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暖かく見守ってください。
「誰か私を殺してくれないかしら。」
そう呟いてみた。
「また突拍子もないことを・・・。」
私の隣に立つ彼は苦笑している。馬鹿なことを言うもんじゃない、そんな顔だ。
「この首輪のせいで、自殺もできない。自由も聞かないんだもの。誰か私より強い人が切り捨ててくれないかな。」
今日もすがすがしいくらいの青空だ。憎たらしい。私はこんなに苦しんでいるというのに。
「その望みは、お前が気まぐれに逃がしている子供たちと何か関係があるのか?」
「気が付いてたんだ。」
あの泥沼の戦場でよく見ている。素直に感心した。
「まあな。別に哀れに思った、とかじゃないだろ。」
お前はそこまで優しくないし。
失礼だけど、当たりだ。私はそこまで優しくない。この世界も私にやさしくなかった。
「あの子たちの大切なものは私が殺したの。だから私を恨むでしょう。そしたら殺しに来てくれるかなって。」
「何年後になるやら。」
そもそも奴隷商人に捕まって俺たちとおなじになるのがオちだろう。あきれた様子だった。でも0%じゃない。彼らが私を殺しに来てくれたら、きっとうれしくて笑っちゃうよ。そう言ったら、髪の毛をぐしゃっとされた。そのしぐさが、くすぐったかった。
キーン
「またか。」
「あきないよね。この国も。」
これは呼び出しの合図だ。戦争の合図。命のカウントダウンのはじまり。
首輪が意志を持って私たちを操ろうとする。人形達が動き出す。
ドーン
その私たちの上を流れ星のように閃光が流れていく。地平の向こう、今日の敵国が焼かれるのが見えた。
「あれ、神の心臓使うんだ。」
白とも黄色ともつかない無数の閃光が空を染め上げる。きれいだとは思わない。
だってあれは・・・・。
「50年ぶりの適合者が現れたんだ。使いたくもなるだろうよ。」
彼は忌々しげに閃光を見ていた。
「まるで子供だよね。」
新しいおもちゃお手に入れた大人の皮を被った子供たち。適合者の顔を思い浮かべた。きっと正気に戻ったあの子は泣くんだろうね。
「お前も似たようなおもちゃの1つだろう。実験体123番目の子供。」
私の右目を見て彼は笑った。
そんなレベルの国に捕まったのだから、私たちはもっとアホね。そういって笑いあった。
「さて、お前とは明日も会えるかな。」
「さあね。」
お互い、誰かもわからない肉片になっているかもしれないのだ。
「「行くか。」」
彼は戻ってこなかった。