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第557話 恥ずかしいお願い



 お腹いっぱいになったのか帰って来たミーアちゃんは僕の膝の上に寝転がり、大きな欠伸をして目を閉じました。


「はは、野生をなくした寝姿だね」


 レオーラさんが言うように僕の膝の上で仰向けに寝転がる姿は、野生というよりも休日のお父さんといった感じです。


「そこも可愛いデース」


 クリスさんもミーアちゃんの寝姿を見て微笑んでいます。


 優しくお腹を撫でるとくすぐったそうに身をよじりますが、起きる気はない様でグデッとしています。


「愛嬌のある顔で可愛いですね~」


「はじめて見た時は痩せたタヌキかと思ったけど、ミーアキャットだったのね~ヒック」


 お酒臭い二人が現れミーアちゃんを撫でたり突いたりしています。


「せっかく寝たし、そっとしてあげて下さいね」


 酔った教師に注意をしてミーアちゃんを秘書ちゃんが持ってきたペットキャリーへと入れると、今度は僕の頭を撫でたり背中を突いたりする酔った二人。


「こっちも可愛いわ~」


「こんなに大きく育って……先生は嬉しいですよ~」


 臼ちゃん先生と出会ってからまだ二年ほどですが、育てられた記憶は僕にはありません。


「うう、男らしい背中になって」


 ツンツンしていた背中をぺたぺた触りだし、僕はどうしていいやらです。


「なに泣きだしているのよ」


「だって、こんなに大きく育って……私は嬉しいよ~」


 何だか面倒くさいタイプの酔い方をしている様です。


 関わるのもアレなので立ち上がると「行かないで~」と叫ぶ声が聞こえます。


 振り向くと僕へと手を伸ばしている臼ちゃん先生は涙を流しています。


「えっと、最近見た映画であった別れのワンシーンと勘違いしているだけだから気にしないでね。ほら、あんたは飲み過ぎよ」


 二組の担任さんに説明され安心する自分がいます。


「それでは介抱をお願いします」


「そうね……はぁ……ほら幸はお水を飲みましょうね」


「はーい、ごくごく」


 どうやら二組の担任さんはこういった扱いが上手いようで、酔った臼ちゃん先生に水を飲ませ落ち着かせています。


 こっちは大丈夫ですね。


 では、あっちはどうでしょうか?


 視線を変え壁から顔を出す少女へと向けます。そこにはリリアナちゃんが僕を見つめており、目が合うと壁に顔を隠します。


 先ほど寝ていたのでメイドさんに連れ去られたはずですが……


 ずっと隠れた場所を見ていると、こっそりまた顔を出し慌てて顔を隠しました。


 どうしよう。可愛いです。


 こっそりと近づき顔を出した所で確保です。


「きゃっ!?」


 可愛い悲鳴を上げたリリアナちゃんと確保している僕に視線を集めますが、悪い事はしていませんからね!


「どうかしたの?」


「あの、あの、お姉ちゃんからお願いがあって……」


「お願い?」


 モジモジしながら話し始めるリリアナちゃんのお願いなら出来るだけ叶えてあげたいですね。


「はい、お姉ちゃんは今頃イベントを頑張っていて、ビデオ通話でUSAお姉ちゃんに出てほしいって……電話で起こされました……ふわぁ~」


 大きな欠伸をするリリアナちゃんのお願いにどうしようか悩みます。


 今の衣装はUSAダークネスなので男性用の衣装であって、求められているのはミステリアスUSA姫のような女性らしい服装だと思うのですが……


「これは着替えなきゃかな……」


「大丈夫です! そっちの方が喜びます!」


 小さく呟いた僕の声にリリアナちゃんが目を大きく開け、大丈夫だと教えてくれます。


「それならメイドちゃんに声優をして貰ってビデオ通話すればいいかな?」


「はい! やった! お姉ちゃんも絶対喜ぶです!」


 ギュッと抱きしめられましたが、僕は無実ですからね!








 別の部屋へと移動して軽く化粧を直され、飾ってある骨董品の黒地に金の細工が施された猟銃を持たされメイドズの指導の元、動きを教え込まれます。


「これで解っただろう。世界は私のものになる」


 猟銃を肩に担ぎ口パクしながらポーズを取りますが、物凄く恥ずかしいです。


 そんな僕をキラキラした瞳を向けるリリアナちゃんにレオーラさんに教師二人に祖母とメイドさん方……


 特に臼ちゃん先生に見られるのが、なんというか恥ずかしくて顔が赤くなりそうです。


「はい! もっと自信を持ってポーズを決めて! 次のポーズはこう!」


 メイドズ監督が猟銃をクルクルと回し構え、ウインクをパチリです。


 恥ずかし過ぎませんか!?


 僕としてはただ椅子に座ってメイドちゃんに決まった台詞を言ってもらい、二分程度で通話を切るつもりだったのですが……


「今日だけの特別だからな……四月から始まるアニメを絶対に見るように、以上だ!」


 メイドちゃんの台詞も口パクをしていると、何だか僕が言っている気さえして来て……


 いつもポーズを取っているお譲の凄さが理解できました。


 ビデオ通話を繋ぐと歓声で何を言っているか聞こえませんでしたが、僕としては決まった事をやるだけなのでポーズを決めてメイドちゃんがアフレコし、三分ほどの通話が終了すると恥ずかしくなりフレームから外れ逃げ出しました。


 次の日にテレビやらネットやらで、その映像が拡散され……


 安請け合いはしないと心に誓いました。





 お読み頂きありがとうございます。

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