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第11話 雪崩と姫

 

 下駄箱の前に佇む僕は、今日最大になるだろうため息をもらした。

 下駄箱開けたら僕の上履きに積まれた大量のラブレターだろう封筒が雪崩になって足元へと落ちてきたのだ。

 何だこの数。パッと見でも50枚以上あるぞ。

 中学でもラブレターはもらったことあるが、ここまで大量に貰ったことはない。この枚数はもはやイジメではないだろうか・・・

 

 少しの間フリーズしている僕にわんこが挨拶をしてきた。

 

 「兎月くんおはよう。すごい事になってるね」


 確かにすごい事になってる。 

 

 「おはよう」と笑顔で返し、落ちているラブレターを回収した。わんこも手伝ってくれたので素早く回収できたが周りのざわざわ声に嫌気がさす。

 

 「わぁーなにあれすごーい」

 「すげーラブレターの雪崩だ」

 「あんなにモテる奴っているんだな」

 「どっちからの告白? 男の方が多そうだな」

 

 学校辞めたい。

 

 「よかったら使って」


 わんこなりの気遣いだろうか、昨日クジで使ったエコバックを差し出してくれた。

 

 「ありがとう助かる」

 

 エコバックにラブレターを突っ込みなが対策を考える。

 できるだけ丁寧にお断りする気でいるがこの枚数だ。内容を確認するだけでも時間を取られそうだ。

 

 教室へ向かう足取りが自然と重くなる。

 

 ゆっくり進む横でわんこが「私も頑張らなきゃ」とかつぶやいた。そういうのは聞かれないように言わないとダメだろ。

 

 「あの~よかったら読んでください!」


 教室までの廊下で見たことのない女子から封筒を渡された。それを受け取り「ありがとう」と言ったら周りからキャーキャー聞こえた。


 一通増えた。もう、うんざりだよ~

 

 教室につくと黄色い悲鳴。何これ? メガネ装備なのに。それを無視して自分の席へ。


 悲鳴の原因発見。机の上にラブレターの山が・・・

 

 フリーズしてもいいよね。てか、本当にいい加減にしてほしい。何通あるか数えるのが大変なぐらいあるぞコレ。

 中には原稿用紙サイズの封筒も。それを開け中身を見ると小説なのか題名が兎月優様へ送る愛の小説と書いてあった。変化球すぎる。

 

 それらをエコバックにしまっているとゲレンデから声を掛けられた。


 「よう! モテモテだな。早くも伝説ができたな」

 

 やめてくれ。こっちは好きで貰ってないし平穏な生活がしたいだけだこのやろう!


 「おはよう、こんなに貰ってもな」

 

 回収作業を開始すると委員長から挨拶が「おはよう兎月くん、ちょっとだけ時間貰っていいかな?」


 えっ委員長も!? 地味娘が出した勇気。無駄にできない。付き合いましょう(告白を受ける時間ぐらい)

 

 「はい大丈夫です」


 「廊下に出てもらっていい?」


 委員長の言葉通りに廊下に向かうと5人の女子が手紙を持っていた。


 「「「「「よかったら読んでください!」」」」」


 「ありがとう」たぶん引きつった笑顔だと思う。

 

 わぁーキャー言いながら去る女子達。それを見ていた担任の顔よ。ニヤニヤすんじゃねー!

 

 「やっぱりモテモテね、リア充め!」


 教師がそう言うこと言うのかよ。


 「おはようございます」だけ言って席に向かった。



 HRの終わりに担任を呼び止めエコバックの中を見せる。


 「すごい数ね。ここまで行くとリア充じゃないかも。ヤンデレには気を付けるのよ」


 見せただけでわかってくれたか。


 「これを断るために昼休みに放送させてくれませんか?」

 

 一瞬驚いた顔をする先生だったが「いいでしょう。放送部には私から伝えて置きます。放送室の場所はわかるわよね。職員室の横なんだけど」

 

 「大丈夫です。ありがとうございます」ぺこりと頭を下げる僕。


 「全部断っちゃうの?」


 「在学中は彼女作りませんから」

 

 「あら、もったいない。行き遅れても知らないわよ。なんなら先生がもらってあげようかしら」

 

 なに上から言ってやがる!彼女作らないのにも理由があるっての!

 

 「では先生、放送の事お願いします」

 

 それだけ言って緊急離脱した。

 

 

 一時間目も終わり休み時間。とりあえずラブレターの数を数えた。180通。それと昨日下駄箱に入れてあった4通(胸ポケットに入れたまま忘れていた)。

 

 さてさて、どうお断りの放送しようか考えていると「そこの男女!」

 声の方へ視界を移動。そこには姫カットの似合う大変美しい女性。確か二上院姫香にじょういんひめかだったか。自己紹介ではテニス部だとか言っていたな。


 「私はあなたが気に入らないわ!男のくせに腰まで伸びた髪。女にしか見えない顔。それに今もラブレターを見せつけるように数えて。何なのよあんた!」


 この人なんなの?急にイチャモン付けてきて。気に入らないなら無視すればいいだろうに。


 「あら?これだけ文句言っても反撃の一つもないのかしら?ただの臆病者なの?」


 分かりやすい挑発である。さてどうやり込もうか。


 「長髪にしているのはモデル活動のためで、顔は好きでこの顔に生まれたわけじゃないのだけれど。ラブレターもこんなに貰って戸惑っているとしか」


 「男のくせに女装でモデルやってるんでしょ、このマザコン!」


 流石に少しイラッと来たよ。何なんだよこいつ。


 「はいマザコンです。小さい時に父を亡くしていますからね。それに母の事は尊敬していますよ。美に対しての執着は子育てを放棄してまでやっていたほどです。今僕が不自由なく生活できているのは母のおかげなんですから。そんな母を尊敬する僕はマザコンなんでしょうよ」


 あれ?反撃が来ない?と言うか二上院さんの顔が青い。


 「そぅ・・・あの・・・何か困った事があったら頼りなさい! 私はこれでも顔が効くから少しは力になれるわ!」


 それだけ言うと自分の席へと帰って行った。


 何が言いたかったんだか。穏便に済んでよかった。


 「兎月くんすごいね!テニスの姫を凹まして返させるなんて」


 キラキラした目で見てくるわんこ。うん、可愛い。それにしてもテニスの姫か。確かに金もちそうな顔だったな。


 「我がままで有名な奴なんだがな。流石女帝の息子やるな」と普通。


 「凹ませるだけじゃなく味方に引き入れるとは」とゲレンデ。


 てか、見てたんなら助けろよ。


 「兎月くん、はいこれ」


 そんなやり取りの中入って来た委員長が新たに3枚のラブレターを持ってきた。


 なんて日だ!



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