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第36話 本物

 家についてから数本の電話をして作戦を立てた。それを書面に起こしながら協力者に感謝した。


 さて次の日。

 朝のHR後の先生へ書面を渡し少し話を進めた。


 「こんな事できるの!?」


 驚く先生に「五時間目の現国の時間は抜けさせてくださいね」と許可を求めた。担任は渋々と言った返事で許可をしてくれた。



 お弁当も食べ終わりみんなと別れ電話を2本。ついでに秘書ちゃんも呼ぶ。

 5時間目開始のチャイムと同時に学食を訪れた僕に不思議そうな顔するおばちゃん。そりゃサボりの生徒が来るぐらいだろうからね。僕は違うよ。


 「すいません。今日会わせたい人がいるのですがいいですか?」


 不思議な顔をするおばちゃん三名と奥から出てきた小太りのおじさん。責任者の本田さん。この人の意識が変わらないと解決しないのである。


 「会わせたい人?」あからさまに不審者を見る顔で見られた。


 「えぇ、ここの学食を昨日食べて改善できないかと思いまして、二人ほど連れてきました」


 学食のドアが開き入ってくる二人。一人はコック帽が似合わない美人さんと作務衣さむえの似合うご老人。


 「会長お久しぶりです。今日は恩を返させてもらいますよ」と美人さん。名を三星岬みぼしみさきさんと言う。七宝グループ傘下にある天使のスプーン(完全予約制の洋食屋)の店主である。

 「わしもじゃ、たまには来てくれと何度言ったか」と老人さん。名を水守吟洲みなもりぎんすさん。こちらは老舗そば処玄夢庵げんむあんの引退まじかな職人さん。


 「この人達は?」と尋ねる本田さんに二人の名前と店を紹介した。


 洗い物をしていたおばちゃんたちの手も止まった。どれだけ驚いたか伝わるだろうか。

 天使のスプーンは今TV番組で取り上げられる事が多く、三星さんがタレントの横で一緒に料理する番組もあるぐらいだ。

 水守さんの店も知名度が半端じゃない。一時期落ち込んだが今ではそば処玄夢庵は海外VIPがお忍びで来たり、政治家が通うことでも有名だ。


 「何でこんな大物が・・・」


 「この人達に料理させてもらえませんか?」


 「は?」と固まる本田さん。


 「ここの学食にある物を使って料理させて下さいと言っています。いいですか?」


 コクコクうなずく本田さん。


 そこから本田さんは黙り込み二人の作る料理を凝視していた。僕は電話で秘書ちゃんに頼んで校長を呼んできてもらう。


 「どうです? 本物の料理を見る感想は?」少し意地悪だろうか。


 「どれもすごい。体の動かし方から違う。同じ食品を使ってるのに料理が喜んでる気さえする。なぁ君、何が起きている?僕は・・・今・・現実なのか?」


 「現実ですよ。ちょっとした知り合いなんです。昨日のシーフードカレーがあまりにまずかったのでお灸を据えようと思いまして」


 「お灸だって!? とんでもない! これはご褒美だ!

こんなまじかで天上の人の料理が見れるなんて! なんだかこう思い出す! 憧れだったシェフになった時を! このステージを目指していた自分を!

 そう!僕が初めて感動したステーキを自分で再現したかった。そして母に食べさせたかった・・・あぁ何忘れていたのだろうか、もう三年も前に亡くなった母に・・食べてほしかった・・・」


 そこから本田さんは涙を流しながら二人の料理姿を見つめていた。


 学食のドアから秘書ちゃんと校長が姿を見せた。出来上がった料理をおばちゃんたちがテーブルに並べはじめる。全部で30品。学食のメニューである。


 「さぁ味見しましょうか」


 「想像してたより美味しいわぁ」

 「これが同じ物だとは思えない」

 「香りが違う!? なんで?」

 「下ごしらえの仕方がちがうんだ。同じ冷凍した魚貝でも塩水で戻して使っているから生臭さが圧倒的に少なくなっている」正解!

 「海老の食感さえ違うなんて」


 「二人共ありがとう」二人にお礼を言うと照れくさそうに笑う三星さんと、照れ隠しなのか布巾でその場を拭き始める水守さん。


 「今日は貴重な体験をさせてもらった。この事は一生の思い出にする! そしてもっと精進する。絶対だ!」うん、完全に勘違いしている。


 「えぇ~とですね。本田さん、意識が変わったのはいいのですが、明日から美味しいもの出せます?」


 「もちろんです!」と胸を張って答える本田さん。


 「いや、あのですね、明日から10日間この二人にはここで働いてもらいます。そしてこの二人から技術を盗むなり、教えを乞うなりして精進してください」


 僕の言葉に口をあんぐり開けて信じられないと言った風な顔。


 「校長先生からの許可は頂いています」と秘書ちゃん。校長はと言うと一心不乱にかきあげ丼をたいらげていた。



 後日談



 学食の味が変わり訪れる生徒が増えた。いや増えすぎた。

 10日間の約束であったが、しばらく落ち着くまで二人が働いてくれる事となった。


 「なぁ明日は学食だからな!」と普通。


 「嫌だよ、あそこは人が多すぎる。ゲレンデも嫌だろ?」

 「あぁ、誰かの足とか踏みたくないしな」えっそんな理由?

 「なんでだよ~相当美味いらしいぞ」

 「そりゃあの二人が協力したらね」

 「頼むよ~河本さんからも頼んでよ」

 「えっ? 私はお弁当でいいよ」

 「河本さんにまで裏切られた~」


 「この騒ぎが落ち着いたらな」

 その時は特別にまずいシーフードカレーを用意してもらって普通に食べさせよう。




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