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第241話 イケメン王子



 喫茶店独特のコーヒー豆の香りに包まれながら店内を進み、空いている席を見渡すがカウンター席以外にはない。


 翻訳ソフトからはダンディーなマスターの声で「今日はメイドの日なんだ」との言葉が発せられ申し訳なく思います。


 忙しなくコーヒーを落とし紅茶を入れているマスター、奥からはケーキに苺のスフレを何度も運ぶアルバイト女性店員さん。


 なんだか申し訳なく思います。


 未だに腕を放さないメイドズの一人をエスコートしながら空いているカウンター席へ座らせ、僕とゲレンデも腰かけた。


 「ナンパされたのも罪なのに!」

 「優さまにエスコートされてくるとか!」

 「今日はあいつの誕生日か!」

 「命日だろ!」

 「嫉妬神さま! 今こそ鉄槌を!」


 闇にでも堕ちているのかもしれないメイドズの発言は無視するとして、僕とゲレンデと救ったメイドズはコーヒーを注文する。


 「もう少し時間が掛かるが、ゆっくり待ってくれたまえ」


 ダンディーマスターの言葉を貰い店内を見渡すと、一番奥のテーブルに母さんたちと残りのA班を見つけた。

 僕の視線に気が付いたワンコは小さく手を振り、クリスさんや牛酉さんも微笑みながら手を振ってくれた。


 「それにしてもメイドズがナンパされるとは……」


 漏らした言葉に助けたメイドズは嬉しそうに僕の手取り目を見つめてくる。


 「そして助けて頂きました。このご恩は来世まで返させて頂きます」


 どんだけ利子の膨れ上がった恩なのだか……


 「それよりも、イケメンさんとお近づきになれたこと良かったの?」


 「優さま以上のイケメンなど、この世にはいません! それに話した感じではあの男はハーレム気どりで気にいりません! 女性の扱いもこなれていて、もっと、こう、うぶな感じの男性が! 年下で可愛い小学生が好みです!」


 立ち上がり拳を固め天に振りあげ、犯罪臭漂う発言をするメイドズにどん引きです。


 「よく言った!」

 「ショタこそ正義!」

 「妄想だけで生きていけ!」


 同じ趣味のメイドズからは拍手され応援されているが、日本語で良かった。

 店の中でこんな発言を大声で言っていたらポリスに通報されてしまう。

 いや、むしろポリスを呼んでもらい投獄した方が、世の中の為かも知れません。


 そんなやり取りをしているとチリ~ンとベルの音が鳴り、新たなお客さんが現れた。


 「ここは天国か!」


 僕の翻訳ソフトがペラーリを訳し、現れる先ほどのイケメンさんと取り巻きさんたち。


 そして無音の圧力が入口へと集中する。

 メイドズ全員からの視線が僕の横へと集まったのだ。


 「あんな若いイケメン高校生にナンパされただと!?」

 「顔も可愛いイケメンを振って来ただと!?」

 「取り巻きの子たちも可愛いわね!!」

 「あのイケメンに迫られ、優さまに助けられるとか!?」


 殺気が僕の真横へ集中するが助けたメイドズは、なに吹く顔で受け止めながら僕の腕に縋りつく。


 「優さま、また迫ってくるかもしれません。こわ~い」


 枝垂れ掛かってくる助けたメイドズの重さを腕に感じながら、立ち上がろうとするゲレンデの後ろベルトへ手を掛け止める。


 「優、そこは持たないでくれ」


 「悪い……」


 ズボンが落ちちゃうものね。


 「やっ! また会えたね! 息を整えていたので遅れてしまったよ」


 翻訳ソフトから爽やかなイケメンさんの台詞が耳に入ります。


 「ここはメイドさんが集まる喫茶店だとは知らなかったよ」


 そんな店にしてしまって、申し訳なく思います。


 「君の名を聞いても良いかな? 僕はレオラ・スフォルム・レッセリームです。これでもスフォルム王国の第一王子です」


 いつの間にか目の前へと歩きながら自己紹介をするレオラさん。最後には丁寧に頭を下げイケメンスマイルをしてくるが、僕男だよ?

 それよりも王子様……関わり合わない方が良い気がします。


 「どうも、僕はゲレンデです。こちらはベランダで、メイドのバルコニーです」


 適当な嘘で誤魔化そうとしましたが、カウンター席に座るメイドズやテーブル席のメイドズまで声を上げて笑っている。

 嘘だとばれるじゃないか!


 キョトン顔のイケメンさんは、それでもイケメンさんです。

 取り巻き女子高生の一人がイケメンさんに耳打ちをし、笑いだす。


 「冗談がお好きなのかな? 出来れば名前を知りたいな」


 イケメンさんが顔を近づけ圧迫感を感じます。

 明るく茶色がかった目は大きく二重で、すらっとした鼻ときりっとした眉にヒゲは皆無。白く美しさを感じる顔色には色気があり、こんな至近距離で見つめられたら惚れる女性は多いだろう。


 「顔、近いです。僕の名前は兎月優です。ユウ・ウヅキです。男です!」


 僕の発言にまず驚いたのが取り巻き女子高生。それに気が付いたイケメンさんは優しく肩に手を置き「シャル、シャル」と彼女の名前を連呼する。

 正気に戻った彼女がイケメンさんに耳打ちをして「冗談だろ?」とスマホの翻訳さんが声を拾った。


 「君は本当に冗談が好きなユーモアの溢れる女性なのだね」


 イケメンさんの言葉にちょっと心が折れそうです。


 「BLは文化デース!」


 奥のテーブル席で立ち上がり叫ぶクリスさんが、完全に心を折りに来ていマース!




 お読み頂きありがとうございます。

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