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第1話 兎月 優

 これから始まる定例報告会を思うとため息が出る。


 今僕はトイレの鏡の前で自分の顔を見つめ、またため息。腰まで伸びた艶のある髪、長いまつげ、パッチリ二重、すらっとした鼻、ピンク色の唇、シャープなアゴ、一切ヒゲの無い整った美人。それが僕である。

 ただし性別だけが男であるのだが……


 髪を伸ばしているのも理由がある。母が子供服のデザイナーでありそこの社長で、僕が1歳から子供服のモデルをはじめ今(15歳)に至る。

 母曰く「優くんのために作った服だから優くんがモデルをするのは当然じゃない!」男のぼくにワンピースを作るな!!

 またため息が出た。


 「優様そろそろお時間が」


 その声がトイレに響き僕は歩み始める。

 トイレの外には僕の秘書、高田綾香たかだあやかあだ名は秘書ちゃんが待機していた。見た目はズバリ秘書。綺麗にまとめられたブラウンの髪、赤い眼鏡、薄いピンクのスーツがスレンダーな体系によく似合っている。


 「秘書ちゃん髪縛ってくれる?」


 「はい優様」


 慣れた手つきで僕の長い髪がポニーテールへと変わり「ありがとう」と笑顔でお礼。

 頬を染める秘書ちゃん。


 「では、いきましょうか」


 満面の笑みを浮かべた秘書ちゃんと廊下を歩き会議室へ足を進めた。



 定例報告会は滞りなく進む。暗い室内に映し出される棒グラフ円グラフ。緊張しているのかたまに声が上ずるおっさん。高校生相手なんだ、落ち着け。


 「以上になります」


 やっとか、二時間は退屈な報告を聞いていた。固まった肩を軽くほぐしながら部屋が明るくなるのを待った。


 明るくなると改めて会議室の大きさを感じる。

 そしてこの人数。200人はいるだろうか。しかもこのおっさんたち一人一人が社長や店長と言った役職。それが高校生相手に売り上げの報告だのをしているのだ。ばかばかしいと思わないのだろうか。ちなみに僕の役職は七宝しっぽうグループ会長。どうかしてるよね。


 僕は今、モデルと会長と高校生と言った三足の草鞋を履いた生活。遊ぶ暇すらない現状。そもそもこの会長と言う職は押し付けられて、愚痴が止まらなくなるのでここまでにするけど。


 「みなさんお疲れ様です。これからも慢心せず常に挑戦者として事業に取り組んでください。あと毎回言ってますが社員は絶対に大切にしてくださいね! 社員は家族! これが七宝グループの絶対の約束ですから!」


 言葉の終わりに頭を下げ感謝。どっと拍手が巻き起こる。


 「では、これにて定例報告会を終わりにします」


 秘書ちゃんの美声が響き書類をまとめているとおっさん一人が話しかけてきた。


 「会長このたびはステキなドレスをありがとうございました。ラビットテール(母のブランド)のウエディングドレスを娘が着させていただき、うっ うぅ……」


 おっさん泣くなめんどくさい。


 「それは母からですので、お礼は伝えておきます。それと茶川さん缶コーヒーのアイディアなのですが」


 一瞬大きく目を開きハンカチで涙を拭きとると働く男の顔へ変わった。


 「ご褒美コーヒーなんてどうですか?価格を200円にしてプレミア感を付けるんです。自販機に入れる量も減らしすぐに品切れになるようにしたりしてね」


 茶川さんはすぐにスケジュール帳を開きペンを走らせた。


 「販売する場所もパチンコ店や競馬場と言ったギャンブル性のある場所や、オフィスの休憩所など感情の起伏が激しくなる所へ配置すれば自分へのご褒美に手が出るんじゃないでしょうか?売り切れの蔡の苦情は店舗へ少し謝礼金を渡してクレーム処理をしてもらえば……」


 茶川さんは鼻息荒くメモを走らせ「いけますよ! 絶対いけます! すぐにでも企画部に話を通しておきます」そう言いながら僕の手を握りブンブン握手する。

 僕が茶川さんの目を見ると顔を赤くして手が止まった。


 「すいません興奮してしまい」


 真っ赤な顔で頭を下げ謝罪された。まぁ性別男でも美人さんの顔だもの、なれてますよこんなこと……


 「それでは僕はこれで。明日は入学式なので準備もまだ終わってないし失礼します」


 その言葉を残し僕と秘書ちゃんは自分の部屋へ戻る。そう部屋です。この25階の高層ビルは僕の経営する七宝グループの本社である。ちなみに会議室の前が自宅だったりします。





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