第85話 制服
いつもの朝、早朝ジョギング、お弁当作りに朝食作り。それが終わりメイドちゃんとの朝食。遅く起きてくる秘書ちゃんへおにぎりを渡す。
まさにいつもの朝の光景なのだが・・・
制服に袖を通して髪型をセットする。まぁしても梳かしてゴムでまとめるだけだ。そう時間はかからない。いつもなら・・・
「優様、今日の髪型は編み込んではどうでしょう?」
「優様、たまにはツインテールにもトライしては?」
「優様、抱きしめてもよかですか?」なぜ博多弁!?
「優様、たまにはこのかわいいリボンで髪を纏めてみませんか?」
メイドちゃんと秘書ちゃんがうざい・・・
「ほら秘書ちゃん、行くよ。今日も安全運転で送ってね」ここでスマイル。
「もう~わかりました。行きましょう」
若干拗ねてる秘書ちゃんがめんどくさい。
「優様、お忘れ物です」そう声をかけ玄関に走って来たメイドちゃんが僕に抱き付き「いってらっしゃいのチュ~」だとさ・・・秘書ちゃんのチョップがナイスに決まり、頭を押さえるメイドちゃん。めんどくさいので振り返らずに「行ってきます」した。
いつものように校門横着けで秘書ちゃんに「行ってきます」して下駄箱へ。
僕が歩くと黄色い声援。久しぶりの黄色い声援。ワーキャー叫ぶ女子生徒。男子生徒は見惚れてその場で歩みを止める。そんな懐かしい光景に頭痛がする。まるで入学したてに戻ったようだ。
靴をしまって上履きに変える。
「あれ優様だろ?」
「間違いない優様だ」
「マジで美人!」
「やっぱり優様は女神」
「これだと学園祭の女神喫茶がもっと楽しみになった」
「私は他校の友達に自慢しちゃった」
「お姉様と呼ばせてもらえないかな・・・」
何やら外野が盛り上がってる・・・速足でクラスへと逃げ込もう。
「優くん、おは・・・」
「ゲレンデおはよう」
「その、あの、かっ」
珍しくゲレンデが顔を赤くして狼狽している。
「わかってる、気にするな」
今の僕にはこれしか言いたくない。
「優くん? おはよう?」
わんこの挨拶に僕も「おはよう」で応えた。
「あの、そのかっ」
「大丈夫、気にするな」
僕を見つめながら小さく縦に頭を振るわんこ。
「おう優! おはよう!って、なんだその恰好。何で女子の制服着てるんだよ。ずりーぞ!」
女装よ、言ってほしくないことを平気で言うなよ。それとずるくはないだろう。寧ろ不本意だ。
「普通よ、色々あったんだ・・・」
遠い目で話す僕に女装は一言。
「ツインテールにしてみようぜ」
何なんだろね・・・
今日僕が女子の制服で登校したのにはもちろん理由がある。一言で言えば母さんの報復である。
昨日の撮影前にワサビ大福からの水と酢を入れ替えたコンボにより撃沈した母さん。これだって重音ちゃんデビュー企画を潰された僕の報復だ。
そして朝起きたらいつもの制服が無くなっていた。体操服も・・・その代わりに女子の制服と体操服がキッチリと置かれていた。
担任ちゃんが言っていた。「争いは復讐を生むだけだと・・・」
今まさにその復讐の復讐を受けています。
「で、ツインテールにするか?」
女装よ、お前の女装願望を俺に押し付けるな。
僕は無言でチョップした。
「いでっ!」そして顔を赤らめるな! まるでイチャイチャしてるみたいじゃないか!
「優様素敵です! 同じ服を着てるのにここまで差が出るとは。まるで輝いた一輪の百合の様に美しく可憐で儚げで・・・私を含めこのクラスの女子はその百合を引き立てるだけの雑草ね! はぁ~優様・・・本当にお美しく」
お嬢がうざい・・・走って来たと思えばこのセリフ。誰か止めてくれ・・・
「は~い! HRはじめるわよ~って、兎月ちゃん何で女子の制服!?」さりげなくちゃんにしないで下さい。
今日は大変な一日になりそうだ・・・




