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第268話 謎の黒の物体とお昼ごはん



 修学旅行から一週間経ち、八月の太陽はギラギラと睨みを利かせている。


 夏休み明けに提出する修学旅行の感想文と、夏休みの宿題に取り掛かり二時間ほど経過した。


 和室は冷房が効いているのだが、汗を流すメイドちゃんはスクワットを恐ろしいほどゆっくりとしたスピードで行っている。

 降りるのに一分ほど使い、上がってくるのにも一分ほど時間を掛けているのだ。


 ゆっくりやる事により多くの負荷が掛かるのだろうか?

 両手に持った大きなダンベルと大きな胸で、負荷はもう十分に掛かっていると思うのだけど……


 秘書ちゃんは事務仕事の残りを片づけながら絵本を読んでいる。

 右の眼で書類を読み、左の眼で絵本を読んでいるのだ。


 目は二つあるとしても理解できているのだろうか?

 それとも何かしらのトレーニングになるのだろうか?

 僕には自ら罰を行っている様にしか見えません。


 クリスさんは僕と同じく夏休みの宿題を片付けている。

 金髪に染めアメリカ人キャラを定着させたクリスさんは努力家であり、今も自由研究で西部劇と時代劇の違いを纏め論文にしている。


 僕にはどちらも全く違うものに思えます。


 そんな混沌とした兎月家唯一の癒し担当であるミーアキャットのミーアちゃんは、先ほどから来客と一緒に猫じゃらしで遊んでいます。


 メイドズ最高責任者であるメイド長と、修学旅行で窃盗未遂で捕まった三名です。


 僕のキャリーケースを開けようとした理由も話してもらい、証言通りに出てきた黒い物体。

 親指ほどのサイズの黒い物体はUSAメモリーであり、ウイルスでも流されたら困るので新品のパソコンを使い中身を確認した。

 中身はデータがいくつかあり、スフォルム王国の観光用VR動画と第一王子からの愛の告白動画でした。


 第一発見者のメイドズがその場で泣き崩れ落ちたのを慰めるのに、小一時間掛かったのは苦い思い出です。

 残りのメイドズも泣きましたがどう考えても嘘泣きなので、メイド長から愛のあるハグで慰めて貰いました。

 メイド長の愛は強いのです。


 そんな事があったのが二日前で三日間ほどメイド長監修の元、メイドズ三名を預かっています。


 修学旅行の感想文も終わり、夏休みの宿題も限の良い所まで終わらせ時刻も十二時。

 お昼ごはんの準備をしましょう。


 僕が席を立つとメイド長が寄り添いキッチンへ移動する。


 冷蔵庫の中身は頭に入っているので、頭の中でメニューを組み立てる。


 はんぺんとシシャモはフライにして簡単タルタルとキャベツの千切りで一品。

 夏野菜の代表格のナスは素揚げし麺つゆに浸し、おろし生姜を添えて一品。

 トマトとエノキを使った簡単スープで一品。

 先日作ったキュウリとキャベツの塩コンブ和えで一品。

 ご飯は多めに炊いてあるので、これで完成!


 メイド長に伝えると笑顔で「野菜の下ごしらえはお任せ下さい」との事。


 では、僕はスープの準備に、はんぺんとシシャモのフライの準備を進める。

 鍋にエノキを入れ火にかけ湧いてきたら、ざく切りトマトとコンソメスープの素を入れ塩胡椒。

 最後にオリーブオイルをひと回ししたら完成です。


 横でメイド長がとんかつ屋さんも顔負けなキャベツの千切りをしています。


 半分に切ったナスの背に隠し包丁を入れ、水気をキッチンのペーパーで取り揚げていく。

 揚がったら油をキッチンペーパーでよく切り、砂糖を少し入れた薄めた麺つゆに浸しておく。


 切り込みを入れたはんぺんにチーズを詰め、衣を付けて揚げていく。

 シシャモも同様に揚げて行く。


 最後に簡単タルタル作り。

 水で浸した玉ねぎのみじん切りの水気を切り、水気の少ないカリカリ系のきゅうりの漬物もみじん切り、茹で卵と合わせ良く混ぜながらマヨネーズと塩胡椒で完成です。

 ピクルスの代わり食感の良いきゅうりの漬物を使うと、多少色が悪くなりますがお手軽で簡単に作れます。


 混ぜていたスプーンでメイド長へ「あ~ん」と味見をしてもらうと、

 「完璧です。ピクルスよりも食感が良く、フライに負けない美味しさです」



 完成した料理を和室へと運ぶのだが、ダイニングからミーアちゃんを含めた全員がこちらを見ていて驚きました。


 「メイド長が女の顔をしています!」

 「いや、あれは母性が満たされた顔でしょ?」

 「私も一緒に料理したかった……」


 メイドズの発言は気にしたら負けなので放置し和室へ。


 みんなも手伝ってくれ、和室で「いただきます」の声が重なる。


 チーズを入れたはんぺんのフライに簡単タルタルの食感がベストマッチです。

 シシャモにも合いますし、キャベツの千切りも美味しく頂けます。

 トマトとエノキのスープもシンプルながら、酸味と甘みとエノキの旨味が良く出ていて美味しいです。


 「優さまの手料理……」

 「大変美味しいです!」

 「また罪を犯せば……」


 メイド長と再犯防止策を考えながら昼食を終えました。




 お読み頂きありがとうございます。

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