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第202話 雨


 ゴールデンウィーク初日にも僕は撮影の仕事があり、USAの姿でレンズに写っています。

 五月の暖かな日差しが窓から入るスタジオで、マフラーを巻きライトダウンにフレアスカート。

足元はスリムに見える黒のロングブーツ。

 留め具がうさぎの形をしています。

 

 十一月に発売するロングブーツの撮影中です。

 

 横にはMINIUSAもおり、ブーツと思いきや長靴です。

 赤い傘に赤い長靴を装備し、上から赤いレインコートを着ています。

 これは梅雨向けの新商品であり、雑誌の穴埋め広告です。


 MINIUSAなりきりセットシリーズ~雨の日もおでかけなのだ~


 子供向けの商品です。

 「あなたの子供も今日からMINIUSA」なんてキャッチコピーが付いた商品で小学生向けの商品。

 これがバカ売れなのだ。

 孫を持つお年寄りが購入し、プレゼントすることが多いそうです。


 長靴も昔ながらの物ではなくファッション性を出し、ブーツに近い形をしている。

 オシャレをしたい小学生が貰って嬉しいのも頷けます。


 傘も赤一色ではなくグラデーションのある淡い赤から濃い赤の布を使い、うさぎの前歯が留め具です。


 レインコートにも工夫がされており、真っ赤なロングコート仕様に見え腰にはひらひらの付いた白いベルトに、フードにはMINIUSAと同じような白いラインが入っている。

 こちらのベルトの留め具にも、うさぎが採用されている。


 交代でポーズを取り撮影が続く。

 「エンジェルスマイル~」

 「幼女の季節や~」

 「私もMINIUSAに買ってあげたい」

 「寧ろ飼いたい!」

 「飼われたい!」


 メイドズの撮影部隊を更生する施設を何処かへ作れないか、真剣に考えた方がいいかもしれません。


 「少し濡らしましゅか?」


 じょうろ片手に息を荒げ噛む変態メイドズは、もう更生する未来が見えません。

 法的に罰せないのが悔しいです。

 何処かの檻に入れた方がいいと思います。


 「そうね。少し濡らして、光を当ててキラキラさせましょう。メイドズ放水!」


 脚立に乗ったメイドズから雨が降り、強めにライト光が乱反射する。

 小さな虹がMINIUSAの肩に掛かりシャッターの拍手が響き渡った。


 「すごーい! お家の中でも虹ができた! 肩に虹ができた!」


 はしゃぐMINIUSA。

 躍動感のある広告が出来上がることだろう。



 さて、次は僕の撮影ですが雨は入らないです!

 雪もいらないです!

 僕は耐水性のない普通の格好です!


 じょうろを構えるメイドズが息荒く頬を染める。


 「折角だから雨! いってみよ~!」


 ずぶ濡れです。

 意味もなくずぶ濡れです。


 「いいよ~すごく濡れてるよ~」

 「冷たい目線頂きました!」

 「濡れる黒髪がセクシーです!」

 「ずぶ濡れセレクション金賞です!」


 濡れながらポーズを強要されています。

 なぜ僕はブーツの宣伝でずぶ濡れなのでしょうか?

 長靴ならまだ理解できますが革製のブーツです。

 ライトダウンが少しだけ水を弾きますが、フレアスカートが恐ろしいほど吸水性が高く重いです。

 重さでずれてきています。


 知っていますか、マフラーが濡れると急速に体温を奪います。

 熱中症は動脈を冷やすと良いと聞いたことありませんか?

 今まさにそれです。


 MINIUSAが心配そうな顔でこちらを見つめています。

 心配かけてはダメなのです。

 もうワンテイクとか言われたくないのです。

 見せましょうプロ根性を!


 ポーズと共に表情を作る。

 濡れていたって何処かできっと、使ってくれるはず。

 別に使ってくれなくてもいいのですが、早く撮影を終わらせて熱いお風呂に飛び込むのだ!

 これぞプロのスマイル!


 「USA姫が雨の中ターン!」

 「濡れるUSA姫ノクターン!」

 「艶のあるUSA姫のサービスカットや~」

 「今夜は良い夢見れそうです!」

 「飛び散るしぶきが幻想的デース」


 夢中でシャッターを押す変態の相手をしながら、笑顔でポーズを決める僕は変態なのだろうか?

 

 身も心も寒いです……



 撮影も無事終了し、意味なく濡れただけの僕。

 どうせならUSA姫なりきりセットでレインコートを着たかったです。

 そんなセットは販売していませんが……


 濡れた僕は着替える為に衣装室へと移動する。

 後ろでモップをかけながら付いてくるメイドズ。

 もちろんタオルで水気を取りましたが、フレアスカートから滴り落ちる雫が止まりません。

 マフラー絞ると雑巾以上に水が出ます。


 僕の戦闘服であるジャージに着替えお風呂に移動。

 

 生き返ります。

 体温は無暗に失ってはいけないのです。

 その場のノリで水をかけてはいけないのです。


 ゆっくりと温まりガウン姿で飲む牛乳は、今日の撮影の忘れさせてくれるほど美味しいです。

 僕って簡単な人間なのかもしれません。


 ガウン姿で廊下に出ると何やら撮影する音が耳に入り、複数ある控室のひとつからフラッシュの光が廊下へと漏れているのだ。


 興味本位でドアの前に近付くと、張り紙があり取材中とのこと。


 月刊シックスパック様による桜お嬢様への取材中。


 どうやら桜姉さんが取材を受けている。

 月刊シックスパック……


 ダイエットの雑誌だろうか?

 それとも筋肉の雑誌だろうか? 

 



 僕は見なかったことにして、ワンコの待つ控室へと足を進めた。




 

 面白いと感じた方や、これからカレーを食べる方はよかったら★を押して下さい。

 中辛になります。

 

 では★を押した体験談のコーナー。



 「たとえば私の左手がカニの手だったとしたら」

 「茹でる!」

 「食べる!」


 「そうじゃなくてよ! そんな改造手術を受けて怪人になったらって話よ!」


 私は昼休みにどうでもいい話しをバカ四人としている。毎日のことだし話題が尽きるのは仕方のないことだ。

 

 「背中にカニの手が欲しい。ドライヤーで乾かす時に便利そうだよ」

 「私は肩にぼっことした何かが欲しい」

 「ぼっこて何? 具体的に言わないと意味がわからないよ」

 「こうぼっことしててバックが肩から落ちなくなるような、ぼっこが欲しいの」

 「説明聞いても意味がわからないし、欲しくないかな」


 そんなどうでもいい話しも終わり、五時間目のテストが始まる。


 「ぎゃー何でカニやぼっこの話なんてしてたのよ~」

 「教科書見ておけばよかったー」

 「何のテストだ! 期末なのか!? 世紀末なのか!?」


 「それでは中間テストを始めます。配り終わるまでは裏にして待つように……」


 

 この時私は焦っていた。だって、お小遣いの金額はテストと比例する我が家のルールがあるのだから!

 

 せめて五十点さえ取れれば!

 

 問題用紙を表へ裏返すと生物のテスト。

 

 蛙の生態にトンボの生態にカニ!?

 カニの問題ではないか!

 肩がぼっこの問題がないか探したが見つからない。

 そりゃそうだ!

 

 今月のお小遣いは赤点だったけど、懸賞でカニが当たりました。

 美味しかったです。




 このように★を押していた彼女にはカニが当選されました。

 

 貴方も★を押して肩ぼっこのテストに立ち向かおう。

 

 

 お読み頂きありがとうございます。

 

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