作ってもらった。見た目も完璧に仕上げてくれた。ワサビが入ってたら緑が透けるはずなのに、薄っすら赤いイチゴが見えるよう工夫してくれたのだ。

 腕はいいのに立地条件が悪く閉店の危機を僕が助けた。その関係で七宝グループに加わることになった人なのだ。


 やっと落ち着いたのかこっちを睨みながら母さんが一言。


 「優ちゃんのばか!」


 大事な書類を隠す方がばかだろうが!

 そもそも会社を経営するならホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大事なのがわかるだろうに! あのスピーチが無残なものに終わって僕の悪い噂が流れたら、七宝グループの経営にも支障が出かねない。その意味が分かっててしてくれたのだろうか。今日こそ説教してやろうか!


 「あのね、母さん。僕が言いたいこと分かってるよね?なんで新入生挨拶の郵便を僕に内緒にしてたのかな?」


 明かな睨みを向ける僕にまわりのメイドズから黄色い声。

 「やっぱり優様の睨みはステキ」

 「怒った顔かっこいい」

 「奥様が優様を怒らせるのはこの顔が観たいためですよね」

 「我が息子ながら本当にいい顔ね」


 おいコラ! タココラ! こいつら!

 確かに睨みを利かせ怒った顔は眉がつり上がり俺様系美男子に見える事は聞いたが、それが見たくてイタズラしてくるのかよ。


 「良い顔じゃない! スピーチ失敗してたら七宝グループの悪評になりかねないことだってあるんだからな!」

 

 「無難にこなしてたじゃない! ちょっとしたジョークまで添えて。優ちゃんは何でもそつなくこなすのが悪いの! たまには失敗して赤くなる顔も見たいのよ! それが親心よ!」


 ワサビのダメージから完全回復した逆切れ女は仁王立ちで言いたいこと言って大福を食べ始めた。やっぱり母さんやメイドズは構うだけ徒労に終わる……

 あったかいお茶と美味しい大福に癒されよう。


 休憩も終わり撮影の続きをしながら母さんが学校の事を聞いてきた。今日の失敗を掻い摘んで話したら新しい伊達眼鏡をすぐにメイドズが買ってきてくれると、フットワークが軽くて助かる。


 「モテモテ生活は順調のようで、あぁそうそう契約更新の事だけど」

 この契約と言うのは僕とのモデル契約期間の事である。最初は中学までと決めていたのだが、ちょっとお金を母から借りるために高校卒業までと契約を延期したのだ。


 「延期はしません! モデルは高校卒業と一緒にやめます。これは絶対! ってかさ、いい加減メイドズをモデルにしなよ。僕より言うこと聞いて撮らせてくれるだろうに」


 「優ちゃんがいいの! USAの人気はすごいだから。みんなも優ちゃんがいいわよね」


 「優様は撮られるために生まれてきたと思います」

 「優様ほど美に愛された人はいません」

 「優様のファンが淋しがります」

 「優様だったら水着だって行けます」

 「私のストレス発散だってあるのよ」


 母よ。お前の意見が一番ひどいぞ。



 その後撮影は順調に続き、午後8時家へと帰宅した。



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