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第64話 ドレス


 朝食を終えた僕らはこの城のメイドさんに案内されて地下の入口へと向かった。

 ここに住むペルちゃんも地下室がある事は知らないと言っていた。


 嫌な予感がする・・・


 メイドさんに案内されたのは城から庭へと続く屋根付きの廊下の先にある円形状のドーム型のテラス。10人ほどでお茶会でもできそうな真っ白いテーブルに椅子が三脚添えてある。


 「皆様、テーブルにおつかまり下さい」


 そう言ってメイドさんはテーブルに不釣り合いな鍵を取り出し、テーブル側面の穴に差し込む。カチリと乾いた音が鳴るとドーム状のテラスごと地下へゆっくり下がりだした。


 「優お兄様! スゴイ! スゴイ! 映画ミタイ!」


 「確かに非現実的ではあるね・・・」


 僕のワンピースに抱き着き喜ぶペルちゃん。何でこんな秘密基地みたいな入口にしたんだよ。


 「実はこの他にも地下への入口は複数ありまして、中でもインパクトの強いこのテラスにいたしまし た」と、この城のメイドさん。何やら少し自慢げだな・・・


 「他にはどんな入り口があるの?」と、フランス語でメイドさんに聞くペルちゃん。瞬時に翻訳秘書ちゃん。


 「秀逸なのはガラス張りのプールが二つに割れ、底からエレベーターがせり上がる入口もありますが朝からマリアンヌ様が泳いでおられ、使う事が出来ませんでした」と残念がるメイドさん。母さんやり過ぎだ・・・

 マリアンヌさんが朝食に姿を見せないと思ったら泳いでいたのか。


 そんな話が落ち着くころにはテラスのエレベーターが地下へ到着したようで、チ~ンと音が鳴り全面ピンク色の部屋が視界前面に広がる。


 「さぁこちらへ」


 メイドさんの後について廊下を行くと、騒がしい声が聞こえてきた。

 大きなピンクのドアが開くと騒がしいから煩いに変わり、メイドズの声がはっきりと聞こえる。


 「借り組終わりました~」

 「生地の裁断終わりました~」

 「装飾品のチェック完了で~す」

 「縫い合わせチームが遅れてま~す」

 「羽の溶接完了しました~」


 僕らの目の前には体育館よりも広い空間があり、その中で奮闘するメイドズと設計図を睨む母さんの姿が・・・

 それよりも気になるのが視界の奥に見える4メートルほどの高さで鎮座するクリスマスツリーの骨組みみたいなのは何?

 円錐状にくまれた鉄のポール。その上に人が一人乗れそうな椅子が・・・


 ゆっくり歩み寄り母さんの後ろから設計図を盗み見た僕は思わず頭を抱えた。


 大天使USA計画。そう書かれた企画書には4メートルほどの大きさの椅子に鎮座するUSAの姿がある。白地にブルーラインで作られたドレスと一体に重なる大きな椅子も衣装であり、鉄のポールで作られた三角錐にもドレスと同じように白地にブルーラインの生地で覆われる。そして椅子の後ろには大きな6枚の羽根が飾られライトアップまでされていた。


 「紅白の小〇幸子かよ!!!」思わず叫んでしまった。


 「あら優ちゃん来てたの」


 「来てたのじゃねーよ! 何だよこれ! ふざけるな!」


 怒りを露わにする僕にメイドズは手を止め、ポ~とこちらを見つめ顔を赤らめる。母さんすらも若干赤くなってないか?あっペルちゃんも真っ赤だ・・・


 「って、そんなのかんけーねー! 何悪ふざけしてる! 僕はこんなの着ないからね!」


 「せっかく徹夜で作ったのに着ないとメイドズが可愛そうでしょ!」


 「あんなの着させられたら、ただの見世物じゃないか! どうせ動くこともできないんでしょ! やってられるか! 僕はこの上の衣装だけで出ますからね。と言うか、もうそこにあるじゃん。これだけでいいですから! じゃっ!」


 直ぐに立ち去ろうとすると、後ろから抱き着く母さん。


 「優ちゃん待って。あれを着るメリットだけでも聞いて、ね、ね」


 「メリット?」


 聞く意思を見せたら後ろから抱き着くのを止め、僕の前に移動してきた。いつになく真剣な目だ。


 「よく聞いてね。これから200名近い人がパーティーに来るわ。その中に貴族やバカみたいな金持ちが何名も来るのよ。

 あのジジィが無駄に多く招待するから・・・

 それと今回のパーティーは本来私の再婚と優ちゃんの結婚相手を探す意味もあってね、年頃の連中まで来るのよ。

 昨日の今日でそんな大きなパーティーが開けないのはわかるでしょ。

 だからジジィとレオンは自分達のメンツを潰さずにUSAがうちに来るってパーティーにすり替えたのよ」


 どゆこと? 再婚相手? 結婚相手? メンツ?


 「だからね、結婚する気満々のバカ貴族やバカ金持ちの相手を世界トップモデルのUSAがしたらどうなると思う?」


 そりゃ求婚の嵐に・・・しかも皆USAの中身が男と知らないわけで・・・


 「だから手の届かない所に置いたんじゃない。それとも優ちゃんは奴らからの求婚に答えるつもり?」


 これは母さんが正しいのか? それとも僕が正しい?


 「わかった? 理解できた? 物理的に手の届かない位置にすれば断るのも楽になるでしょ。最悪の場合は怒ったフリして、だんまりしてればいいのだから」


 何だろう完全に言いくるめられている気がする・・・


 「さぁ選びなさい! 着るの? 着ないの?」


 自信満々に仁王立ちして回答を求める母さんに僕が出した答えは・・・



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