表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/595

第16話 兎月優質問会とUSA姫

 

 

 少し静まり返った教室。

 それを打ち破ったのは同じ美化委員の水樹琴音さんだった。


 「写メが欲しいのですが一緒に撮ってください」


 ぺこりと下げた頭に「一人一枚でいいですよね」と言葉を投げかける。


 沸く教室。


 「マジかー自慢できる!」

 「俺、拡大コピーしてや部屋に飾る」

 「私抱き枕作ろうかな」

 「それ私買うわ!」


 勝手に商売を始めるな!てか、あまり煩いと隣のクラスから苦情が来るぞ。


 「一つだけ言わせてください。ネットに上げたり、友達に送ったりはしないでください。ネットの怖さは言わなくてもわかりますよね?」


 「みんな絶対だからね!」委員長が釘を刺してくれた。


 「そんなもったいない事するかよ」

 「そうよ! 友達なんだもの!」

 「私達だけの宝物よ! 人になんてあげないわ!」

 「作り方教えるから抱き枕一緒に作ろ」

 「うん、ありがとっ!」


 抱き枕で新たな友情が芽生えている。なんだろう少し怖い。


 「よし、じゃあゲレンデからだな」


 「俺は別にいらないぞ?」


 驚いたことに拒否の声。この反応は初めてだ。

 「本気かゲレンデ! こんなチャンス滅多にないぞ!」普通より。


 チャンスって。確かにないだろうが。


 「そっかじゃあ次の人だな」


 別に悔しくなんてないんだからね! と言うかその反応の方が嬉しいです。


 そこからはメガネ有り無しや髪をほどいてほしい。などのリクエストを受けながら携帯へツーショット画像保存されていく。

 途中少し怒った顔にしてほしい。ハグしながらがいい。なんてのもあった。ハグはお断り。


 そして吉田君の番。


 「吉田君この前はごめんな」


 「この前? 何の事?」


 吉田君は気にしていないみたいだがここは言わないとな。


 「自己紹介の時の事。先生が途中だったのに飛ばしちゃったろ。アレの事」


 吉田君は頭をかきながら「別に兎月くん悪くないよ。気にしてもないし、その僕は眼鏡アリでお願いします。あとポニーテールがいいです」


 謝罪よりも欲望の方がまさったか。自分に素直な人である。


 撮影会も終わりを迎えようとした時に先生が帰ってきた。


 「あぁ~ずるい! 先生も撮ってほしい」


 これが担任で大丈夫なのか少し不安になる。


 「先生は眼鏡なしの怒った顔で、あとオプションでお姫様抱っこを所望するわ!」


 ダメだこの担任。


 生徒達のブーイングをものともしないで、抱っこされようと腕を首に回してくる。


 「先生らしい行動をしましょうね」


 少しトーンを下げた声で言いその場を収めた。


 あと気になったのだが、スマホ画面を見つめながらわんこが悪い笑みを浮かべていた。さっきのナデナデタイムの事をまだ引きずっているのか?


 「先生も戻って来たし授業をはじめませんか?」


 僕の真っ当な提案を否定した人がいた。


 「放課後話す時間無いんだから今は質問コーナーよ!」と担任。


 おい担任! それでいいのか! 話が違うぞ!


 「兎月くん! ずばりミステリアスUSA姫って会った事ある?」と担任。


 うわっ、会った事と言うか「本人です」とは言えない。適当に煙に巻くしかないな。さてどうすれば。

会った事が無いと言えれば簡単だが、会った事ないですは言えないよな。同じラビットテールのモデルしてるし。


 「ありますよ」この一言の後クラス中から羨ましいとの声が。「中にはCGじゃなかったんだ」の言葉も。


 「どんな人なの? やっぱり性格よくて澄んだ声。それでいてボン、キュッ、ボンな体系?」


 完全に理想像を押し付けてきているな。少しは現実を教えた方がいいかな?


 「性格は少し暗い感じ? 胸はそんなに大きくないと思いますよ。後は潔癖症かな。コンビニのおにぎりは食べられるけど、ひとが握ったの嫌がったりする。手もよく洗うし。高校は通信制とか言ってた気がする。友達もいなくてほとんど引きこもりだとか。外に出るのはモデルする時だけだって言ってたかなぁ。あと極度の人見知りだって言ってた。専属のカメラマン以外撮られたくないらしいです」


 即興で作ったUSAの設定。意地悪だっただろうか? でも理想が高すぎる人より身近に感じてほしい気持ちもあるんだよね。


 「へぇ~完璧な人間だと思ってたのに」

 「なんか身近に感じるかも」

 「人間味ある人なんだね」

 「人見知りなのによく兎月くんとお話しできたね」


 「ほら僕もモデルやってるし、それに小さい時からの知り合いだもの」


 「いいなぁ私も会ってみたい」

 「なに兎月くんってUSA姫と幼なじみなの!? なんて羨ましい!」

 「お前が枯れてる理由がわかったきがする」普通より。


 「なんだよ枯れてるって?」


 「ほら告白全部断っただろ? あれっていつもUSA姫見て育ったから美的感覚がマヒして高望みを振り切ってるんじゃね?」


 言われてみれば少しわかる気がする。うちのメイドズとか美人しかいないし、普通の意見なのに悔しい。


 「USA姫のサインとかもらえたりしないかな?」と委員長。


 あなたもファンですか。


 「それは無理。そもそもUSAさんサインないもの」


 僕の発言に驚くクラスメイト。確かに人気モデルなのにサインが無いとか普通あり得ない。

ただここには嘘が一つある。USAのサイン自体はあるのだ。母さんとメイドズが悪乗りで作ったサインが。 発表する場がないだけなのだが。


 「そっかーじゃあ兎月くんのサインほしい」


 委員長は意外とアホ子なのかもしれな。USAですらないのに何で僕のサインがあると思うのか。


 「僕もサインないですよ。芸能人でもないしサインとか考えたりしないよ」


 「それじゃハンコは? それならあるでしょ! それ頂戴!」


 血走った眼で言い寄られその迫力にまけて「はい」しか言えなかった。

 まるで助け船のように鳴るチャイムに救われ委員長は手を放し、一時間目の兎月優質問会は幕を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ