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第524話 お酒臭い部屋から避難



 避難してきた部屋はあまり広くない僕が使った部屋です。座る所は化粧台の椅子とベッドしかないので少女五人はそこに座りますが、みんな揃って背中からベッドにボフンと倒れたのですが……


「二度寝したいです!」


「優お兄さまの匂いがします」


「何か照れちゃうね……」


「すぅすぅ……」


「これは……ドキドキするよ……」


 ワンコはガチで寝ていそうですが、ポットでお湯を沸かして紅茶でも入れましょう。


 部屋を見渡しケトルでお湯をお沸かし、ティーカップがない事に気が付きました。


 仕方ないので酒臭いダイニングへと戻りティーカップに茶葉などを回収しているとメイド長が現れました。


「おはようございます。これは片付けても宜しいでしょうか?」


 リリアナちゃんのお父さんは回収されていますが、レオンさんや寝ているメイドズのことを、これと指差しているのでしょう。


「お願いします。優しく別の部屋へ移動させて下さい」


「畏まりました。ついでに掃除や換気に臭いをリセットさせますので、もう少しだけお部屋でお寛ぎ下さい。桜お嬢様もお手伝いして下さいね」


「もちろんです!」


 丁寧に頭を下げたメイド長とメイドちゃんにお任せし、紅茶セットを回収した僕は部屋へと戻りますが、後ろから聞こえる悲鳴に優しくといったのに残念ですね。


 罰は言い過ぎだと思うのですが、ひとの部屋で酒盛りをして酔い潰れるまで寝ているのは酷いと思うので、メイド長に叱られて下さい。


 部屋へと到着すると仰向けからうつ伏せになった少女たちがいます。


 ワンコは安定の仰向けで寝息を立てているのですが、うつ伏せになった少女たちは慌ててベッドへ座り直しましたが、顔が真っ赤です。


「ご馳走さまでした」


「優お兄ちゃんの匂いがしました」


「お父さんとは違う匂いだった……」


「お、お茶を入れるのを手伝うよ!」


 紅茶を振る舞う前にお礼をいわれましたが、一華ちゃんは手伝ってくれるようです。


 考えるのは止めて紅茶を入れましょう。


 茶葉はパック式なのでパクをカップに入れてお湯を注ぐだけです。


 慎重にお湯を注ぐ一華ちゃんに注意を向けながら、僕は紅茶を置くテーブルを用意します。


 本来この部屋は使用人用の部屋であり、ベッドにクローゼットと化粧台しかありません。紅茶を置く為のテーブルがないので、化粧台に添えられていた背もたれのない椅子の上にトレーを置き、真中に重さのあるガラスの器に入った砂糖入れを置きカップを取ってもバランスが保てるようにしました。


「美味しいです!」


「簡単に入れられる割に味が良いですよね」


「香りもしっかりと立ってますね」


 少女たちの舌に合ったようで良かったです。


 普段ならティーポットで入れた紅茶を飲むペルちゃんにアシュレちゃんにリリアナちゃんだろうけど、最近のパック式の紅茶も香りがよく出る工夫があって美味しく頂けますよね。


「よかった……緑茶は入れた事があるけど、紅茶ははじめてだったから緊張した……」


 お湯を入れるだけの簡単な作業ですが、飲む人が舌の肥えたお譲さまだからか一華ちゃんは緊張していたのですね。


 その後はゆっくりと紅茶を飲みながら魔法少女重音ちゃんの話をしているとワンコが起きたのか、むくりと起き上がります。


「お腹空いた……お母さん……ごはんまだ?」


 僕を見つめ朝ごはんを注文するワンコは僕がお母さんに見えているのか、それとも寝ぼけているのかな。


 時刻も八時となり朝食を取りたいですし、下の食堂へ行くか、レストランの集まるエリアへ向かいましょう。


「あれ? お母さんが若くなってる」


 違うね! お母さんではなく僕だからね!


 数回目を擦ったワンコは僕を見つめ、顔を真っ赤にして後ろへと倒れます。


「優くんがお母さんしてる……」


 穴があったら入りたい気分なのか、体を捻りうつ伏せになり毛布を頭に掛けはじめたワンコ。まわりの少女たちは口元を押さえ肩を揺らしています。


 ワンコには悪いかもしれませんが、面白行動に僕も笑うのを我慢して肩を揺らしていると、ノックが響きメイド長が姿を現しました。


「朝食の準備が整いましたが、どうかされましたか?」


 肩を揺らす五人と毛布を被り「うううう」と唸る声が聞こえたら、どうかしたと思うよね。


「大丈夫です。朝食は下に食べに行くかと思っていたのですが」


「それだと優さまが目立ってしまうかと思い、こちらで準備させて頂きました。リリアナさまからのリクエストもあり和食を、庶民的な和食を用意させて頂きました」


「わぁ、ありがとうございます!」


 立ち上がり手を合わせ喜ぶリリアナちゃんのリアクションにほっこりしますし、毛布の盛り上がりから聞こえたお腹の音に笑うのを堪えます。


「それではこちらへお越し下さい」


 手で出口へと誘導するメイド長に感謝をしながら少女たちを先に行かせ、ワンコが隠れている毛布を取り去ります。


「ほら、一緒に朝ごはんにしよう」


 手を差し出すと顔を赤くしたワンコは手を取り起き上がらせます。


「ううう、うん」


 まだ顔の赤いワンコを連れダイニングへ向かい、朝ごはんを一緒に食べましょう。




 お読み頂きありがとうございます。

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