表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/595

第229話 お城の美術館



 郊外へ向け走り出した車は三十分ほどで目的地へと到着した。


 「これって……」

 「おぉぉ、凄いな」

 「お城だ~」

 「スカイブルーのお城デース」


 セーヌ川沿いに佇む場違いな日本風の巨大なお城。

 スカイブルーの壁面が印象的で、日本にあるお城よりも巨大でありながら美しく感じる。

 現代の建築方法で建築されたお城は巨大な門にしても木目はなく、鉄筋とコンクリートで作られているのだろう。


 巨大な門を車で潜ると日本庭園を思わせる石と緑の世界が広がり、季節ごとに楽しめる花々が咲き誇っている。

 ただ、日本庭園とは違い見たことのあるハーブや薔薇などが多く、イメージとのギャップが酷い。

 日本庭園にある静かなで趣のあるび的な美意識とは違い、華やかさの一点突破だろうか。

 そもそもスカイブルーな壁面のお陰か、空の色と被り一瞬視界に違和感を覚える。具体的に言えば屋根だけが浮いて見えるのだ。


 車で庭園を進むと、むき出しの土に木を植える作業員の方たちが汗を流していた。

 この作業がある為に本来なら閉館しているのだ。


 それにしても、門を抜けかれこれ十分は走っているのに城に到着しません。

 どれだけ巨大な庭なのだろうか?

 管理された庭園なのでクマやオオカミはいないと思うが「あっうさぎ!」野うさぎはいました。


 十五分ほどで城の足元まで車を進めると大きなロータリーがあり、その奥には巨大な駐車場があった。


 なんか、色々と台無しな感じがするのは僕だけだろうか……


 車を降りると門が開き中から金髪美人と執事とメイドが現れる。


 なんか、色々と台無しな感じがするのは僕だけじゃないはず……


 「ヨーコーソーいらっしゃいましてー。ここの管理を任されているソルシャでーす」


 スーツ姿の金髪美人にカタコトな日本語の挨拶を貰い、僕らも頭を下げた。


 「本日はよろしくお願いします。本来ならまだ開館前にも関わらず見学させて頂くことになり……」


 臼ちゃん先生の日本語を嬉しそうな笑顔で答えるソルシャさん。

 年齢も臼ちゃん先生と同じぐらいだろうか? 

 美人のメガネお姉さんといった感じの人だ。


 ソルシャさんの横で耳打ちするメイドさんは通訳の係なのだろう。臼ちゃん先生の言葉を翻訳しフランス語が漏れ聞こえてくる。


 「こちらこそサフィアさまのお孫さまをお迎えできる日が来るとは思いませんでした。本日は優さま御来館記念日にしましょう! との事です」


 翻訳メイドさん、翻訳ありがとうございます。そんな日は断固として拒否します!


 「そんな記念日を作ったら、恥ずかしがり屋の優に嫌われてしまうよ。それよりも案内を頼めるかな?」


 レオンさんのフォローに感謝しながら城の中へと案内され入城です。

 大きく開かれた扉をくぐると待っていたのは受付です。

 ごりごりの洋風建築が中には広がり、床も大理石。


 「質の良い大理石を使っていますね。日本風のお城のイメージが覆されるハプニング付きです。

あちらにはお土産コーナーもありますね。ピラミッドやピサの斜塔のストラップにこのお城のキーケースも売っていますね。

って! 日本のお城の内部が、どうしてこうなった!」


 牛酉さんが披露したノリひとりツッコミに共感しながら、みんなで足を進める。


 「ナイスツッコミデース!」


 クリスさんの言葉に赤面する牛酉さん。感情で口走っちゃう事ぐらい、若いうちはいくらでもあるだろう。


 ゲレンデも大きな肩を揺らし笑いを堪えている。

 臼ちゃん先生も口を押さえて堪えている。

 ワンコは……いない!?


 何処かに置き忘れたのだろうか?

 辺りを見渡すとお土産コーナーをうろうろするワンコを発見。

 僕は慌ててワンコへと走り寄る。


 買い物かごにはストラップと扇子が数本入れてあり、何故見学前に邪魔になるだろう荷物を増やすか問いただしたいです。


 「みんなにお土産選んでたの!」


 でしょうね!


 「そうじゃなくてね。これから美術館を見学するから帰りに寄ろうね」


 優しく注意し頭を撫でる。

 店員さんも苦笑いで買い物かごを受け取り、取り置きしておいてくれるらしい。

 フランス語なので分からなかったが、きっとそうだろう。

 翻訳アプリを立ち上げておいた方が、良いかもしれませんね。


 受付とお土産コーナーを素通りし、一階メインフロアーへと足を進める。


 一階は重量のある彫刻と化石のフロアー。二階三階へ行くほど絵画や宝石などの比較的軽いものが展示されているようです。


 「一階からでいいかな? 彼女は化石に興味があるのだろう?」

 「アンモナイトが大好きデース!」

 「俺もマンモスとかは見てみたいです」


 クリスさんはアンモナイトが好きで、ゲレンデはマンモスが好きなのか。

 ゲレンデだったらマンモスの骨付き肉とか、噛り付いていそうなイメージがある。 

 あるのだが、目の前の光景に一同絶句した。


 縄でグルグル巻きになる化石。

 ではなく、祖父である白髪ダンディーの真二しんじ・プルサンスが床に横たわり、それに座るのは祖母であるサフィア・プルサンス。


 どうしてこうなった!





 お読み頂きありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ