第2話 ミステリアスUSA姫
「おかえりなさいませ。優様」
玄関をあけると僕専属メイド、銀星桜が出迎えてくれた。
まず目を引くのがそのたわわに実った胸。たしかGカップ。肩こりがひどいと嘆いていた。顔も美人な方だと思う。
黒と白のメイド服がよく似合っている。ちなみにこのメイド服は僕がアイディアを出した。エプロンのヒラヒラレースを桜の花びらにして後ろには桜の花を模した留め具が付いている。色違いでピンクもある。桜の葉をイメージした緑色のレースのエプロンもある。通称桜シリーズ。
これはメイドちゃんがメイド見習いからメイドへと就任した祝いのプレゼントだ。引くぐらい泣いて喜んでくれたのを思い出す。
「ただいま、明日の準備したら、ちょっと泳いでくる」
うちのビルは地下に50Mプールとトレーニング施設がある。金持ちってすごいよね。
「畏まりました。では、私はご夕飯の買い物へ行かせていただきます。何か入用なものはありますか?」
「ありがとう大丈夫だよ。気を付けていってきてね」
頬を軽く赤く染めたメイドちゃんは頭を下げ可愛い声で「行ってきます」していった。
さて自分の部屋で明日の準備。
アタッシュケース(入学祝に母がくれた超軽量カーボン素材でできた逸品。拳銃ぐらいなら貫通しないらしい)に入学案内と筆記用具を入れ制服の確認。
制服が掛かっているクローゼットを見て絶句。何で女子用の制服も入ってるんだよ! また母さんのイタズラかよ!
最近ため息がとまらない。
ワイシャツに靴下も準備できている。あとは赤いネクタイ。これの色で学年がわかるらしい。一年は赤、二年は青、三年は黄色。信号機だね。
さて準備終了。早速泳ぎにいきますか。
スマホで時刻を確認。現在15時。一時間ゆっくり泳ごう。
いつものプールセットのバックを持ち玄関へ向かう。リビングのソファーに横になり煎餅食べながらTV見ている秘書ちゃん……だらしない。外ではキリッと家ではグダッと切り替え上手なんだよね。
「秘書ちゃん、煎餅のカス落ちまくりだから掃除機かけてね。プール行ってきます」
「いってら~♪」
口調までもだらしない。その場でこっちも見ずに手だけ振っている。とっとと行こう。
着替えを済ませカラーコンタクトを取る。わざわざ黒のコンタクト。
これには理由がある。
僕の瞳は青いのだ。隔世遺伝って言うんだっけ?僕の祖母がフランス人で僕クウォーター。顔が美人なのはこの影響が大きいと思う。あとモデル活動の時もコンタクトは外している。青い瞳の受けがいいらしい。あと髪に白のウイッグを2つ着け兎に見立てて小さいころから活動していた。
モデルの時の名前はUSA巷ではミステリアスウサ姫なんて呼ばれている。ミステリアスと付くのはUSAの個人情報が一切公開されてないためで、よく雑誌の取材やTV出演の依頼、中には映画のヒロインに使いたいなんてのもあったらしいが母が全部断ってくれている。
僕は目立つのが嫌いなのだ。
USAの名前が有名になるにつれ母の会社はどんどん大きくなり、今では美容界の女帝なんて呼ばれたりしている。
「頭から足の先まで美をコーディネイト」これが母のモットーだ。衣服だけじゃなく美容院、ネイルサロン、健康食品、リラクゼーション施設、ジュエリーショップなどなど美を追求する会社をいくつも立ち上げた。今では世界的な金持ちなのだ。
プールは閑散としていた。僕を入れて四名。よくここで会う顔馴染みの親子さん。確か高橋さんだと思う。
僕の持つこのビルは一階から十四階までは普通のマンションとして貸している。そこから上が僕の使用している七宝グループ関係の会社となっているのだ。ちなみに25階建て屋上にヘリポートとかもあったりするのですよ。
やや太めの高橋奥さんと小学生の娘さんに軽く会釈をして準備体操。ストレッチは重要だよね。
「ご苦労様です」と監視員のお姉さんにあいさつ。
「こんにちは会長様」と笑顔で挨拶を返してくれる。
プールキャップに長髪を押し込みゆっくりプールにつかる。温水プールは心地いい。
ゆっくりと50Mを平泳ぎで流しながら明日の入学式の事を考える。
この髪型は嫌でも目立つ。どうにか目立たないようにしないと。一様対策として伊達眼鏡(黒縁の広い奴)を用意した。
メイドちゃん曰く「これで少しは顔が隠せます。20%は優様の魅力は下がったのでは?」
秘書ちゃん曰く「眼鏡フェチには50%ほど魅力が上がってしまうかもしれません」
解決策になっていないが仕方がない。あと黒のカラコンはもちろん装備予定。いっそつけヒゲでも装備してみようかと思ってしまう。
自意識過剰すぎじゃないかって?この顔に生まれてどんなに大変か。
まず誘拐回数5回。そのうち2回は友達が誘拐された。
中二のバレンタインの渋滞。チョコを渡すだけの事なのに体育館を用意され、まるでアイドルの握手会のようなことを4時間もやらされた。この時貰った総数は約2500個。何で男子や近隣の中学からも生徒が来るんだよ! と叫びたかった。
モデルとしても伝説はある。幼稚園編、小学校編、と僕のモデル写真をまとめた二部作の写真集がバカ売れ。世界中で10億冊売れたらしい。とんでもない金額に眩暈がした。
その写真集がある映画監督の目に留まり出演依頼の話が出たとのことだった。しかもその監督が結構アレな人で、新作映画の番宣番組や雑誌でUSAを「使いたい!! 使いたい!!」と自分の映画そっちのけで話したらしい。そんなことも重なって写真集は増版。
今でも印税が入ってくる。そして中学生編を早く出してほしいとの要望も。母には「絶対出すな」と言ってはあるがあの人は聞かないだろう。
そんな両性からモテる僕は自意識過剰ではないと思うのだ。
何往復しただろうか。プールから上がると水泳後独特のけだるさが体中に広がった。壁にかかる時計は5時を指し、思っていたよりも泳いでいたようだ。監視員のお姉さんに別れを告げガウンを纏い自宅へと歩き出した。