第201話 大型連休前
人類とは戦いの歴史である。
こんな名言を誰が残したかは知らないし、戦いなどしない方が良いに決まっている。
話し合いで解決するなら、それが一番だと僕は思います。
先日のヴァルキリー事件もそうだ。
守るためとか言いながら大乱闘。
停学処分者などは出なかったが、軽傷者を複数出したのだ。
僕を含めて、みんなで反省すべきです。
四月も終わりに向かいやってくるのがゴールデンウィーク。
みなさん浮足立っている。
どのぐらい浮いているかと言えば、ワンコは頭を左右に揺らしサイドテールがぷらぷらと揺れ、ジョセは下敷き変わりにトレーを使う。
お嬢に至っては扇子型のヘヤピンが開いたり閉じたりと……
そして授業も終わり放課後です。
「それでは優YOU会の五月の会合を始めたいと思います……」
体育館には全校生徒と職員が全員集まりお嬢の話が始まる。
話す内容は先日のヴァルキリー事件の顛末と、僕の横にいるゲレンデとクリスさんがボディーガードに就任するというもの。
守護騎士ですか、そうですか……
よくわからない役職に任命されたようです。
ゲレンデは騎士というより、あらくれな外見。睨みを利かせたら校内一の強面さん。
先日も北海道にぶつかってガチ泣きさせそうになっていた。
廊下に北海道が誕生しなくて本当に良かった。
クリスさんも騎士というよりザ・アメリカ人な見た目。出会った頃は赤みがかったブラウンの長髪だったのに、いつの間にかド金髪に色を変えカタコトの語尾を使うようになりフジヤマを連呼している。
個性を重視する時代なのかもしれません。
お嬢の話が終わり恒例のビンゴ大会です。
景品は宿泊チケットや試供品まで僕がほぼ提供しています。
「Bの8番」
ワンコが読み上げる番号に全校生徒が一喜一憂している。
僕の手元のカードにはフリーの真ん中しか開いていません。
「Dの4番」
「ビッビンゴ! ビンゴーーーー!! やった! 超高級リラクゼーション施設うさぎの寝床の宿泊ペアチケットは私が頂いた~~~~~真面目に教師してて本当に良かった! わ~ん」
「臼ちゃん先生おめでとうございます。ペアチケットなので期限までに頑張って彼氏を作って下さい。Cの2番」
ワンコの言葉に臼ちゃん先生のテンションの落差が……
二組の担任さん、もっと慰めてあげて! もう一緒に行ってあげて!
次々にビンゴ者が現れる。
上位者十名まで豪華賞品が並び、それから下はほぼ参加賞の試供品が配られる。
この試供品もアンケート付きで使用した感想を記載してもらっているのだ。
ひと学園分の人数から意見が貰えるこのビンゴ大会は、僕が会長を務める七宝グループ企業からの参加依頼が多い。
生の意見が手早く集まるのだから、企業からしたら完全にプラスである。
「リーチデース!」
クリスさんが手を上げリーチをアピール。
僕はまだ一個しか……
「Aの1」
「あっ、俺もリーチだ」
ゲレンデもリーチの御様子。
僕はまだ中央だけですけど……
臼ちゃん先生は二組のなんとか先生に慰められながら「ビンゴ! よっしゃー! 私にも春が来た!! 幸見なさい! 私もビンゴ~! 二番目のビンゴよ!」
「二年の英語担当である独身教師が二番目のビンゴです。臼ちゃん先生と一緒に行くと思うので二回いけますね。ではCの7番」
ワンコの毒舌が酷い……
教師二人を撃沈させてお互いに慰め合う二人。
そもそもリラクゼーションを目的とした施設なんだから、一人で行ってもいいじゃないか。
「ビンゴ!」の声が出始め、上位十人が決まった。
決まったのですが守護騎士さん二人ともビンゴして壇上で景品を受け取っている。
僕の横空いてますよ~、守護騎士さんが横に居ませんよ~
何だか虚しいです。
「ダブルリーチだったのに~」
「私もダブル~」
「俺なんてトリプルがっ!」
あちらこちらから上がる声に楽しんでもらえたようで嬉しいです。
僕ですか?
中央とその横が一個だけ開きました。
僕が提供しているのでビンゴしても受け取るつもりはありませんが、リーチぐらいなってほしかったです……
ビンゴが終わり試供品を配る美術部。
いつの間に着替えたのかメイドコスプレ集団が、段ボールから取り出した缶詰を配っている。
昨今の缶詰ブームに乗っかった穴のあいてないバームクーヘン。
災害時でもお手軽に甘味が食べられるよう作りだした物で、賞味期限も大幅に伸びた商品です。
バームクーヘンの穴が開いていないのが気になるが、缶詰にするなら極力空気を抜かないとダメなのだそうです。
メイドさんに手渡しされ照れる男子生徒が多くいるが、ほとんどが女装だと知っているのだろうか?
「優さま一緒に行きましょうデース」
壇上から帰ってきた守護騎士さんが僕を誘う。
その声に反応して振り返る多くの生徒。
あらやだ怖い。
クリスさんに守護騎士は無理かもしれません。
僕はゲレンデを盾に戦略的撤退です。
最後に挨拶をして欲しいとか言われていましたが、身の安全の方が大事です。
ゲレンデの背中へ飛び乗り、目指せ校門!
キャーキャー聞こえたが逃げるのです!
守護騎士の家の前に車を止め、降りるゲレンデに「美佐さん誘って一緒に行ってね」とアドバイスを送るとゲレンデが紅葉しました。
明日からゴールデンウィークです。
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私が鬼退治に出かけたのは先月のこと、きび団子を渡す代わりに仲間になった犬と猿。
この戦力ではどう考えても勝てそうもない。
宿場町で尻尾を振る犬を見ながら考える。
相手は鬼だ。
きっと金棒も持っているだろう。
そんな相手に猿がどう戦えというのだ!
仲間になりたそうなキジがこっちを見ているが、どう考えて戦力不足……
そうか! SNSで仲間を募集しよう!
ついでになろうの新着を確認し★を押し評価する。
次の日スマホを確認すると募集にはなんのレスポンスもない。
これはダメか。
そう思いながらも旅を再開した。
仲間二匹と道の途中できび団子を食べていると、一匹のF-22ラプターが木にとまり、こちらに話しかけてくるではないか。
「きび団子をくれるならお供になりましょう」
鬼ヶ島が火の海に沈んだのは三日後のことだった。
このように★を押したからこそ、強力な兵器というなの鳥が味方してくれたのです。
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