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第462話 旅館の夕食と偽イクラ



 宴会場は畳敷きで何とも広く感じます。


 上座は祖父たちが占拠しており、そこへレオンさんたち大人組が混ざりカンパーイです。


 畳の上に多くのお膳が並べられ、豪華な料理が色鮮やかに配置されています。


 適当に座ると右にワンコ左にレオーラさんが座り、対面には一華ちゃんやレーネさんにクリスさんが腰を下ろします。

 レオーラさんの横にはウィレオくんとアニーちゃんが座り対面にはレオネーネさんが腰を下ろし通訳は任せて下さいと視線を送ってくれます。


 ペルちゃんとアシュレちゃんは眠い目を擦りながらも座布団に座り、レーラさんの横で二人して大欠伸です。


 料理はというと、メインにあるのは白身魚の西京漬けがこんがりと焼けて何とも美味しそうです。他にも根菜系を使った煮物に白菜の漬物などの小鉢があり、鳥のカラアゲのような子供の喜ぶものもあります。


 固形燃料を使った鍋がないのは残念ですが、つみれの浮いた吸い物が付いていますし、驚いたのは黄色いイクラの様な卵が小鉢に入れられていることでしょうか。


「黄色いツブツブは何の卵かな?」


 ワンコが僕に聞いてきたので記憶の片隅にあった「サクラマスの卵の醤油漬けだと思いますよ」と教えます。


「サクラマスは海に下ったヤマメの事でサケのように海まで行き大きくなって、生まれ育った川へと戻ってくるんだよね。美味しいけど漁獲量が少ないから料亭などに降ろされてスーパーとかでは飼えないと聞いた事があるよ」


 一華ちゃんは雑学も得意なようです。


「その通りですね。本日はサクラマスの貴重な卵の醤油漬けと、近所で養殖されているチョウザメの西京みそ焼きなどをご用意いたしました。キャビアの方も別でご用意する事も出来ますがお子様などにはあまり評判が宜しくないので……代わりといてはなんですが、この後でチョウザメの刺身やムニエルもご用意致します。ご飯の方はおひつに入っておりますから、お代わりも沢山して下さいね」


 女将さんの言葉に「はーい」と返事をするワンコと一華ちゃん。ウィレオくんも「はーい」と返事をし、アニーちゃんもそれを真似て「はーい」です。


 なんと可愛い子供たちでしょうか。


「いただきます」の声が重なり困惑するアニーちゃんにレオネーネさんが説明すると「イタダキマース」と可愛い声のアニーちゃん。


 それに対してクリスさんが親指を立ててスマイルを送るのは、なんか違うと思うな。


 まずはチョウザメの西京漬けを口に含むと淡泊な味わいに甘い味噌の味と焦げた香りが堪りません。

 これはご飯が進む味です。


 吸い物も上品な味でつみれもチョウザメなのかふわりとして癖がなく、白髪ネギと柚の香りが爽やかです。


「偽イクラ美味しい~」


 ワンコの言葉に苦笑いをする女将さん。


「サクラマスの卵って言おうよ!」


 一華ちゃんはツッコミも出来て優秀ですね。


 僕も気になりスプーンで少しだけご飯に掛けて口に入れるとプチプチです。イクラよりも皮が厚いのかプチ感が大きいですが味付けは抜群です。

 これはイクラ大好きな桜姉さんも喜ぶはずです。


「偽イクラおかわり!」


 大人チームで食事していた桜姉さんが手を上げ、女将さんを更に苦笑いさせています。


 心の中で申し訳なく思いながら白菜の漬物を口に含むと、こちらも柚の香りがして魚卵特有の匂いをかき消してくれます。

 というか、本当に美味しいお漬物ですね。買って帰れるのならこれも秘書ちゃんへのお土産にしましょう。


「お待たせしました。こちらがチョウザメのお刺身とムニエルになります。小さいお子さんからお配り致しますね」


 夜剣さんが大皿を持って現れ、妹さんが小皿にお刺身を取り分けてくれます。

 他にも仲居さんがムニエルを取り分けてくれ、室内は香草とバターの香りが充満し幸せな匂いに包まれます。


「美味しいでしゅ!」

「脂がのっているのにさっぱりとした味で美味しいです」


 ペルちゃんとアシュレちゃんも眠気から覚醒したのか、配られたお刺身を食べて笑顔です。


「オサシミおいしいーデース!」


 ウィレオくんも日本語で感想を言ってくれ、仲居さんを笑顔にしてしまいました。これはやり手の王子様に育ちそうです。


「オイシーデース」


 アニーちゃんも日本語で美味しいと叫びます。その姿を見てクリスさんがまた親指を立てています。


 もしかしたらウィレオくんもこう言った褒め方で、語尾をデースにしてしまったのかもしれません。


 それはそれで可愛いので放置しますが、本当にチョウザメのお刺身は美味しいですね。癖がなく淡泊な味わいの中に確りと油の旨味があり、旬のスズキに似ている気がします。


「黄色い偽イクラが美味しいです!」

「金色に輝くツブツブの食感がプチプチと楽しく、ご飯とよく合い美味しいです!」


 ペルちゃんも偽イクラ……


 それにしてもアシュレちゃんの食レポを誰かもっと褒めて伸ばしましょうよ。まだ小学生高学年なのに、こんなにも気を使いなが食べ物の感想を確りと伝える事が出来るのは凄いことだと思いますよ。


 将来はグルメリポーターとかも向いている気がします。




およ頂きありがとうございます。

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