第21話 孤児院 その1
わんこの家についた僕はチャイム押した。
「兎月くんいらっしゃい。少し早いけど寄っていく?」
出てきたわんこはピンクのパーカーに白いスカート。いやはやロリ可愛い。わんこめ、自分の見せ方を知っているな。
その後ろには何やら固まった美少女。前髪キメてきてます感が半端ない。
「準備できてるなら行きましょう。子供達も待ってるし、えぇっと後ろの方は? 僕は兎月優です」
「きゃん、かかか、神林友子です。本日はごごごきげんうるわしゅうう?」
「友ちゃんしっかりして! おかしなスイッチ入ってるよ! 兎月くんごめんね。写メ見せてから少しおかしくなっちゃったの」
確かに!
あだ名はDJだな。自己紹介にスクラッチ入れてくるとか中々な人材だ。
「緊張しちゃって。初めましてです」
「うん、よろしくね。準備は大丈夫?」
「もちろんできてます。けど、ちょっと待って! 気持ちの準備ができてない。スーハースーハー」
スーハー言いながら深呼吸する人いるんだ。
「友ちゃん落ち着いて。変な人だと思われちゃう! そしたら私が変な人を友人に持つ人と思われちゃう!」
なんだろう。わんこってたまに毒吐く気がする。
「変かな? あははははぁ~」
落ち込まないで、フォローとかめんどくさい。
「じゃあ車用意してあるから」
「よろしくお願いします」
車で移動。黒塗りの中は快適空間。
車中で秘書ちゃんの自己紹介があった。
「優様の秘書です」
これで終わりだったけど、もうちょっとなんか言いようあるんじゃないかな?
「兎月くんはどうして孤児院を経営してるの? やっぱり人助け?」
「なになに人助けって?」
そっちに食いついたかDJ。
「人を助けられる男になれってのが、父の遺言みたいなものなんだ。それで困ってる人はやっぱり孤児の子かなと、自分なりに考えて建て直したんだ。確か2億ぐらいだったと思う」
二人共開いた口が塞がらないと言う顔。驚く顔はみんな面白いよね。
「それは親に出してもらったの?」わんこの疑問。
「貯めてたお年玉使いました」僕の回答。
またもびっくり顔。表情が豊かな二人である。
「祖母(フランス人)がお金持ちでね。毎年お年玉としてかなりの額が振り込まれてた(なぜかアメリカの銀行)。それを秘書ちゃんから聞いて孤児院を立て直す費用に充てようと思ってね」
「すごすぎて話について行けないよ~」DJ
「私も・・・住む世界が違うのかな」わんこ
いやいや住む世界って、同じだよ。日本だよ! わんこは学校すらも一緒だろ!
「優様、もう少しで着きます」
「わかった。二人共子供は好きだよね?」
コクコクうなずく二人。
「一緒に遊んだり勉強教えたり、よろしくね」コクコク。
「要塞みたいだね」「奥に宮殿が見える」
あの当時(小5)は若かったなあぁ。
祖母の家がお城みたいで羨ましくなって、ここを宮殿みたいに建てたのだ。僕の目の色と合わせてブルーの屋根の色がとても気に入っていた。
今では黒歴史です。
重厚な門が開く。駐車場にはもう子供たちが走り出してこっちへ向かってきた。
「「「「「「兄様!」」」」」」
車を囲む声と子供達。
小さい子は5歳から大きい子は高校三年生まで幅広くいる。
確か50名はいるはずだ。
職員は10名ほどだが、それでも手が回らない時がある。そんな時は中学生から高校生までの子が小さい子の面倒を見る。
みんな家族。これが合言葉。年上は兄姉と呼び年下は弟妹。先生はお母さん。
僕はみんなから兄様と呼ばれている。様を付けるのは僕がお金を出しているのを知っているからだろう。一度だけ院長にやめるようお願いしたが「兎月会長様のおかげでこの子達が生活できるのです。敬うのは当たり前です!」とのこと。
車から降り二人を紹介する。
「みんな紹介するね。河本千和さんと神林友子さん。今日みんなと一緒に遊んで勉強するから仲良くしてね」
僕の紹介に二人は頭を下げた。
あっという間に囲まれる二人。わんこの方が人を多く集めているようだ。
「お姉ちゃん可愛い~」
「どっちが兄様の彼女?」
「そのパーカーラビットテールだ!」
「アタシと一緒ぐらいだね。何年生?」おいそこは気を使え! 高校生だよ! 小三じゃないぞ!
「私はこれでも高校生なんだよ。仲良くしてね」怒って無いようでホッとする。
神林さんも囲まれてるな。
「すごい美人」
「まつ毛長げー前髪すげー」
「兄様の彼女? ちゅーした?」
「前髪すげー熊手みたい」
顔を真っ赤にしながら否定する神林さん。熊手は失礼だろ!
歓迎されているようでよかった。これからみんなで勉強会だ!




