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第8話 モデル活動

 

 秘書ちゃんの報告通りこの後はモデルの仕事。今日わんことの会話で母の話も出たしお見舞いに行こうと思う。僕は秘書ちゃんへ行き先を指示して車を走らせる。


 お土産の和菓子(大福)これは母さんの大好物。見舞いに行く時は必ず買って行く。

 病院へ着いたが母は寝ているとのことなので、和菓子と書置きをしてすぐに車を走らせた。ちなみにここに入院している母と言うのは育ての母。僕が産まれる前から母の面倒をみてくれた人。入院するまでメイド長をしてくれていた。仕事で忙しい産みの母より一緒にいる時間が長かったせいもあり、メイド長はもう一人の母だと勝手に思っています。



 地下駐車場から一気に最上階の母の事務所兼自宅へ。エレベーターが止まりすぐに受け付けメイドが頭を下げてきた。

 

 「優様いらっしゃいませ。奥様は首を長くしてお待ちです。どうぞお進み下さい。」


 赤いマットの床は心地よく衝撃を和らげてくれる。本当に金持ちは見せびらかすのが好きだな。両壁に飾られる絵や家族写真。中には大統領の横ではにかむ小さい頃の僕の写真もあるのだが。

 無駄に長い廊下を歩き目の前の黄金のドアが勝手に開く。


 「「「「「「「優様いらっしゃいませ!」」」」」」


 絶対練習してるよなこのシンクロ率。メイドズが迎えてくれた。美人、美人、一つ飛ばさず美人メイド達。流石ラビットテールのメイドと言わせたいのか、どの子も美人ぞろいである。この子たちにモデルをやらせればいいのにと思うのは僕だけじゃないはずである。


 「これおみやげ。小さい箱は母さんの好きなイチゴ大福。最後の一個だったので、あとのは普通のね。休憩の時に皆で食べましょう」


 「優様ありがとうございます」そんな声が次々上がっていく。


 「お荷物をお預かりいたします」


 僕のアタッシュケースを受け取り嬉しそうに微笑むメイドズひとり。


 「ずるい抜け駆け!」

 「序列5位め!」

 「私は上着をお持ちします」


 「じゃあお願い」その場で脱いで渡すとメイドズのひとりはニコニコしながら受け取り上着を抱きしめて、その場を去って行った。それじゃシワになるだろうが。


 「まだ抜け駆け!」

 「序列2位は伊達じゃないだと!」

 「ああ優様のにおいが……」


 学校よりも怖いんだよねここのメイド達。僕の事を好きすぎるんだよ。もうほっといて先に進もう。衣装が用意されているだろう撮影室に足を進めた。


 「いらっしゃい優ちゃん」

 撮影室には母がいた。母は美容界の女帝とか呼ばれている。スラットした体系に絶対盛ってあるだろう巨乳。この巨乳は絶対に揺れない。以前怒って僕を追いかけてきたことがあったが、息が上がっても胸は上がらなかった。絶対に偽乳だ。

 相変わらず僕にそっくりな顔。それだけで美人だと伝わるであろうか。あと母の特徴と言えば長くウェーブした金髪。光に反射して黄金を思わせる。それは男達を魅了してやまない。今年で40歳以上(絶対に教えてくれない)だろうけどお見合いの話が途絶えないとか。秘書ちゃんが言っていた。


 「おみやげ買ってきたよ。栗田屋のイチゴ大福」


 満面の笑みに変わり走り寄って抱きしめてくる。


 「ちょっ! 母さん痛い痛い」


 母さんのハグは痛いのだ。胸に鉄でも入っているのだろうか? 本当に痛い。

 力ずくで逃げ出す僕。母は僕より少し大きい180センチ。ちなみに僕は175センチ。女性にしたら長身だろう。てかさ、母さんモデルしろよ。モデル体型なんだからさ。


 「痛いなんて失礼ねこの子は! 恥ずかしいだけと言いなさい!」


 腰に手を当て怒ったふりをする母。面倒くさい人である。



 撮影は順調に進んだ。今は四月だが撮影しているのは秋物である。最低半年は先の服を作らないと増産が間に合わない。もちろんモデルだってそうである。最悪なのが冬の撮影。野外で撮影したいとか言われたら本気で殴りたくなる。

 ブルブル震えるているのに生地の薄い姿で笑顔を作る。ありゃ地獄です。夏の撮影も同じで汗まみれになる。気温35度の中コート着て笑えと言われるんだぞ。熱中症にだってなるだろうが!

 もう愚痴が止まらなくなりそう。モデルは大変なのがこれだけでもわかってもらえるだろうか……今日のクラスの女子達が羨ましがっていたが、真実を教えたい気持ちでいっぱいになる。


 さて、気分を変えて今着ている服の紹介。

 頭にはウイッグつけてUSAモード。もちろんカラコン無し状態。化粧は薄くメイドズの序列一位がしてくれている。通称メイド長。今入院しているメイド長から引き継いだ。この人はコスメ系に強く化粧をさせたら特殊メイクまでこなせる強者つわもの、年齢はもちろん知らない。メイドズの中で年齢わかるのはうちの孤児院からここへ就職した3人だけだ。

 脱線したが服装は上から白のノースリーブシャツに水色のスカート。足には白い厚底スポサン。左手には男物のごついクラシック腕時計(これは七宝グループの時計関係の会社から頼まれた救済活動である。いつか紹介しますので)で少しアンバランスさが出る。それを写真で撮られ笑顔で対応。たまに紺のサマーカーディガンを羽織ってパシャパシャ。


 ああ疲れる。撮影中に顔の筋肉をほぐしながら連続撮影。


 「USA様素敵!」

 「今の表情最高!」

 「目線くださーい」

 「少しジャンプしてみようか」


 絶賛するメイド達は4人。と言うかカメラマンの4人がメイドズ。好きなこと言って撮っていくのだ。 今日は部屋での撮影なので楽なのが嬉しいのだが、まだ半分も撮れていない。

 5着撮影するとのこと。まだ三着あるのだ。カメラマンはかなりこだわる。一枚選ぶだけなのにさっきからシャッターの音がとまらない。平均すると一着20分は掛かる。4人で対応してるんだから絶対もう撮れているはずなのに……


 「はいOK! 次行きましょ」


 母さんの声にメイドズの荒ぶりが収まる。


 「良いの撮れた。今日いちかも」

 「私も良い表情の撮れた~個人的に部屋に飾りたい」

 「ジャンプの良かったよ~スカートひらりと躍動感出た」

 「ウイッグがうさ耳みたいだったよねぇ~ウイッグだけ少し軽いから遅れて降りてきてさ」


 若干変態がいるかもしれないが、気にしないで次の衣装へと着替える。このメンツにツッコムと徒労以外に終わった試しがない。


 今着ている服は薄着なので十秒と掛からず脱がされる。メイドズ恐るべし。次の服を着させられまた撮影が始まるのだ。

 おいこら! お願いだから脱いだ服をクンクンするのはやめてよメイドズ。ここは変態のたまり場かよ!



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