第23話 うさぎとモデルと開放厳禁
食事も終わりここからは個人面談。特に中学生以上とはしっかりと将来を見据えた話をしなくては。
二人には小学生達と遊んでもらい、僕は院長先生と一緒に子供達の話を聞いていく。
中学生以上の人数は15人。中学生10人と高校生5人。
結果から言うとみんなしっかりと自分の意見を言ってくれる。学校での成績も問題ない。と言うか優秀である。
ただ少し悩みがある子が多い。学校でのあだ名が貴族や王族なんて呼ばれることがあると・・・ごめんね、僕のせいだよね。ここ外見が悪いんだよね。
大学進学は絶対にさせている。もちろん専門学校がいい人はそちらへ。費用は僕が全部受け持っているが、みんな成績優秀なので特待生になり学費無料なんて子も少なくない。
面談の結果はみんな問題なし。ただ一人アイドルになりたいと言う子がちょっと心配です。
面談を終え子供達の所へ戻ると本を読み聞かせるわんこ。その横で眠るDJ。
逆ならいいのに・・・
子供達もお昼を食べて読み聞かせで眠くなったのかウトウトする子が多い。そう言った子を抱っこで運ぶ高校生達。立派なお兄ちゃんお姉ちゃんである。DJにはひざ掛けとわんこの膝枕。
「この方達なら発行してもよろしいのでは?」と院長さん。
ちなみに発行とはここの玄関のカードキー。安全第一で作られたこの宮殿孤児院セキュリティーは完璧。
だって当時僕は誘拐のトラウマ抱えていたのだもの。過敏にだってなる。
「二人分慰問カードを発行してください。帰りに渡します」
嬉しそうに「ハイ」と答えてくれた。
読み聞かせも終わりお昼寝タイムの小学生とDJ。他はみんなでティータイム。お菓子片手に雑談。わんこはみんなと仲良くなれたようで安心できた。DJも子供抱いて寝てるし打ち解けられたのだろう。
時刻も4時。そろそろお暇しますか。
「二人共これを受け取ってほしい」慰問カードである。
「これは?」と疑問顔の二人に院長先生からのお話。
「お二人共今日はありがとうございました。よかったらまた是非遊びに来てください。このカードがあればいつでも門脇のドアが開きます」丁寧に頭を下げていた。
「ああああありがとうございます」ナイスDJ。
「また来ますね。今日はありがとうございました」わんこ
「僕からもお願いします。二人共みんなと友達になれたみたいでよかった。これから送るね」
それから大音量の「また来てね」「兄様~」「バイバイ」を聞きながら車を出した。
「それにしてもすごいね。あんなお城建てちゃうなんて」
「私も学校の皆に自慢できる~今日はありがとう兎月くん」
二人とも喜んでくれてよかった。
「この後はモデルの仕事があるから、河本さんの家まででいいのかな?」
「えぇ~モデルの仕事見学した~い」
DJそれは無理だ。USAだとばれる。
「友ちゃん、無理言っちゃだめだよ! 今日会ってくれただけでもすごい事なんだから」
わんこはやっぱいい子だな。
「神田さん、そのごめん。母さんはちょっと気難しい人で、気に入ってる人以外自分の近くに置きたくないらしくて・・・」
真っ赤な嘘である。女性なら誰にでも抱き着く癖もある。
「いやややや、無理言っちゃってごめんなさい」
手を振り振り謝るDJ。立派にキャラが立ってきたな。
さて二人を送りラビットテール本社へ。いつもの受付いつもの挨拶(大量のいらっしゃいませ)受けて撮影室へ。
ハグしてくる母をかわし今日着る服へ目を通す。
ハンガーにはもう薄手のコートが並んでいる。
本日は三着と少な目だ。
ワンピースに合わせたショートトレンチコートのボタンがうさぎだ。それに合わせる水色のマフラーの手触りいいな。
今更だけどラビットテールには隠れうさぎなんてのがある。タグの裏や襟の裏あとはポケットの中など様々だ。ボタンとして使われるのは珍しい。
隠れうさぎは遊び心だけじゃなく、その服のグレードが簡単にわかるようにされているのだ。
白兎 五千円以下
黒兎 五千円から一万まで
水色兎 一万から五万
ピンク兎 五万から十万
茶色兎 十万から百万
白黒兎 百万から二百
虹色兎 二百万から五百万
金色兎 五百万から一千万
金色兎に銀色王冠 一千万から二千万
白兎に金の王冠が最高級 二千万から上限なし
レア兎 特別な意味がある
基本はこんな感じである。今日着る服は水色とピンクが多い。
最高級なんて僕は3着しか見たことが無いよ。どの服も宝石がちりばめられてたりするんだもの、そりゃ二千万以上の価格になる。
「今日の優ちゃんはつれないわね」
アンタのハグは痛いんだよ!
USA装備と軽く化粧をして撮影会。
「USA様最高」
「美の宝石箱や~」
「生足はぁはぁ」
「あのブーツに踏まれたい!」
変体化がとまらないメイドズ・・・
モデル辞めたくなる気持ちがわかってくれるだろうか?
撮影は順調に進んだ。
「優ちゃん、ちょっと来なさい」
良い顔で言ってくる母。この顔の母についていくと碌なことが無い。
以前は落とし穴に落とされた事もある。自分の持ちビルだからって工事してまで落とし穴作った。室内だよ?
落とし穴を警戒して母の歩いた跡を踏み、後を追う。
着いたのは見たことのない部屋だった。ドアには開放厳禁の文字が・・・
「なにここ?」
横にいた秘書ちゃんに尋ねると小首をかしげ「わかりません」。
いったい何なんだ?
ドアが開かれると爆音が体を包んだ。
目の前にはステージ。セットが組まれ、そこに立つバンドメイド達が・・・
母よ、どこへ向かっている。何がしたい・・・いやバンドだろうけどさ。
「ジャーンお披露目! 新生バンド、ラビットテールで~~~す!」
頭痛い・・・
メンバーはギター、ベース、ドラム、キーボード。最後にヴォーカルの母。
父さんが生きていたら、こんな事にはならなかっただろうか・・・
そこからは母の独壇場だった。二曲のオリジナルと有名な曲を次々歌っていく。どこで練習したのかプロ並みの美声だった。
「私の歌を聞け~~~」と天城越えのモノマネが秀逸だったな。
秘書ちゃんといつも以上に疲れて帰宅した。




