第34話 バスケと仕事
美人は三日で飽きると言うが・・・
学校の生徒達も僕になれて黄色い声援は随分減ったと思う。廊下を歩くだけでワーキャー言われた四月初旬が懐かしくなる。
今では会釈してくれる人、手を振ってくれる人、片膝をついて拝んでくる人(一年五組)となっている。不用意に話しかけてこないでくれるのは本当にありがたい。
三時間目終わりの休み時間。
「なぁ今日の体育はバスケだっけ?」と普通。確かバスケ部のはず。
「早く着替えないとな」とゲレンデ。
「じゃな」と声をかけ僕はひとりトイレへ向かう。
なぜかって? それは一つの事件がきっかけだった・・・
この学校初めての体育の日。男子達は男子更衣室に向かった。
もちろん僕も。
目立ちたくないので、さっさと着替えを済まそうとYシャツのボタンを二つ開けそのままグイッと頭から脱いだのだ。その時Tシャツがめくりあがり胸の所まで。血の雨が降った・・・鼻血である。
この時の事を普通は語る。「初めてのラッキースケベだった」と。
のちにこの事は「幸せ流血事件」と呼ばれるようになった。
同性のこの行動をどうせいっちゅーねん!
トイレで着替え終わった僕は急ぎ足で体育館を目指す。女子も体育館を使うようで途中わんこと一緒になった。
体操服のわんこも可愛いな。
さてバスケである。
僕らのクラスは男子が13人、女子が17人と男子の方が少ない。チーム分けもスムーズに決まり吉田君が審判。ジャンプボールをゲレンデが制してバスケが始まった。
結果はと言うと僕とゲレンデがいるチームの圧勝。それには僕の考えた秘策が関係してくるのだが。
作戦名 移動砲台ゲレンデ1号
ゲレンデの身長は190センチと他から群を抜く身長。高めにパスを出せば確実にジャンプしてボールを取ってくれ、そこからバスケのリングを狙わせる。
コツとしてはリングではなくボードの中の小さな四角を狙えと言った。
ムキムキのゲレンデには敵味方コート関係なくすぐにシュートを打たせる。すごい腕力だよね。こっちのゴール下から投げたボールが相手のゴールまで届くって。
後はリバウンドを制する普通。
ただ、50%の確率で得点を上げるゲレンデもどうかと思うが・・・
得点を付けなかったのが唯一の優しさだったかもしれない。
そして昼休み。いつものメンバーでお弁当を食べながらゲレンデに対して気になっていることを普通が聞いてくれた。
「ゲレンデの家は八百屋かなんか?」
「よくわかったな」現在キャベツを丸かじり中。
分かったと言うか察してはいたが大雑把な奴である。
「普通の家はパン屋か?」
「おう、商店街入口にある店な。今工事してて入りにくいが開店はしてる。今度買に来いよ」その工事はアーケード街にするための工事だな。
「わんこは?」
急に話を振られたわんこはミートボールを戻し「銀行員。役職までは聞いたことない」
「へぇー」話を振ったが、そんな返ししかできなかった。
「お嬢の家は何やってるか知ってる?」
「さぁ、金持ちってことしか。なぁ二上院さん家って何やってる?」普通が声をかけるとサンドイッチを持ったまま、こちらに歩いてきた。
「うちはリゾート開発を主にしていますわ。先月隣町にオープンしたアウトレットモールや去年話題になったテーマパークなんてのも手掛けてますのよ。あと海外の方では植樹活動や難民ボランティアの救済活動。そうそうハリウッドの方にも新しいテーマパークを作ると先日聞きましたわ」
二上院さんの家もかなりのお金持ちのようだ。
「それって二上院に頼めばテーマパークのチケットもらえたりするのか?」普通よ、バイトして自分で買え。
「そんな事たやすいですわ!」
センスで扇ぎながらオホホホホ!とポーズをとる。テンプレお嬢様だな・・・
「そう言えば僕もそこのチケット貰ったなぁ確か・・・あった、これだろ」
財布の中から三枚のチケット(株主優待で貰った)を取り出し二上院さんに見せる。
「あら、誰からもらいましたの?」
筆頭株主だと言ってもいいのだろうか・・・ここで急に態度が変わって下手に出られても嫌だしなぁ・・・
「親戚・・・」
「そう、園内のロイヤルスイートの宿泊まで付いてるチケットなんて初めて見ましたわ。兎月くんの家も相当なお金持ちですものね。そんな親戚がいてもおかしくないですわよね」
誤魔化せたかな、ちょっと心が痛む。
「そんなにすごいチケットなのか?」とゲレンデ。
「ロイヤルスイートの宿泊費は一泊50万くらいかしら、そのチケットだと三泊までできましてよ」
「150万が三枚・・・」わんこ、驚愕し過ぎ。
「マジかー」普通の普通のリアクション。
「へぇ~」ゲレンデ、お札じゃないんだから透かして見ても何もないぞ。
出さなきゃよかったなこのチケット・・・
「そうだ! 夏休みの優YOU会の会合はここを使うのもいいですわね!私が頼めば600人ぐらいタダにして差し上げることもできますし! なんて良い案なんでしょう!」
お嬢が暴走はじめたよ~レポート見たけど自分で暴走するなとか言ってなかったか?
「総帥によるパレードなんて最高!」
神に祈るように手を組んで天井を見上げている。完全に自分の世界へ旅立ったお嬢を見ながら、ため息をついた。
「あ~そうだ! 明日は学食だからな! 弁当持ってくるなよ! 絶対だぞ!」
普通が思い出したようにGW前の事を言っていた。




