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短編

雷紋夜話

作者: 伊藤大二郎

少女「人間と人型の化物って、どうやって見分ける?」


少年「そうさなあ……、話の途中で脈絡もなく『今夜の月は、奇麗だと思わないか?』とでも訊くといい」


少女「それ、聞いたことあるね。御一新の後に、I love Youって言葉をなんて和訳するかってなった時、「まとも相手なら『月が奇麗ですね』とでも言えば意味は伝わる」って夏目漱石が言ったんだっけ。創作らしいけれど」


少年「へぇ、それは初耳、なかなか面白いエピソードだね。この言葉、それなりに奇麗でロマンチックだけど、一般人なら、突然そんなこと言われたら不審がるか戸惑うさ。ただ、人間にそんな言葉かけられて、黙っていられる化物はいないよ。殺し合いの最中だろうと、必ず気の利いたことを言おうとするだろう」


少女「よくわかってるんだね、化物のこと」


少年「言ってみただけさ、本当は、そんなこと言ってる暇なくぱくり食べられるかもよ」


少女「かもね……。ところで、佐渡島さどしま


少年「うん?」


少女「今夜の月は、奇麗だと思わない?」


少年「うん、名月というやつだ。不思議なもので、夏というだけで月が明るく見える。酸素が違うんだろうね」


少女「いい夜だね」


少年「そう、思う」


少女「佐渡島ってさ、もしかして化物?」


少年「言ってなかった? 月夜に化ける妖怪狸男だよ。……あれ、伊東いとうは違うの?」


少女「……妖怪退治屋の家系だって、三回くらい言ったよね」


少年「ふうん、まあいいや。もう少し月を見ていようよ」


少女「呑気……」


少年「いや、ね。どうにかこの場をごまかすいい台詞を考えているんだよ」


少女「……早く思いつきなよ」


少年「ううむ」



 その十七分後、化物は退治された。

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