第12話 放送と殴り込みと202
やっと昼休み。休み時間のたびにラブレターを持ってくる委員長にガンガン精神そがれたがお弁当で回復させよう。
自然と机を寄せてくるわんこ。前の二人も同様に昨日と同じく四人で食べるようである。
「昨日も思ったけど、兎月くんのお弁当美味しそうだね。誰が作ってくれるの?」
わんこの興味は僕お手製のお弁当らしい。今日はダイエット弁当になっている。早くメイドちゃん痩せてくれないものか・・・
「これは僕の手作りだよ。母さんは仕事しかしない人だし」
「すごいね。卵焼きとか色合いが綺麗」
「食べてみるか?」
キラキラした目でわんこが「うん」可愛いなおい。
「どうぞ」と言いながら弁当箱を差し出すと卵焼きをパクり。そこから普通も手掴みでオカラからあげを強奪。ゲレンデはリンゴを丸かじりしていた。ゲレンデの昼食にはもう触れないでおこう。
「うま! 何の肉だ。これ鳥じゃないのはわかるぞ」
「それはオカラからあげね。河本さんどうだった?」
「すごく美味しい。甘目の味に出汁が効いてて。これじゃ私の方が料理へただ」
わんこの手が止まり自分で作ってるのか、お弁当を見つめ肩を落としている。
この子めんどくさい。仕方がない励ますか。
「河本さんのお弁当も綺麗な卵焼きだよね。昨日のウインナーの象さんとかびっくりしたし。結構料理なれしてるよね」
そう言いながらわんこの頭を撫でた。周りから少しうるさくなったがわんこが目を細め尻尾を振っているのでよしとした。
「ずいぶん急いで食べるんだな」と普通。
「ちょっと用事があってな」
これから放送室へ行って告白のお断りをしないといけないのである。
「告白のお断りか? それともOK?」とゲレンデ。
「いや放送室」それだけ言って立ち上がり空の弁当箱を机にしまって放送室へ足を向けた。
教室を出て一歩目でラブレターを貰った。その後ろには昨日顔を赤くしたバスケ部の部長。
「うまく書けてないかもしれないが読んでくれ」
「ありがとうございます」男からいらねーよ!
逃げるように放送室へ向かう。
放送室についた時、僕の手には5通のラブレターが握られていた。
「やあ、よく来た。臼井先生から話は聞いている。隣の部屋のマイクを使って話してくれたらいい。準備ができたら言ってくれ」
優しそうな二年の先輩は佐音太一と名乗り、放送部部長だと教えてくれた。
「大丈夫です。すぐ行けます」
「そうかじゃあ席について。僕が手を上げたら放送スタートだ」
ガラス越しに手が上がる。僕はゆっくりと深呼吸してから言葉を選び放送を開始した。
「一年一組兎月優です。皆さんの大事な昼休みに私用で放送する事にまず謝罪させてください。昨日と今日、僕にラブレターで告白しくれた方々にまず、ありがとうございます。と言わせてください。告白の返事なのですが申し訳ないですが全てお断りさせてください。本当に申し訳ありません。放送は以上です」
実際マイクに頭を下げながら放送を終えた。
先輩は「誠意ある奴なんだな。マイク越しとはいえ頭下げるなんて。悪い噂が立たないように協力してやるよ」
「はぁ、ありがとうございます。では時間もないので失礼します」
頭を下げ一組を目指す。途中どのクラスからもすすり泣く声やこの世の終わりを感じている生徒が何人もいた。罪悪感が半端ない。学校全体が泣いているようだった。
五時間目も終わり次の教科の準備をしようとした時、僕の名を叫び入ってくる大柄の男子生徒がいた。ネクタイは黄色三年である。
「どうしたんです部長?」
ゲレンデの関係者のようだ。
「俺は兎月優を殴らなければならない! 殴らないと収まらない!」
バイオレンスな人が来た。正直係り合いたくない。
「あの? 先輩? 自分が兎月です」
正直に名乗り出た。先輩は拳を固めているが僕と先輩の間にゲレンデが壁になって入ってくれた。頼もしい奴である。
「先輩落ち着いてください。何があったんですか? いつも温厚な先輩がどうしてこんなに」
「ゲレンデ少し黙ってろ! 昼休みの放送の事だ。なんであんな簡単な方法で告白を断る! 誠意ってもんがちっとも感じなかったぞ! 言い訳ぐらいは聞いてやるから言葉を選んで話せ」
言葉ミスしたら殴られるのかな。この人超怖いよ。ゲレンデもっと先輩を押さえつけておいて。
「先輩すいません。まずこれを見てもらっていいですか?」エコバックを開きラブレターの山を机の上に置く。
先輩の驚く顔面白いな。目が二倍以上に開いたぞ。
「この量を見てもらえばわかると思うのですが、これだけの数昼休みまでに中身を見るのは不可能です。もしこのラブレターの中に「昼休み屋上で待ってます」や「中庭に来てください」なんてのがあったら対応できないじゃないですか。だから校内放送を使って告白をお断りさせて頂きました。先輩に迷惑かけてすいませんでした」
しっかりと頭を下げ誠意を見せる。
「いや、悪かった。確かにそうだな。だがな、その、会うだけ会ってやれないか?美樹があまりに不憫で。俺はあいつの幼なじみでさ、その何というか、あいつがつらいのを見てるとこっちが参っちまってな」
幼なじみ思いの良い人なのだな。てかさ、どうせその幼なじみが好きなんだろ? 勝手にそっちでくっ付いてろよ~
「明日の昼休みでもいいですか? 放課後は忙しくって」
「あぁ、柔道場に来てくれ。ゲレンデ場所教えて一緒に来い」
「うっす」
「悪かったな。じゃあ明日よろしく頼む」
先輩が去って行きゲレンデに礼を言った。
「試合以外であんなに殺気立った先輩見たの初めてだ。正直足がすくんだよ」
「モテるのも大変なんだな。俺モテなくていいや」
普通よ。お前のその言葉がとどめだよ。
後日談
予想通りと言うか美樹先輩の告白を丁寧に断り、その横で柔道部主将からも告白され断った。フラれた二人は楽しそうに笑って、
「フラれた者同士付き合うか?」
「うん」
他所でやれ! と本気で言ってやろうかと思ったが何とか飲み込んだ。
余談
ラブレター総数は202通まで伸びました。




