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第473話 雪原のドッキリ


 カマクラでの昼食満足したのか、子供たちは欠伸をしながら目を擦っています。


 雪の上での移動は肉体的にも精神的にも負担が掛かりウィレオくんやアニーちゃんには辛かったのですね。ペルちゃんやアシュレちゃんも大きな欠伸をし、ワンコと一華ちゃんにも感染しました。


「汗をかいた人は温泉に入ってから、少しお昼寝しましょうか」


 桜姉さんの言葉に眠気と戦いながら手を上げるウィレオくん。それに続きアニーちゃんも「うぅぅ」とぐずりながらも返事をくれます。


 子供たちはこのまま親子で温泉へと向かい、僕は悪い笑みを浮かべたレオーラさんとレーネさんとレオネーネさんに掴まりました。


「子供たちがお昼寝をしているうちにドッキリを仕掛けないかい?」


 これは悪い提案です。何度もドッキリに引っ掛かり、落とし穴や寝起きドッキリに引っ掛かってきた僕としては反対ですが、なぜだか心が踊ります。


「この旅館の端から雪だるまの所まではゆるい坂道になっているから、そこからソリに乗せて雪原の間を抜けて雪だるままで滑れるように出来ないかな?」


「ライトアップさせてキラキラと輝く雪像の間をソリで滑り降りるドッキリです」


 何でしょうこの素敵なドッキリは……僕が受けてきたドッキリとは全くコンセプトが別といいますか、作っている人の心が綺麗なのかもしれませんね。


「その為にはみんなが力を合わせる必要があるんだ。特にメイドズに力を貸してほしい。雪玉を押している時にも思ったけど重機並みだよね」


 レオーラさんの言葉に激しく同意です。


 下手したらフォークリフトよりも重い荷物を持ち上げかねないメイド長やシングルメイドズには驚かされてばかりです。


「そうと決まればソリが真っ直ぐ進むように坂を整備するチームと、雪像を作るチームに、雪だるまや雪像をライトアップするチームに別れないとだね!」


 嬉しそうに話すレオーラさんは弟であるウィレオくんを喜ばせたいのだろう。


 メイド長がチーム分けをして大量の雪を転がしながら運ぶメイドズたち。


 雪像チームも動き出し、ここで意外な才能を見せたのは桜姉さんです。


 普通なら固めた雪に対して要らない所を削りだして形を作るのですが、桜姉さんは腕力を使って押し固め形を作って行きます。


 ぎゅっぎゅと力加減しながら押し固めて行き、魚のうろこと尾びれが見えた所で人魚かと思いましたが、完成した作品はまさかの鮭です。

 躍動感のある身をくねらせた鮭です。背景に荒波を作ったのが良かったのか、躍動感たっぷりです。


 レーネさんも彫刻組みに参加して、作っているのがスペースシャトルなのはウィレオくんが好きだからですかね?


 いつの間にか現れた夜剣さんも参加しており、段々と形作られたのは魔法少女重音ちゃんです。女将さんがコスプレが趣味だと言っていましたが、まだ発売前の魔法少女重音ちゃんの姿を雪で完全再現する所は凄いと思います。


 レオーラさんとSP軍団はソリが脱線しない様にガイドをつけた坂道を製作中です。


 ゴールになる雪だるま前ではレオネーネさんが笑顔で電飾を飾り付けて、隣で料理する僕も笑顔です。が、目測で三メートルはある雪玉を転がすメイドズに、常識というものがあるのか問いたいです。


 転がした大きな雪玉は母さんが拳と足を使い粉砕し、ソリが走るコースに利用されています。


 雪を集めるという意味では大きな雪玉を作り転がして運ぶのは効率的なのかもしれませんが……


 そんな感想を思いながらも僕は雪原に立ちガスコンロを使って料理しています。


 料理は言い過ぎかもしれませんが、大きな鍋にコーンスープを作りマグカップに注ぎ、作業する人たちへ温かいスープを差し入れしています。


 寒空の下で作業するのはとても大変ですし、足元も雪で使う素材も雪となれば体の芯から冷えてきます。

 一部の人が暑くなり薄着になっていますが、新人メイドズやSPさんは寒さに震えながらも作業しており、配ったスープを受け取ると涙を流して喜んでくれますが、余り涙を流すと凍りかねないので注意が必要ですよ。昼間なら大丈夫かな?




 そんなこんなで作業は続き、日も傾き始めた事には完成しました。


 辺りを暗くして四人の子供を待ちますが地獄です。


 真冬の外は日が落ちるとぐんと冷え、風は冷たく、暖を取ろうにもたき火には蓋がされ、カイロだけが僕の心の支えです。


 そんな中、旅館の方から懐中電灯の明かりが見え、キャッキャした声も響き「行きマース!」と案内役のクリスさんから合図があり、遅れて「マース!」の声が聞こえます。


 ソリの滑る音がすると同時にライトに明かりが灯り、雪像の間を抜けてくるソリの集団があり「わーきゃー」と叫びながらも、こちらへと向かってくる子供たち。


 ソリが雪だるま前まで到着すると、残してあった電飾に明かりが灯ります。


 ライトアップされた大小様々な雪だるまに、雪像たちも輝きだし、遅れてそりでやってきたクリスさんの赤い鎧にもLEDが設置されているのか、白や黄色に緑など様々な色で点滅し、若干主旨がぶれてしましましたが子供たちは大喜びです。


「綺麗です……」

「キラキラいっぱい!」


 ウィレオくんにアニーちゃんは目を光らせて雪だるまたちを見つめます。


「素敵な演出ですね」

「光り輝く雪景色はとても素晴らしく、この感動を一生忘れません」


 ペルちゃんとアシュレちゃんにも好評なようで、準備した甲斐があるというものです。


 四人の喜ぶ姿に泣きながら感動するメイドズの新人たちや、SPさんがガン泣きしているのには少しだけ引きましたが、楽しい家族旅行ができたと思います。


 ……………………家族旅行だったのでしょうか?



 お読み頂きありがとうございます。

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