第76話 誕生日会
今日は僕の誕生日で八月十日。
駅前のホテルのパーティー会場を押さえ、僕の誕生日会が開催される。
正直参加したくない。だってこれに掛かる経費は僕持ちだし、たまにはゆっくりとコーヒーでも飲みながら残った宿題を片付けたい。誕生日会がなければ休みなのだから。
でも、連日続いたパーティーもこれで終わりだと思うと心が休まるが。
「このたびは誕生日おめでとうございます」
そう話しかけてきたこのホテルの支配人。特に僕のグループ傘下ではないのだが仕事柄お偉い人を相手にする時はお忍びで、このホテルを使ったりした事もありVIP対応してくれる。
やや薄い頭を下げてきた。
「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
「もちろんです。今日は特別なケーキも用意させてもらいました。私共からのサービスとさせて頂きます」
ペコペコ下げてくる薄毛の頭に秘書ちゃんが笑いを堪えている。
そんな秘書ちゃんも今日はおめかしして、僕が送った真っ赤なドレスを着てくれている。真珠で作られたウサギが盛った胸元で輝いていた。
「優様そろそろ」
そう言って僕の腕を取る秘書ちゃん。エスコートをご所望のようでこっちが恥ずかしくなる。
あくまで今日は友達を呼んだだけの誕生日会。本格的なエスコートなんていらないだろうに。
「では、私は後から入りますので優様しっかりして下さいね」
一礼して離れる秘書ちゃん。
五分ほどのエスコートだったけど意味があったのだろうか?
重厚なドアを二人のメイドズが開き照明の光とクラッカーが舞い散る。
「本日十六歳になられた優様です。皆様盛大な拍手にてお迎えください」何この結婚式的なノリ。奥には塔のようなケーキがあるし・・・
考えるのをやめて僕の席だろう場所を目指して歩き出した。
席に着き会場を見渡す。複数ある円卓にはタキシードを着た男子とドレスを着飾った女子。まるで結婚式だ。
僕の席は新郎の席にあたるのかな?そして両脇を固める秘書ちゃんとメイドちゃん。
メイドちゃんもラビットテールの藍色ドレス。胸元が大きく開きそのたわわに実ったゲフンゲフン。よく似合ってます。
「では、これより優様が誕生してから今に至るまでをこちらの画面にスライドショーとし「ストップ!」えっ?」
慌てて立ち上がり司会をするメイドズに詰め寄った。
「優様、どうしましたか?おトイレは「違う! そうじゃなくて、そう言うの無し! 無し! 皆で昼食食べて終わりって言ったでしょ。余計なことは無し!」」
「そうなのですか? 折角色々と用意いたしましたのに」
両手を合わせ祈る様に頭を下げながら「本当に頼むよ。これじゃ結婚式になっちゃうよ」
「わかりました。優様がそこまで言うのなら・・・」
「本当に頼むね、フリとかじゃなからね!」
僕は席に戻るとメイドズの司会が話をはじめた。
「改めまして進行させていただきます。本来はこれから優様のスライドショー。メイドズによるかくし芸。校長先生によるお祝いの言葉。優YOU会会長のお祝いの言葉。過去の担任による感動の手紙。ケーキ入刀。優様のハグを賭けたジャンケン大会等がありましたが、優様が拒否されるのでお料理を提供させていただきます」
ツッコミ所が多すぎてもう面倒くさい。
前菜から始まった料理はどれも彩り鮮やかで、見ても食べても美味しかった。
料理が運ばれてくるたびにクラスメイトやビンゴで選ばれた生徒達が歓声を上げて喜んでくれたのが地味に嬉しかった。
ただ、その中に日焼けしたギャルメイクでブタさんドレスを纏う普通が皆から少し距離を置かれているのが不憫で・・・いや、蓬生くんが熱視線で見つめていた。後で励ましてやろう。
デザートが運ばれてくると照明が若干弱まり、司会がマイクを持った。
「それではここで特別ゲストの登場です。あちらをご覧ください」
メイドズの向けた手の先には楽器があり、ドラムセット、キーボード、ギター、ベース・・・
「優ちゃん!」
「「「「誕生日おめでとう」」」」」
何で母さんがいるんだよ!
「私達ラビットテールで~す」
それから僕の誕生日会は母さんのライブへと姿を変え、みんなの印象に残った事だろう。
オールスタンディングになるまで盛り上がったのだから。




