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第577話 オーナーのお宅拝見



 男装のレオーラさんにエスコートされ廊下を進み、エレベーターに乗り下の階へと向かいます。


 それを五階ほど続けるとVIPエリアが終わったのかスタッフオンリーという看板が目に入り、Uターンしようとするとメイド長に止まられました。


「こちらはホテルのオーナーの御家族が暮らすエリアでして、挨拶だけでもお願いします」


 スポンサーではないと思いますが、今回の慰安旅行の拠点的として貸し切り予約を快く引き受けてくれた人ですし、挨拶ぐらい幾らでもしましょう。


 メイドズの一人が素早く駆けて行き奥のドアを鳴らすと、品の良さそうなお爺さんとお婆さんにお孫さんだろう女の子が顔を出します。


 僕とレオーラさんが会釈するとお爺ちゃんとお婆ちゃんは笑顔になり、お孫さんだろう小学生ぐらいの少女はパッと笑顔に変わり、こちらへ駆けてきました。


「USAお姉ちゃん! こんにちは」


 ぺこりと頭を上げる少女に「こんにちは」を返すと、レオーラさんもほっこりしたのか笑顔を返します。


「もし良かったらお茶でもどうですか?」


 優しそうなお婆さんに部屋へと手招きされ、お爺ちゃんもそれがいいだろうとドアを開け中へと進みます。

 お孫さんは僕の左手を取り部屋へ連れ込もうと……


 言い方が悪いですね。


「一緒にお茶を飲みましょう」


 手を引く少女に連れられ中に入るとトラのはく製がドンとあり軽く驚きますが、先ほどまでシロクマが近くにいたのを思い出し、こちらは動いていたし子供に大人気だった事を考えるとゲレンデの勝ちですね!


 よく解らない勝負に勝利し中を進むと広いリビングには札幌の地が見渡せる大きなガラス窓がありますが、ホワイトアウトは続いている様で真っ白です。


「ラビットテールのみなさんには気の毒な天気だけれど楽しめているかしら」


 ソファーに座りお婆さんから温かい紅茶を入れてもらいました。


「僕はとても楽しめています。こうやって室内デートをさせてもらえているからね」


 どうせならホテルの良かった所を発言するべきだと思うのは僕だけでしょうか?


「ロイヤルスイートに宿泊させて頂きましたが、中は広くて内装も嫌味がなくスッキリとしているのに凝った作りのある暖炉や、ガラス張りの天井のお風呂も運が良ければオーロラが見えたりしそうでワクワクする部屋でした。食事も美味しかったです。毛ガ二はみんなが喜んでいましたし、鮭のチャンチャン焼きが本当に美味しくて、おかわりしてしまいました」


 僕の言葉に「あらあら」と嬉しそうな顔をしてくれるお婆さん。お爺さんは若干ウルウルしているのですが……


「オーロラが見えた事がないが、下品にならないようにわしが特注したんじゃ。まだ若いのにUSA姫さまとやらは確かな目を持っておるのじゃな」


「スイートルームはこの人が拘って作ったのだけれど、宿泊する人が心休まる様な内装にって、金色を使わず緑や青を多く使った部屋にしたのよ」


「ここは金色がいっぱいで目がチカチカする~」


 少女の言葉に紅茶を噴きそうになるレオーラさん。少女が言うように金とクリスタルを使ったシャンデリアや、高そうな絵画を入れる額縁も金色ですし、ガラスの戸棚の中にはジュエリーや金の招き猫に金の時計や金の……


 視界には必ず金色が入ってきますね。


 手にしているティーカップも金の縁取りが施されています。


「かっかかかかかか、孫娘が言う通りじゃな!」


「ホテル業を始めた頃は成金だの言われましたが、その通りですものね」


「うむ、金は成功の証であるのじゃ。目には悪いだろうが自身が努力した結果として増えて行きおった」


 努力の結果を解る形で残してきたのでしょう。気持ちは解りますが、こうもキラキラしていると目に悪そうです。


「それじゃあ、そろそろ僕たちも戻ろうか」


 レオーラさんの提案に賛成ですが、僕の隣に座った少女の悲しい顔を見てしまうと席を立ちづらいですね。


「あら、それなら一枚だけいいかしら?」


 一眼レフの高そうなカメラを持つ支配人さんがひょっこり現れ一礼です。


「USA姫さまと一緒に撮りたい!」


 隣に座っていた少女が笑顔へと変わり、手を繋ぎながらお爺さんとお婆さんの座るソファーの間に身を入れると少女は膝の上に座ります。


「えへへ、お膝の上でもいいですか?」


「もちろん」


 膝の上に座った少女を撫でていると既に撮影が始まっているのか支配人さんからフラッシュが飛び、それに合わせて金色たちもやる気を出し眩しさが……


 何枚撮ったか解りませんが満足顔の支配人さん。

 レオーラさんが複雑な表情をしていますが、一緒に撮影したらレオラさんが生きていると勘違いする人も出てくるかもしれませんので、写真を取られなくて正解だと思いますよ。


 最後に支配人さんとも写真を取ると、フリーズして動かなくなり少しだけ困りましたが、次の階に向かいましょう。


 少女がエレベーターまで見送りに来てくれ、互いに手を振って笑顔で別れた事が嬉しかったです。




 お読み頂きありがとうございます。

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