第63話 ノックダウンと朝食
目が覚めると温かく柔らかい物に包まれていた。
秘書ちゃんとメイドちゃんである。二人共いい笑顔で眠っている。僕の両腕を抱きしめながら・・・とても柔らかいです。
意識をしっかり持ちベッドを抜け出す。何とか二人を起こさずに抜けられた。そしてペルちゃんであるが、枕を抱いて眠っていた。少しの罪悪感が・・・
3人が寝ているうちにスーツに着替え・・・無い!僕の着換えが全部無い! 母の陰謀か!
仕方なく長袖のワンピース着替えた。慣れているとはいえ親戚の家で女装とか誰得だよ・・・喜ぶ母とメイドズと祖母とペルちゃんの顔が浮かぶ・・・いっぱいいた。
折角だし朝風呂を浴びよう!
昨日のようなミスが無い様にバスタオルで胸まで隠せば男がいたとしても大丈夫なはず。それに時刻もまだ6時だし、そこまで早起きする人はいないだろう。
僕は昨日の大浴場へ向かった。
受付のメイドさんに英語で話しかけ、入浴中の男がいないのを確認し大浴場へ。
バスタオルを巻きいざ入浴。
ゆっくり肩までつかり「あ“~~~~~」と息を吐く。お風呂は心の洗濯とよく言ったものだ。昨日あった嫌な事がお湯に流れていく様な気さえする。
それから満足するまで入浴を楽しんだ。そして事件は更衣室で起こった。
僕がバスタオルで体を拭いていると後ろから声が掛かる。
「おはよう、自慢の大浴場は漫喫でき・・・ギョフッ」
祖父が鼻血を噴水がごとく噴き出し天井にもしぶきが掛かる。
2度目はなれたものでボタンを連打し、メイドさんをすぐに呼びバスタオルを体に巻き付ける。
走って来た二人のメイドさんに祖父を指さし、悲鳴が上がり直ぐに止血に移った。それを見ならが早く個室風呂を直してほしいと切に願いました。
そんな事もあり朝から意気消沈気味です。
部屋に帰ると3人とも起きて着替えを済ませていた。
「優お兄チャンどこ行ッてたの!」ご機嫌斜めのペルちゃん可愛い。
「ちょっと朝風呂にね。今度は祖父をノックダウンしてきた・・・」
「「ぷっ」」と噴き出す秘書ちゃんとメイドちゃん。ペルちゃんは寝てたし事情を知らないようだ。
「次はペルも誘ってクダサイ」と抱き着かれた。
「それはダメだよ。ほら後ろにおっかない顔した二人に怒られちゃうからね」
ペルちゃんの後ろに般若が2匹いるんだもの・・・
「ぶ~~~」
ペルちゃんの頭を撫でて機嫌を取っているとノックの音。
「どうぞ」と声をかけると、この城のメイドさん。「朝食の準備ができました」ぺこりと頭を下げる。
「祖父様の事は聞いてますか?」気になるので聞いて置く。死因が僕とかだと流石に困る。
「清二様は緊急で病院へと運ばれました。先ほど輸血を開始したと報告を受けております。命に別状もないとの事ですので、正午までには戻られるかと」
良かった。生きてる。
「ありがとうございます。朝食へはすぐに向かいますので」
「では失礼します」メイドさんが去っていった。
それにしてもこの家の主二人を病院送りにした僕ってなんなんだろう・・・不可抗力とはいえ、やっぱりここへは来ない方がよかった気がする。
「優様、難しい顔をしていますよ。せっかく可愛いワンピースを着ているのですから笑顔でいて下さい」とメイドちゃんに怒られてしまった。
そうだよね。忘れよう。
食堂へ着くと祖母から謝罪の言葉を受けた。どっちかと言えば病院送りにした僕が悪いと思うのですが・・・
広い食堂だが食事をしているのは祖母と僕と秘書ちゃんメイドちゃんとペルちゃんだけだった。母やメイドズの姿が無い。
「母さんたちの姿がないけど、まだ寝ているのかな?」
「牡丹ちゃんは昨日からずっと籠って作業してるわよ。地下室に昔使ってた作業部屋があるのよ」と英語で話す祖母。
メイドさんの一人がこちらへ来て「昨日から寝ずに作業されております。朝食を届けたのですが食べてもらえるかどうか」
心配してくれているのだろう。
まったく母さんの集中力は凄いけど、それしか見えなくなるのは昔から悪い癖だ。
「食べ終わったら僕が注意しておきますね。すいません」
「いえ、お気遣いありがとうございます」一礼して去っていくメイドさん。
「さぁ冷める前に食べましょ!」
朝食はエッグベネディグトにオニオンスープと野菜のマリネ。後はフルーツが取り放題だった。半熟卵が流れ落ちる絵は何とも食欲がそそられる。ペロちゃんも笑顔で食べている。
「そうそうレオンの事だけどね。清二さんと一緒に帰って来るわ。優ちゃんごめんね」
「オ父様に何かあっタノ?」と小首をかしげるペルちゃん。
「優ちゃんのお風呂を覗いて鼻血出して倒れたのよ。まったく情けない!」祖母様言い過ぎですよ。覗いたんじゃないし・・・
「オ父様サイテーデス! 優お兄チャンのお風呂覗くナンテ!」この誤解は解いて置かないとレオンさんの今後のパパ力に影響が出そうだ。説得しないと。
「ペルちゃん、レオンさんは悪くないよ。僕は男でしょ? ね?」
またも小首をかしげて何やら考えているペルちゃん。
「う~ん、デモお父様は鼻血出して・・・ウワキ! そう、浮気デス!」寧ろ浮気しようとしたのはその嫁のマリアンヌさんだよ!これは言えないよね・・・
「ペロちゃん、許してあげて、お願い」椅子から降りて頭を下げる僕。
「優お兄チャン!? わかったよぅ・・・今回ダケだからネッ」
「ありがとうペルちゃん」優しく頭をナデナデナデ。
何とかレオンさんのパパ力を保つことができたかな・・・
それにしても母さんとメイドズの奇行が心配だ。早く食べてそっちへ向かおう。




