第388話 ライブと95点
午前中の公演を終えるとスマホにはペルちゃんとアシュレちゃんからの動画が届いており、楽しそうに千葉ニーランドを満喫しています。
「楽しそうだワン」
横から覗きこむゴールデンワンコを撫でると尻尾がびゅんびゅんです。
時刻も正午という事もありお腹が空きましたが、校内放送から重音雪ちゃんの曲が流れ始めました。
「雪ちゃんのライブが始まりましたデース!」
女神の社交界会場である屋上からはトラックのコンテナ部分が開いており、歌って踊る重音ちゃんの姿が見えます。
コンテナは両面が開いており、こちらを向き歌う重音ちゃんは手を振りますが、僕たちが見えているのかな?
僕たちに手を振ってくれるのは嬉しいのですが、明らかに多くのお客さんがいるのはお尻側なので、そちらにも手を振って下さい。
高校前の道路が封鎖され生ライブ目当てに集まる多くのファンたちも目に入りますが、警察官さんや警備員さんたちの頑張りにより安全は確保できている様です。
混乱を避けるためにライブは一時間限定で行われると事前に告知していましたが、本当に多くのファンが集まり重音ちゃんのライブを聞いて盛り上がっている様です。
来年は重音雪ちゃんのライブを僕らの出し物にするのはどうだろう。
物販でCDを売ったり、ライブをしたり……
問題があるとすれば重音ちゃんがここの学生ではない事ぐらいだし……
「何か悩んでいるの? ワン」
首を傾け聞いて来るゴールデンワンコに「何でもないよ」と答え頭を撫でます。
「ああ、お腹が減ってる! ワン」
ほぼゼロ距離にいるゴールデンワンコにはお腹の音が聞こえた様です。
「何処かに食べに行こうか」
「それはダメですわ! 階段は確保できていますが、それも薄いテープで区切っただけですわ! いまの総帥のお姿を見た男どもは、きっと襲いにきますわ!」
女騎士姿なのに襲われるの?
寧ろ騎士の姿は強そうに見えて襲ってこないのではないだろうか。
「危ないワン?」
「危ないです! 危険です! デンジャーです! だが、そこがいい!!! 巨乳騎士姿の総帥が屈強な男子に襲われるとか……ありですけど!? 断然ありですけど!!」
熱気を帯びた牛酉さんは色々と隠した方が良いと思います。
また気絶したら面倒ですし、落ち着きましょう。
「そんな事もあろうかと、こちらをお持ちしました」
ジョセフィーヌが両手をパンパンと叩くと、メイドたちがキャスター付きのワゴンを押して現れました。
「こちらは美術部の方で発売されているカレーとビーフシチューです。カレーは鶏肉を使ったものでスパイシーに仕上げております。ビーフシチューの方はすね肉を使いじっくりと煮込んだものです。どちらも商店街の皆さまから食材提供されています」
ワゴンの上には大きな寸胴が二つあり、ジョセフィーヌが蓋を開けると湯気が上がりカレーとビーフシチューの香りが漂います
「普段からボランティアで駅前やアーケード商店街の掃除を頑張っている姿を見た町内会長がかけ合ってくれたと報告受けてたけど……美術部の貢献がこんな形で返ってくるとは……」
臼ちゃん先生も驚いています。
貴女は部活顧問ですよね。
ちゃんと把握しておかないとダメですよ。
「コンセントの都合上ライスではなくパンでお楽しみください」
丁度チーンと音が響きパンが焼けた様です。
一々オーブントースターをキャスター付きのワゴンに乗せなくても大丈夫ですよ。
「こちらのパンも商店街一美味しいと評判のライ麦パンとバターロールです」
取り巻きBさんが言うので信じますがジョセフィーヌのドヤ顔がうざいです。
全粒粉を使ったライ麦パンは少し黒い色をしていますが、小麦の香りが確りとして美味しそうです。
「美味しそうだワン!」
「先生もここでいただくわね」
「僕もお願いします」
美術部メイドや執事がテーブルに食事の用意をしてくれますが、これも練習した様でスムーズに事が運び三分も掛からずにソファーの前には料理が並びます。
パン屋の息子であるジョセフィーヌがパンをカットし、温かなビーフシチューとチキンカレーの横にライ麦パンとバターロールが並び、紅茶の他にもラッシー的なジュースも用意してくれました。
「はじめた頃はどうなるかと思ったけど、美術部は評判も良くってねぇ~はぁ……」
複雑な表情でため息を吐く臼ちゃん先生はシチューをひと匙口に入れます。
「あら本格的に美味しいわ」
「お肉が柔らかいし、野菜もたくさんで美味しい! ワン」
確かにすね肉はトロトロで口に入れるとムニュンムニュンで何処かへ消えてしまうほど柔らかいです。臭みも無くローリエやローズマリーなどの臭み消しを、ちゃんと使っている様で本当に美味しいです。
「パンも美味しいわね。木村くん家のお店のパンよね。今度買いに行こうかしら」
「あのパン屋さんはシナモンロールが美味しいワン!」
「食パンも美味しいし、アメリカンドックも何故か美味しかったな」
「臼ちゃん先生さま、いまはジョセフィーヌとお呼び下さい。あと何故かは失礼だと思います。アメリカンドックが美味しいのは愛の力です!」
そこは愛の力とか抽象的な言い回しではなく、ジョセ村のお父さんの腕だと言って下さい。
「チキンカレーも美味しいわ」
「少し辛いワン」
「うまっ!」
どちらも美味しく美術部の面々はみなさんドヤ顔です。部長のジョセ村のライ麦パンが良い脇役をしています。
ただ、ラッシーかと思って飲んだのに牛乳だったので-5点です。
こちらも宜しくお願いします。
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