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第5話 衝撃の出会とわんこ

 秘書ちゃんの運転する車が止まる。


 「ありがとう。いってきます」


 その声に秘書ちゃんも「いってらっしゃいませ」と返してくれる。


 これから三年間通う学校を見上げる。


 私立紀見ヶ崎学園きみがさき通称さきがく。ひとクラス30名が7組ある。それなりに多い生徒数であり、部活動も盛んでサッカーや野球は県大会などの常連らしい。学校周囲も治安がよく、設備も整っている。それなりのお金持ちの子供が通う学園としても有名だ。


 風紀委員だろうか複数の生徒が校門前で挨拶をしている。


 「おはようございます」


 「コラそこの! 制服はちゃんと着る!」


 その声があちらこちらから聞こえ、僕も目立たないよう挨拶をし競歩ばりの素早さで玄関へ。下駄箱を開けるとラブレターが4通……


 嘘彼女の設定を固めなくては。


 一瞬の油断だった背中に衝撃。


 吹っ飛ぶ体。


 バランスを崩し床に這う僕。


 ラッキースケべ発動!!


 僕の上で顔を赤くする男子生徒……


 「ごごごめんね」


 「うん、どいてくれ」


 どこにでもいそうな坊主頭の少年はゆっくりと俺から降りてくれた。野球部だろうか?


 「本当にごめんね。怪我とかしてない?」


 真っ赤な顔で謝る少年よ。ササッとどっか行け! と心の中で叫ぶ。


 「大丈夫だから」


 さて上履きへと履き替えようとした時に気が付いた。眼鏡が無いだと!


 眼鏡、メガネ、めがね、とつぶやきながら床を見渡す。


 「兎月くんおはよう~」

 

 OHロリ子! 挨拶と一緒に僕のメガネを踏みつけて……


 「おはよう……河本さん。ちょっとどいてもらっていいかな?」


 足の裏の違和感に気が付いたようですぐに退き「ごめんごめんごめん」の謝罪を受け取る。粉砕された眼鏡も受け取る。綺麗に五等分されていた。


 「ねえねえ、あの子かわいい~」

 「マジで可愛いな」

 「新入生代表の奴だろ うわっ眼鏡ないと美人過ぎ」

 「俺は眼鏡ありでもいいな」


 外野の声がまずいことになってるな。


 「河本さん、謝罪はもういいから早くクラスへ行こう」


 素早く上履きを履き、ラブレター回収し靴をしまう。ロリ子も行動が早いようですぐに廊下へ。


 歩きながら粉砕された眼鏡をポケットにしまい、右手にアタッシュケース左手で顔を押さえ俯きながら教室を目指した。



 ざわざわした教室に入ると一瞬にして静寂が訪れる。


 集まる視線。


 入口の一番デカい生徒であるゲレンデが一言「やっぱり可愛いな」


 「おはよう」引きつった笑みであっただろうか?


 席につき新聞を広げ、顔を隠す。会社経営の基本である情報入手。あと大人との会話の種にも必要なのだ。まぁ普通の高校生は教室で新聞なんて読まないだろうけど。


 またガヤガヤとしたBGMが教室に戻る。


 そういえばロリ子は大丈夫だろうか……


 視線を左に動かすと青い顔のロリ子が机をぼ~と見つめていた。落ち込んでいる感が半端ない。少しフォローしておかないとだな。


 面倒くさいと思いながらも「河本さん、大丈夫? さっきの事は気にしてないから、その元気出して」


 顔だけこっちを向けうっすら潤んだ瞳のロリ子。


 マジか! 泣くのか! それはやばいよ。学校二日目で隣の席の子を泣かせるなんて。しかもその子は間違いなくこのクラスのマスコットになるだろうロリ可愛い子。考えろ! 策を練れ! 頭よ回転しろ!


 「本当に気にしてないから。それにあれは伊達眼鏡だし」


 そう言いながらロリ子の様子をうかがう。


 マジか! 涙腺崩壊か! 落ち着け! 次の手だ!


 ゆっくりと立ち上がりロリ子の頭を撫でる僕。


 最終手段良い子良い子。僕の経営する孤児院の子供は大体これで何とかなるが、ロリ子にも通じるだろうか。いや通じろ! 頼むから! お願い!


 教室から黄色い悲鳴。

 「なにあれ羨ましい」

 「二人はどういう関係!?」

 「もう付き合ってる!?」

 「何か男女の仲って言うより百合だな」

 「俺には仲のいい姉妹に見えるぞ」

 「確かに……でも羨ましい」

 「頼んだら撫でてくれるかな?」


 想像以上に目立ってしまった。だが、泣かれるよりはましなはず。

 そして、ロリ子の表情は……めっちゃ笑顔。目を細めて撫でられるのを喜んでくれているようでホッとする。あっ撫でられるたびにサイドテールがヒョコヒョコ動いて子犬みたいだな。

 ロリ子のあだ名決定。わんこだ!


 「兎月おはよ~えっえええええっ」


 おい普通(僕の席の左前)どんな挨拶だ。お前のあだ名は普通なんだ。普通に挨拶をしろ!


 「えっと、木村君だよね、おはよう」


 「ああ、おはよう。眼鏡ないだけですげー美人だな。てか何この状況?」


 わんこを撫でていたのと眼鏡が無い事を思い出した。


 「わん……じゃなかった。河本さんに眼鏡踏まれちゃって、そのフォローで頭撫でてた。僕の経営する孤児院の子達も頭撫でると落ち着いてくれるからさ」


 わんこから手を放すと名残惜しそうに僕を見てくる。また今度撫でてあげようと心の中で思っていると、後ろから「BLもアリかも」と小さく聞こえた。


 うん、学校辞めたい……




 誤字脱字すいません

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