第88話 学園祭開始
文化祭当日になり活気づく高校生達。それとは真逆に憂鬱な僕。
よくよく考えてみると何だよ女神喫茶って! 可笑しいだろ! しかも女装姿だぞ! 加えて言うならクラスの男子も全員女装姿だぞ! 誰も拒否しなかったのかよ!
大きなため息を吐きながら絢爛豪華なドレスに身を包む。
どのぐらい絢爛豪華かと言えばこのドレス一着で高級車が買えると言えばわかるだろうか。赤がメインのドレスには真珠が縫い付けられおり無駄にヒラヒラのレースが添えられている。
イメージするなら「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」のあの人。そんなドレスを今着ています。
着付けを手伝うメイド長とメイドズ数名。皆嬉しそうな笑顔で化粧やネイルまで施してくれております。
因みにこのドレスのお値段はなんと四千五百万。製作費だけですが何か?
文化祭用に用意した衣装六着の総額が億を超えたのはナイショデス・・・
取りあえず着替えと化粧の終わった僕の姿を鏡でチェック。
悲しいかな美人です。それも超級に美人です。メイドズに至ってはうっとりとこちらを見て感想も言わないぐらい美人です。
普段はナチュラルメイクなのですが本日は文化祭。それも女神喫茶と銘打って主役をやるのだからとメイド長が張り切りまして、濃い赤の唇やキラキラが入ったファンデーションやキリットした眉毛やら・・・完璧に美を追求しちゃってます。
髪型も編み込み式でまとめ上げ、うなじを見せてセクシーさも増してます・・・
何だろね。自分でも情けなるほど美女です。
ノックの音が響き女神の楽屋にひとりのお客が入ってきました。
僕と目が合うと満面の笑みで「綺麗! 綺麗!」と連呼して、尻尾がブンブン振れてまるでテンポの速いメトロノームのよう。
入って来たのはわんこです。犬の着ぐるみパジャマを着たわんこです。犬役の衣装と言っていたけど、どう見ても白い犬の着ぐるみパジャマ。わんこのクリッとした目と相成ってチワワに見えます。
可愛いです。モフモフ対象です。
校内放送で「只今より紀見ヶ崎学園文化祭を開始います」のアナウンスが流れた。
「では皆さん、今日から三日間頑張っていきますわよ~」と叫ぶお嬢の声に「おお~」とクラスメイトが応える。
僕は今も女神の控室にいます。ついでにわんこも横にいます。わんこは緊張しているのか尻尾がピンと立ち張りつめている。
緊張をほぐすためにもゆっくりとわんこの頭を撫でると、僕の顔を見つめにっこり微笑み尻尾がブンブン横に振れる。どうやら本当に喜怒哀楽に対応した尻尾のようだ。
「文化祭頑張ろうね!」やる気満々のわんこには悪いが何を頑張るのだろう? 君は僕に撫でられるだけだよ?
一応笑顔で頷き返したけれども。
女神の控室にも外がざわつく音が聞こえ時折言葉も聞こえてくる。どうやらお客が入ってきたようだ。
女神喫茶の受付は一年一組。そこで番号札を貰いそのテーブルに着くルール。最初の公演だけは予約(ファンクラブのビンゴの景品)が可能で恐らく今日が一番多く使われる。その客だろう。
女神降臨時間以外も営業しており、その時間以外は滞在時間の制限がない。女神降臨中の滞在時間は十五分。より多くの人に女神様を見せるんだとさ。
「女神様御光臨下さい」
お嬢の声が天井付きの屋上に響き、僕とわんこが女神の控室と女神の部屋を繋ぐドアを開ける。
目の前には僕を見つめる多くのお客とメイド達。静まり返ったその場を歩きソファーに腰を下ろす。わんこはソファーには座らず僕の足元に寄り添い顔を足にこすり付けてきた。本物の犬の様だ。
確かに頑張ってるなわんこ。
さてさて、どんなお客が来ているのだろう。
客席を見渡すと多くがここの生徒さん。後は教師達と校長だ。金土日とある文化祭の本日金曜日。今日だけは学校関係者しか入園出来ない。他校の生徒や親御さんが来園するのは明日からになる。
多くの人がいる割に静寂に包まれた女神喫茶です。皆僕を見つめて黙ったまま・・・気まずいです。
呼び鈴を押してメイドさんを呼ぶと動き出す人々。
注文を受けに来たのはメイド服姿の女装だ。うん、ここに居るクラスの男子皆女装だけども。
「女神様、こちらがメニューになります」
そう言って渡してきた女神様専用メニュー。中を開くとコーヒーから始まり各種ジュースに高級茶葉を使った紅茶まで、サンドイッチなどの軽食やカレーや牛ヒレステーキのセットもある。デザートに関しては和洋中・・・これどこぞのホテルのメニューだろ。絶対ここで作って提供するものじゃないだろ。
こっちを見ているお客のメニューはホットかアイスの紅茶とクッキーだけだったぞ。
何なのこの差・・・
責任者を呼んでクレームを付けたくなるのをグッと抑えて女装に紅茶をリクエスト。
「畏まりました」と頭を下げる女装は完璧にメイドさんだった。




