第17話 生徒会長と商店街
昼休みの柔道場イベント(12話参照)を消化してゲレンデ(今日は大根一本丸かじりにしていた)と教室に戻る。
生徒会長が吠えていた。
「兎月優はどこだーーーー! そこのちっこいの隠すとためにならないぞ!」
脅されるわんこは今にも泣きそうで、それはそれで可愛いな。いや助けないとか。
「生徒会長様、今日は何の用でしょうか?」
「そこにいたか!」右手のプリントを僕に押し付けてきた。
「これは? 生徒会に入るためのプリントですか? 要りませんよ?」
「うるさい! 早く名前と印鑑を押せ! お前が必要なんだ! 副会長もそう言っていた! ぜ~~~ったい入ってもらうんだから!」
駄々っ子か!
わんこが駄々をこねたら可愛いだろうが、スラット美人がそんな事しても需要ないだろう。それにもうすぐ昼休みも終わるしほっておこう。
「おい! 無視して弁当箱を片付けるな! 無視するな! こっちにだって奥の手はあるんだからな!」
奥の手?
一瞬手を止めたのが悪かったのか生徒会長は口角を上げニヤリ。
「そう奥の手。兎月優! お前のファンクラブにある事ない事吹き込んでやるぞ!」
うわぁ~奥の手を早々にバラしちゃったよ。しかも大声で。何でこんな人が生徒会長してるんだよ。投票制だろ?なんで選ばれた!誰が投票した!
それよりファンクラブがもう設立されていた事実(入学四日目)の方が気になるが……対策を考えねば。
「おい! 聞いているのか! お前の三つあるファンクラブに悪評を言うと言っているんだぞ! もっと相手にしろ!」
三つもあるの~困るよ~面倒事にしかならないよ~誰か何とかしてよ~
「私は諦めないぞ! 兎月!」
チャイムの音と共に捨て台詞を吐く生徒会長を見送った。
その後は何事もなく放課後を迎えた。
車中秘書ちゃんから「メールで報告した通り、これから商店街の会議に出席していただきます」とのお話。
なんでも梅雨時期の来客数低迷に関する会議があるとの事。それに参加する高校生って。
今はファンクラブの事を考えたいのだが……
黒塗りの車が公民館に横付けされ、多くの大人達に頭を下げて迎えられる。
「本日は足を運んでいただき……」
確か市議会議員の人だったかな? その挨拶を受け公民館の会議室へ足を運んだ。
「だから圧倒的な名物を考える方向で!」
「その名物が思いつかないのだろう!」
「そもそも雨の中、地方の商店街に足を運ぼうと考える奴がいるか?」
「名物程度じゃ雨の中商店街に来るかよ!」
「大型スーパーに行けば濡れずに買い物でるんだぞ!」
白熱するおっさん達。黙って見ていたが時間の浪費でしかないだろう。
「あの~濡れずに買い物できれば足を運んでもらえるのではないですか?」
僕の発言に会議室が静まり返る。
「商店街と駅は近いですし、アーケード街にしたら駅から歩いて来るお客さんも増えるのでは?」
「ですが予算がいくらあっても……」市議会議員さんの声。
「僕が出資しますよ。それにこれだけ大きな事なら県や市から援助も出るでしょうし梅雨対策としては一番いいのでは? あっもちろん無利子で貸しますよ?」
「ですが完済にいつまで掛かるか……」
「皆さんの白熱振りを見たらわかります。きっとすぐに完済し終えますって。秘書ちゃん久しぶりに七宝グループ総出でかかるよ!」
「わかりました。すぐに見積もりを出させます」
電話をしに一人会議室を抜け出す秘書ちゃん。
すごく背中が大きく感じる。漢の背中って感じだ。
「本当によろしいのですか? 5年や10年で済む話じゃ……」
心配顔の議員さんをよそに僕は笑顔で、
「大丈夫ですよ。この事業は僕個人で請け負うもの、もし失敗しても僕が損するだけですし……あっ、これ公共事業だから個人でやったらまずいのか?」
「いえ、そちらの方は私が説得します。それに兎月様に動いていただいた方が確実に低予算で済みます。今までの結果を見たらわかりますから」
「それなら今のままで行きましょう。あと名物の事ですが女性をターゲットにしたものはどうですか?コラーゲンを使った商品など美容関係の知識なら提供できますし(母から)どうでしょう」
「コラーゲンタイ焼きとかいけるか?」
「うちの豚足や鳥皮を使って何かできないかな?」
「コラーゲンを入れた惣菜なんかOL向けにできるな」
「駅弁にも利用できそう!」
概ね好評化のようでよかった。
会議室に入って来た秘書ちゃんは見積もりを教えてくれた。
「費用は約4億。現地を調査しないと正確にはわかりませんが七宝グループから建設、資材、土木、会計、園芸、運搬、デザイナー等の会社が参加を表明しています。視察次第で完成時期は前後しますが6月頭までには完成させます」
歓声が上がる。
なんと力強い味方達だろうか。助け合いをモットーにしていてよかった。
「では、その方向でいいですか?」
「「「「よろしくお願いします」」」」と頭を下げる大人達。
「よし! みんなやるぞ~」
肉屋の叫びに賛同する商店街の方々。その顔はできる男の顔だった。
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