第493話 新年明けましておめでとうございます
座布団に正座のまま落とし穴に落とされ新年が始まり、正座のまま落ちるとスポンジのプールにはそのままの姿勢で着地するという発見をしましたが、何処にも発表する場所がなく……
梯子ありがとうございます。
梯子を上ると新年のあいさつが響き渡り多くの参拝者から拝まれたり、クラッカーのカスがドレスに絡んだり、遅れて上がって来たMINIUSAがまた落ちそうになったりと、ゴチャゴチャしたお正月の始まりです。
落とし穴に落とされた僕らと、上がってくる僕らを手伝ったメイドズがステージから離れると落とし穴部分がウィーンと機械的な音を出しながら自動で閉まります。
神社という古風な場所に機械音は似合わないと思います。
「では、改めてお掛け下さい」
開閉部分に新しい座布団が敷かれますが、そこに座る勇気がある人がいるとは思えませんよ。
メイド長の言葉に怒って退散すればこの珍妙な新年イベントが終わるのかと思っていると、忍者三人が現れ僕たち三人が座っていた座布団に座ります。
「忍ぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーー」
「デース!」
「デース!」
せめて言い終わるまで待ってから落としてあげて下さい。忍法何とかと言おうとしたのに、忍と叫びながら落下しましたし、ウィレオくんとアニーちゃんはまだ幼い子供なのですよ!
嬉しそうな声が下から聞こえてくるので心配していませんが、周りの人が心配しますからね!
忍者三人を助けるために邪魔になると思い神社から離れ、このまま何処か遠くへ行きたくなる気持ちをMINIUSAとKUROUSAに引きとめられました。
「甘酒だと思うよ!」
「やきとりに焼きトンだって!?」
引きとめたのは屋台巡りのためだったようです。
確かに初詣には無料で配ってくれる甘酒や、お祭りの様な屋台なんかも立ち寄りたいですね。なによりもおみくじを引くべきだと思います。
「それじゃあ気分を変えてまわろうか」
僕の言葉に両手を上げて喜ぶMINIUSAにKUROUSA。
それと同時に大量のシャッターが切られ、まわりの家族連れたちからもスマホのフラッシュが眩しく、昼間かっ! というツッコミが出そうになるのを何とか堪えました。
「本日は正月と目出たい日であります。が、大声を上げたりまわりに迷惑を掛けたり、USA姫さまを困らせる方がいる様ですと御退出して頂きますので、それだけはお忘れなきようお願い致しますね」
メイド長の通る声にフラッシュが止まりましたが、USA姫に迷惑を掛けた張本人である母さんは祖父と王様と王妃さまを神社に上げて座布団に座らせていますよ?
「ヒヤー」
「ふがっ!?」
「キャー」
落とし穴にはまった権力者たちですが、国王さまと祖父は年齢も高めで心配してしまうのですが……
王妃さまについては若いという事になっているので大丈夫でしょう。
気を取り直して甘酒を配っている列へ並ぶと、甘酒を配っている巫女さんがこちらへと甘酒を届けてくれます。
「USA姫さま方に並ばれてしまうとここが大渋滞になってしまい……ファンです!」
申し訳なさそうに説明し届けてくれたファンに甘酒のお礼を言って列を離れます。
握手を求められそうになりましたが、メイド長のひと睨みで退散した巫女さん。次会う事があったら握手しましょう。
次はKUROUSAリクエストの焼き鳥売り場で向かいますが、メイド長の効果なのか人が割れて行きます。
割れて行った人たちに頭を下げながら進み、焼き鳥と焼きトンを数本ほど購入して、その場で歩きながら湯気の上がる焼きトンに噛り付きます。
「凄く美味しい!」
「豚バラの甘さに少し辛い味噌が美味しい」
「甘辛いタレと豚バラ肉の脂が良く合って美味しいね」
僕の感想はほぼKUROUSAと被りましたが、美味しいのは事実なので気にしないで下さい。
甘酒で油を流して口直しをしているとメイド長が口を大きく開けています。
これはあ~んの催促でしょうか?
甘酒を持っていた事もあり、購入した焼き鳥たちはメイド長に持って貰い自身の甘酒と焼き鳥の袋を持ったメイド長は食べ歩きができませんね。
焼き鳥をひとつ取りメイド長へ向けると、真顔のまま焼き鳥の串に噛り付き咀嚼します。
「とても美味しいですね。手が塞がっていた事もあり申し訳なく思ってしまいますが、USA姫さまから食べさせて頂き、うまみ成分が分泌しているのでしょうか……今なら串すら美味しく食べられる気がします」
味の感想なのか、あ~んが嬉しかったのか、よく解らない感想を頂きました。
串を食べるのは危険なのでやめましょう。
その後は数件の屋台を周りペルちゃんとアシュレちゃんが合流し、忍者三人と縦ロール二人にレオーラさんとも合流しました。
途中で臼ちゃん先生と二組の担任が大声で、結婚できますようにと叫びながら鈴を振りまわし走って巫女さんに追いかけられている姿を目撃しましたが、早く忘れたいと思います。
お読み頂きありがとうございます。




