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第42話 女神

 梅雨入り間近の日曜日の事である。

 緊急の依頼が入ったのだ。今度は2ページほど記事が落ちたとの事。本来は孤児院へ行くはずが急遽撮影会と相成った。


 「輝きすぎですUSA様~」

 「褒め言葉が思いつかない」

 「すぎるすぎる」

 「神はなぜ優様にこれほどの美を与えたのか」


 メイドズの賛美に引きならがポーズを変え写真に納まっていく。まったくこの人達はどれだけ僕のことが好きなのか・・・


 「今日は天気も良いし屋上でも撮影しましょ!」


 確かに天気は良い。梅雨前の最後の太陽の頑張りを褒めたいぐらいだ。おそらく30度超えてくるだろう・・・


 「嫌がらせか!」


 睨みを利かせて言い放った所に大量のフラッシュ。これを狙っていたの?


 「怒ったUSA姫いただき~」

 「キャーキャーキャー」

 「これは表紙にしてもいいレベル!!」

 「袋とじにしてもいいぐらいのお宝ができた」


 もうやだ・・・


 「さ~て、屋上へ行きましょうか」本当にやるのかよ!


 「母さん本気で言ってる?」


 「当たり前じゃない。嘘つくメリットなんてないもの。それに今の服なら・・・」


 室内に響く内線電話の音に言葉が止まった母。メイドズの一人がその着信の対応をしてくれている。


 「優様、何やら緊急のお電話のようです。お代わり下さい」


 うん?僕宛の電話? 僕の電話番号を知る人は学校にはいないから、こっちへかけていたのだろうか?


 「はい変わりました」


 「もしもし兎月くん?」おっわんこだ。


 「あれね、「よう兎月久しぶりだな」」誰?


 わんこの声から急に男の声へと変わった。わんこの声に少し元気がないのが気になるが、それに久しぶりと言ってきたこの男誰だよ。


 「おいっ聞いてるのか!」悪い、聞いてなかった。


 「今から一時間後に前の公園へ来い! わかったか! 来なかったらこいつがどうなるか。前みたいにヤクザなんて連れてくるなよ! クックク」


 あっ! わかった! 生徒会副会長だ! 復讐の復讐かな? 懲りない人だ・・・


 「以前膝をついた公園の奥でいいのですか?」


 「そうだ! 一時間後だ! 遅れるなよ!」


 さて、今度は本気で怒ろうか。


 「優ちゃんどうしたの? 怖い顔になってメイドズが喜んでるわよ」


 相変わらずシリアスな空気を壊す人である。


 「ちょっと友達が誘拐されてね」


 「まぁ! 誰が誘拐されたの? この前来たちんまい子?」母のカンはよく当たる。一発で正解するとは。


 「河本さんね。ちんまい子は酷いと思うよ」


 「許せないわね!」あなたのつけたあだ名がですか?


 得意の仁王立ちで眉を吊り上げる母。


 「母さんは出しゃばらないでね。これは僕の事だからさ」


 そこまで言って僕は一本電話を掛けた。




 side 副会長


 忌々しい!忌々しい!停学明けの学校は完全に兎月のモノになっていた。ファンクラブの総数も全生徒の8割が所属している・・・

 こんなの許せるか! 三年の首席である僕を差し置いて!


 まぁそれもここまでだ。停学中に練りに練った作戦がある。今度こそあいつの高い鼻を折ってやる!


 今度は本気だ。


 元書記が所属する暴走族に手を貸してもらった。もちろん礼金として10万ほど。成功報酬としてもう10万ほど掛かるが安い出費だろう。あいつを小間使いにできれば元なんてすぐに戻って来る。話では20名ほど参加してくれるらしい。

 今度はあの顔に消えない傷をつけてやる!


 そして人質も用意した。はじめは電話番号だけ知れればいいと思ったが、奴は誰にも教えて無いようで仕方なくラビットテール本社へ電話することになった。

 今人質はケーキと紅茶を飲んでリラックスしている。

 頬についたクリームをハンカチで取ってやる。恥ずかしがるな。こっちが照れるじゃないか。妹がいたらこんな感じなのだろうか・・・って、違う! こいつは道具だ。今一番仲良くしているコイツを盾にすれば奴も無抵抗になるだろう。もうこっちの勝は揺るがない!


 「クッククククク」


 こみ上げる笑いが収まらない。


 「副会長さん様子がおかしいです」


 入って来た暴走族の下っ端が報告に来た。確かタカシと呼ばれていたか? 今はどうでもいいか。


 「何があった!」


 タバコを吹かす暴走族リーダーに胸倉つかまれて揺らされている。


 「それじゃ喋れないでしょう」と助け船を出す。これだから脳筋は嫌なのだ。


 「おお、すまん。で何があった?」


 「先に見張りをさせてた奴らに連絡が取れません。ばっくれる事はないと思いますが3人ともいなくなるのがどうも・・・」


 パラパラ聞こえるヘリの音がじゃまだ。もっと大きな声を出さないか。


 「そいつら以外とは連絡がつくんだよな?」


 「はい」


 「じゃあ4人ほどで見回り行ってこい。何かあったらすぐ知らせろ」


 その言葉を聞いて駆けだしたタカシを見送りながら人質に目線を移す。今度はシュークリームをパクついている。癒されるなぁ。


 そこへ着信音がなりリーダーがスマホを出した途端に着信が切れたのだ。


 「タカシ何があった」


 履歴を見たのだろうか? リーダーはすぐに電話を掛けているがまったく繋がらない様子。


 「何が起きてやがる・・・」


 さっきよりも大きくヘリの音が聞こえる。せっかく用意した苺ショートに桜の葉が乗ってしまったではないか。それにしても風が強い。


 リーダーがたばこを消そうとした瞬間だった。灰皿にしていた空き缶が吹っ飛んだのだ。それと遅れて銃声が・・・


 「はっ?」


 それしか発せられなかった。


 次に起こったことは空からロープが垂れてきて、黒いプロテクターの男達が銃を突き付けて・・・あっという間に地面に押さえつけられた。抵抗をしたのはリーダーだけだが、それも言葉で「やめろこらー」と叫ぶだけだ。


 何が起きた? 何が起こっている? どうしてこうなった?


 頭の中の疑問が少しづつ解決していく。おそらくだが僕を拘束しているのはアメリカの特殊部隊。チーム名までは思い出せないが昨日ニュースで見た。確か近くの自衛隊の基地へ来て講習すると言うものだった。そのチームは対テロ対策に作られたチーム。それが何で僕を拘束する・・・


 そして一機のヘリから白い布を纏った女神が降り立った。


 その姿は白いドレスを纏い頭にベールをかぶり手にはブーケが握られている。その場にいた全ての人が息をのんだ。叫んでいたリーダーさえもが黙ったのだ。全てを魅了するその人はゆっくりと歩いて来る。背中から「ビューリホー」と小さく聞こえた。僕を拘束している男の言葉だろう。


 「怖い思いさせてごめんね」


 女神の言葉を受ける人質が羨ましかった。こんなに美しい人に心配されているのだから。この場にいた誰もが思っただろう。


 「お姉様」さっきまでシュークリームをパクついていた人質は頬を染め嬉しそうに口元を拭われている。


 「わんこよ、お姉様はやめてね」そう言いながらやさしく抱きしめたのだ。


 誰もが女神を見つめその行動の一つ一つに目を奪われていたことだろう。去り際に投げられたブーケをみんなで奪い合った。敵味方入り乱れてだ。





 今、自分は今日あった事を思い出している。


 あれは守らなければならない。

 あれは失ってはならない。

 あれは完全なる美なのだ。

 兎月優様は女神である。


 取りあったブーケからこぼれた一輪のバラの匂いを嗅ぎながら・・・




 side 優


 帰りのヘリコプターの中僕はこの特殊部隊の隊長に礼を述べていた。


 「大佐ありがとうございます」


 頭を下げる僕に大佐は頬を赤く染めながら「またホームパーティーに来ておくれ。娘から何度も頼まれて耳が痛いぐらいなんだHAHAHAHA」と笑ってくれた。


 ちなみにこの人だが以前、原油高騰の時に手を貸してくれた人である。

 それはまた別の機会にでも紹介しよう。


 「わんこ、母さんがまた会いたいと言ってるがどうする?」


 「私も会いたいです」


 ずっと頬を染めているわんこ。USA装備だけ外してきたが、やはり化粧までしてあると威力が違うのか、みんな頬を染めてしまうな。


 「じゃあラビットテールの屋上までお願いします」


 パイロットから親指を立てた返事をもらい帰路につくのだった。




21時にもう一本。

 読んでいただいてありがとうございます。

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