第315話 夏祭り
メドューサから人間に戻り、夏祭り会場であるアーケード商店街へ向かいます。
いつ手配したのか解りませんが、ビルの前にはサロンバスがあり乗り込む一同。
祖父に祖母に母さんとレオンさんにアンネさんの保護者たち。
ペルちゃんにアシュレちゃんにワンコの幼女チーム。
レオンさんにレオネーネさんにレーネさんとメイドのシャルさんのスフォルム王国。
僕とメイドちゃんと秘書ちゃんにクリスさんと、ゲージに入れられたミーアちゃんの七宝ビルに住んでいますチーム。
あとはレオンさんのSPさんたちとメイドズがわらわらいます。
かなりの大人数ですがサロンバスに乗り込み移動です。
乗れなかった人は別の車で追いかけてきて下さい。
駅前に到着し、みんなで降りて商店街へと向かいます。
夕焼けに染まる駅前から露店が設置され、多くの人が浴衣姿でお祭りムードを楽しんでいます。
人の列はアーケード商店街まで続き、僕らも足を進めます。
商店街に入ると鼻腔をくすぐるソースの暴力的な香りが胃にきます。
お昼は何も食べられなかった事を思い出しました。
うな重、食べたかったな……
「お祭りデース! 子供神輿もありマース! 美術部もいマース!」
お祭りムードに当てられてかクリスさんのテンションが爆上がりしています。
「射的もありましゅ!」
「金魚すくいに、ヨーヨー釣りもあります」
「わぁ~カラフルな綿菓子だぁ~」
幼女たちは先日、祖母のソフィアさんが買ってきた浴衣を着ています。
赤青黄色と三色の浴衣にはハートが散りばめられ、とても可愛いです。
「それじゃあ僕はお祭りの実行委員会の方へ顔を出してきますね。三人とも母さ……いや、レオンさんと一緒に行動してね。一人で何処かへ行っちゃダメだからね」
「はーい!」の声が重なり幼女たちは元気にペルちゃんの父であるレオンさんの所へと走って行った。
母さんよりも常識人なレオンさんやアンネさんの方が適任者だし、子供に囲まれていれば浮気もできないだろう。
それに日本にいる間は僕にべったりだったペルちゃんとアシュレちゃんには、親子の時間というのも必要なはずです。
三人を見送り僕はメイドちゃんと秘書ちゃんとクリスさんを連れ、お祭りの実行委員会の事務所がある駐車場スペースに張った運動会でお馴染みの大きなテントへ向かいます。
三人プラスメイドズで足を進めるとアーケード商店街名物の美術部員たちがメイド服で小さなかき氷を無料で配っています。
「熱中症対策に無料でかき氷を提供させて頂いておりまーす」
「露店の方々に配ってきます!」
「北側は配布済みだから南側お願いね!」
「私も手伝いマース!」
美術部も立派に社会貢献できている様です。
会釈だけして足を進めると、ねじり鉢巻きに法被を着たヤの付く自由業の方たちが集団でいるコーナーがあり、中心には立派な御神輿が鎮座している。
「ぼっちゃん、お疲れ様です!」
声を揃えて挨拶を頂きましたが中々の恐怖体験です。先ほどのメイド長ゾンビよりも明らかにこちらの方が怖さは上だと思います。
会釈だけして立ち去ろうとすると、足に抱きつく浴衣の天使が現れました。
ピンクの浴衣には大きな向日葵が咲き誇り、向日葵ちゃんの笑顔も満開です。
「こら向日葵! 挨拶が先でしょ」
高そうな紫の浴衣には椿の花が添えられ、大人の色気を振りまいている椿さんの登場です。
「優ちゃんにはやっぱり和服が似合うわね。紺の生地に白のトンボが舞う浴衣とか、また渋いのを選んだわね」
「トンボさん! いっぱい!」
椿さんが言うように今の僕の姿は男性用の浴衣に雪駄です。
母さんに女性物の浴衣を用意された時は悲しくなりましたが、祖母であるソフィアさんが僕の為に男物の浴衣を先日お土産に買ってきてくれたのだ。
「やっぱり優ちゃんには渋い浴衣が良く似合うわ」
「わしの赤とんぼとお揃いじゃぞ!」
祖父と祖母を味方に付け男物浴衣に袖を通したのですが、青地に白ラインの入った女性物の浴衣を用意していた母さんは頬を膨らませ拗ねましたが……子供かよ!
やはり僕が思っていた通り、我が兎月家のヒエラルキーのトップは、祖母のソフィアさんのようです。
それにしても、足に抱きつき放さない幼女をどうすべきでしょうか?
椿さんは僕の浴衣姿を見て微笑んだままですし、いや、何やら動き出し、後ろ姿も見るのですか……
「向日葵ちゃん、はい抱っこ」
素直に手を上げ抱っこされる気満々な向日葵ちゃんを持ち上げ、メイドちゃんにパスです。
「あい? おおおおおおお! でかぱいっ!」
一瞬驚いた顔をしましたが、メイドちゃんの大きな胸に興味が移ったようです。
この隙にお祭り実行委員会のある場所を目指しましょう!
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