第281話 約束の手料理
母さんが主催する僕の誕生日会も終わりを迎えた。
VIPのほとんどが極秘来日であり、とんぼ返りする人が多いです。
そんなVIP扱いの中でも超が付くほどVIPであるスフォルム王国の三人はと言うと、何故だか知りませんが家のリビングで寛いでいます。
「ペルもアシュレも素敵なレディーに育ちそうだね」
「もちろんでしゅ」
「今はいっぱい勉強して女を磨いています」
これまた何故だかレオラさんと意気投合するペルちゃんとアシュレちゃん。
ワンコはレーネさんに髪を梳かしてもらいながら通訳アプリで会話をしている。
「私と三つしか歳の差がないなんて信じられないわ。もう本当に可愛いわね!」
「えへへ、レーネさんは美人で羨ましいです」
フランス語と日本語が混じり合いながらも会話が成り立つ僕の家は、随分と国際的になったものです。
アメリカ人のクリスさんはフランス人メイドのシャルさんとレオネーネさんと英語で話しながらミーアちゃんと遊んでいる。
猫じゃらし的な玩具に飛びつくミーアちゃん。
両手でほしいアピールをするミーアちゃん。
頭を撫でると目を細めるミーアちゃん。
「とっても可愛いです。うちでも飼えないでしょうか?」
「温かい環境での飼育が好ましいので、スフォルム王国で飼うのは難しいかもしれません」
「スフォルム王国は寒いのデースか?」
向日葵ちゃんと秘書ちゃんはアニメを鑑賞中です。
魔法少女が悪の組織と戦うのですが、歴代の魔法少女たちが全員集合して戦う様は圧巻です。
もう数の暴力と言っていいかもしれません。
「向日葵も大きくなったら魔法少女になるの」
「うんうん、マジカルチャカとマジカルドスに、お供のマスコットはマジカルタトゥーから飛び出すのですね」
秘書ちゃんが適当な相槌を打ちますが、出来たらやめてあげて下さい。
そんな会話を聞きながら僕とメイドちゃんは料理中です。
メイドちゃんは筋肉担当なので野菜やお肉の下拵えをお願いし、僕は天ぷらを上げていきます。
メイドちゃんが普通の服装なら揚げものもお願いできますが、タンクトップにエプロンという油はねに対して無防備すぎる事もあり、僕が代わりに揚げていきます。
夏野菜のてんぷらを量産しながらメイドちゃんが鬼オロシを作っています。鬼オロシとは粗い大根おろしでシャキとした食感が残り美味しいのですが、専用のおろしが金必要です。
おろし金で大根を下ろしながら終盤になると握力で大根を握り潰す作り方ではありません。
からりと揚がった夏野菜のてんぷらを大皿に移し、手の空いているメイドズに運んでもらいます。
結果として鬼オロシになった大根おろしもお願いしますね。
「みんなも温かいうちに天ぷら食べてね~」
リビングに向かい叫ぶと幼女やスフォルム王国の人たちは天ぷらを先頭に和室へと移動を開始した。
大鍋にお湯を沸かし枝豆を茹でます。
粗塩で枝豆を揉みながら産毛を落とし、さっと茹でます。
少し硬いぐらいの方が僕の好みです。
ネギと大葉を切り寄せ豆腐に乗せて冷奴の完成です。
炊飯器を確認すると炊きあがるまで、まだ十分ほど時間があります。
茄子の皮をむき適当な大きさに切ってから水に浸し、レンジに入れて火を通す。
火が入った茄子に砂糖と麺つゆを混ぜたものを和えて、生姜とミョウガを乗せておつまみがもう一品完成です。
炊飯器から炊きあがりましたの電子音が響き、冷蔵庫からバターを取り出しひと欠片入れさっくり混ぜる。
バターとトウモロコシの香りが一気に広がり、トウモロコシの炊き込みご飯の完成です。
炊飯器ごと持って洗い物をするメイドちゃんと一緒に、僕たちも和室へと移動します。
「優お兄ちゃん美味でしゅ! 美味でしゅ!」
「優お兄さまの作る料理が食べられて嬉しいです!」
「優お兄くん、また料理の腕が上がってる!」
幼女たちからお褒めの言葉が頂けました。
「これが和食なのだね。サクサクで美味しいよ」
「この緑の豆は永遠に食べられそうね」
「メイドの私まで、ありがとうございます。とても美味しいです」
「はぁはぁはぁ、もうお兄さま方も日本語覚えて下さいよ!」
スフォルム王国の妹さんが優秀すぎます。
「孫の手料理が食べられるとは、生きてて良かったのう」
「浮気するアホウは死ぬべきよねぇ~」
「ソフィイ母さんもこの緑の豆が美味しビールに良く合うよ」
「枝豆よ。歯ごたえがあって美味しいわね」
祖父に祖母にレオンさんと母さんも枝豆に夢中ですが、なぜこの人たちまでうちに来たのでしょうか?
「うわ~トウモロコシとバターの香りが堪らない!」
「駆け落ちしてたら、毎日こんなご飯が食べれるのっ!?」
臼ちゃん先生と二組の何とか先生も、なぜうちでご飯を食べているのでしょうか?
それに掛け落ちとか……
「優さまの手料理……」
「最近与えて貰ってないです」
「冷奴が輝いて見える」
「汗だくで揚げたテンプ~ラ」
これはメイドズの分も作った方が良いのでしょうか?
そう思いながら料理助手のメイドちゃんを見ると、母さんの横にちゃっかり座り枝豆をひょいパクしています。
メイドズへ視線を移すと、全員が指を咥えて僕を見つめてきます。
団体芸はズルイと思います……
立ち上がり「天ぷらから再開しますから序列4位と十二位は手伝って」そう告げると、嬉しそうにエプロン揺らして付いてきます。
僕たちの戦いは、これからだ!
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