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第312話 臼井幸恵のお買い物3



 side 臼井幸恵



 先ほど買った浴衣を着つけて貰い気が付いたけど、レディースの下駄が必要じゃ……


 「そちらの浴衣ですと、こちらがお勧めの下駄になります。鼻緒が苦手な方はこちらのサンダルをお勧めしていますし、こちらのキラキラした物も最近では人気があり、ご購入される人が多く……」


 着付けてくれたお店の方のセールストークにタジタジになりながら、まずは値段を確認しないと。って、こちらはお手頃価格のようでどれも一万円を切っています。


 胸を撫で下ろしながら手ごろな八千円の下駄を選び履いてみる。


 「鼻緒の部分に傷みはありませんか?」


 「大丈夫ですけど……」


 「小さな事でも結構なので何かありましたらお言葉にして頂けたら幸いです。改善点に繋がりますので」


 「えっと、これは、その、私事なのですがフットネイルをしてきたら良かったかなって」


 グイグイくる店員さんに苦笑いを浮かべ、私の低い女子力を自白する。

 素足を見せる事が少ない私としては靴下常備だし、フットネイルもうさぎの寝床でして貰って以来してない。

 私の女子力が五十三万ぐらいあれば靴下常備でも、常にフットネイルしていたのだろう。


 「わかります! お客様わかります! 私も冷え症で靴下を常に愛用しています!」


 本当にグイグイ来るなこの人……


 「もし宜しければこの階に人気のネイルの専門店があり、こちらへ呼び出す事も可能です! お呼びいたしましょうか?」


 えっ!? 

 呼びだすの!?

 流石VIP専用のお店!

 でも、お高いんでしょ?


 「あら、それはいいわね! お願いできるかしら」

 「うむ、楽しみじゃの」

 「……」


 話を聞きつけたソフィアさんに真二さんが嬉しそうにしていますが、私はそっちの事よりもお二人の浴衣姿に見とれてしまった。


 「ではでは、直ぐに手配させて頂きます。混み具合によっては多少お時間を頂きますが宜しいでしょうか?」


 「もちろんよ。それとみんなの浴衣に合うきんちゃく袋も購入したいのだけれど、それも良いかしら?」


 「もちろんです! では失礼させて頂きます」


 頭を下げ店の奥へと下がるグイグイ店員さんと入れ替わりに、キャスター付きワゴンを押してこちらへ来る支配人さん。

 キャスターには多くのきんちゃく袋が色合い良く置かれている様子をみると、予めに用意されていたのだろう。

 やはり出来る支配人さんである。


 「奥さまの浴衣ですと、こちらの上の段にある鮮やかな藍染の物や、浴衣と同じ紫陽花の刺繍の物がお勧めになります。もちろん気に入った物があればそれが一番です」


 ニコニコと話す支配人さん。


 ソフィアさんは着つけの終わった私を笑顔で手招きし「これも可愛い。あれも可愛い。こっちは育美に似合いそう」と楽しく選んでいる。


 「旦那さまには、こちらのシックな色合いの信玄袋がお勧めです」


 新たな女性店員さんが現れメンズ用の小物を乗せたワゴンで登場し、セールストークを繰り広げている。


 「フットネイルのご予約は十分ほどで、こちらへ来て頂ける事になりました」


 グイグイ店員さんも現れ御苦労さまです。


 私と育は流されるままにフットネイルを施されながら、あっ! 美容師さんまで現れて髪のセットにお化粧までして頂いた。


 「二人ともとっても可愛いわ」

 「うむ、娘や孫もこのぐらい付き合いが良ければ嬉しいのじゃがな」


 あぁ~、牡丹さんに優くんは私たちが化粧を施した姿よりも普段の方が美人だし……


 「ありがとうございます。私の両親は数年前に亡くなって……新しい両親が出来たみたいで……なんか嬉しくて……」


 育が数年前に事故で亡くした両親の話を始め、三人とも涙を流し始めてしまった。

 うぉっ、店員さんたちや支配人さんまで涙を流して……


 私だって泣きたいけど、この話は育から何度も聞いていて……


 美容師さんと一緒にウェットティッシュを配りました。

 もちろん化粧もやり直しです。




 他にも浅草で豆大福や串団子などのお土産を買い、ヘリで地元へとんぼ返りです。


 夕焼けが眩しいが、とても美しい風景が心に焼きつきました。

 ただ、浴衣に大きなサングラスを違和感なく掛けるソフィアさんの姿を見ると、超VIPなのだなと改めて思いました。


 ヘリは飛び立った場所とは違いラビットテールの屋上へと着陸し、そのまま中へ。

 エレベーターに乗り、とある一部屋へノックし応答もないまま入って行くけどいいのかな?

 その部屋では勉強する兎月優くんの姿があります。


 やっぱり優秀な生徒ですね。

 教えがいはありませんが、先生ちゃんと評価しますよ!

 それに浴衣の感想も欲しいですよ!


 その後は育に優くんの正体がばれて、私と同じ契約をするため京に拉致されていった。

 後でお勧めの胃腸薬を教えてあげよう。


 あれ? あの子たちはフランスで優くんに付いていた女の子たちに千和さん? 

 みんな浴衣姿で可愛いけれど、河本千和さんも回りながら晴れ姿を見せるのね……


 優くんはその姿を嬉しそうに見ていますが、所謂ロリコンなのでしょうか?

 学校でも浮いた話は聞かないけど、女子では河本さんとの噂はあったわね。

 総帥のペットとしてだけど……


 「それじゃ、良い子は寝る時間よ~」


 私が熟考している間に金髪美人とレオンさんが、現れ女の子たちを回収していった。


 「それじゃあ私たちも、そろそろ帰りましょうか」


 私の言葉にソフィアさんが、

 「あら、これからは大人の時間よ」

 そう言ってエア御猪口おちょこをクイクイ口に傾ける。


 「お供します!」


 育は瞬時に悟り浴衣に似合った言葉を返す。


 「私も御酌させて下さい。少しでも恩返ししたいです」


 自然と出た言葉にソフィアさんも嬉しそうに「嬉しいわ」と返してくれる。


 「優しい優ちゃんが、きっとおつまみを作ってくれるわ。ねぇ~優ちゃん」

 

 ソフィアさんの言葉に困り顔の優くん。


 「はい! 揚げだし豆腐が食べたいです」


 育ぐらい正直に生きたら、もっと人生が楽しくなるのだろうか?


 「私は鶏のから揚げが食べたいです!」


 取り合えず今だけは育のテンションに乗ってみた。




 お読み頂きありがとうございます。

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