第90話-戦闘開始-ミノタウロス-2
エステとココは徐々にミノタウロスを押し返す
それはエルフ達にとって……少なからず、１歩前に進んでいると言う事
今までただミノタウロスに勝てず、蹂躙され続けて日々から抜け出した
それだけでエルフ達にとって今この時が心が踊っていた
「ほら、弓を撃つタイミングずれてるわよ！ 訓練してなかったんじゃないの？」
「うるさいわよ！ あんただって矢外してるでしょ！」
それは少なからず、エルフ達がハーピーだけの時にまであった『覇気』
ミノタウロスが来てからはどんな事をしても勝てず、ただただ怯えて
村に隠れていたのだ……ストレスも溜まる……今それは発散する時
「ブーメラン隊、いっせーのせっでブーメラン投げるよ！ 外さないようにね！」
「わかってるわよ！ 前線のお兄ちゃんが傷を付けた場所を直撃させるよ！」
「もっちろん！ 絶対外さないように投げる！」
エルフ達のやる気が思いが前線で戦っているのエステの背中を押す
それはどんなにも心強く……そしてそれをさらに発揮させるためにココは
ジャングルを走り回り、指示を飛ばしていく
「アシリアさん、それ火矢です！ 今は普通の矢で十分なので、それで！」
「あいよ！ 私の方はいいから、他に指示飛ばしてあげな！」
「コナさん、矢をミノタウロスではなく、空中から飛んでくる矢を落として！」
「まっかせなさい！ 敵を撃つより動く的を撃ち落とす方が面白いからね！」
「リミさん、あのミノタウロスは脇腹に傷があります！
そこにブーメランを！ リミさんはそういうの得意ですよね？」
「わかっているじゃない！ もちろんよ、任せておきなさい！」
そしてココは散開している味方エルフ達の場所へ向かうために前線を駆け抜ける
もちろん、敵もそれがわかってきて、ミノタウロスの１匹がココを狙う
しかし……ココの前にエステが立ち、ミノタウロスを挑発しながら左脇腹を斬る
「お前の相手は俺だ、筋肉馬鹿が、女子を狙うなよ、俺が相手になってやる」
ミノタウロスは魔物だが……牛頭の『獣』でしかない
それさえわかってしまえば、ただ肉体が頑丈な獣でしかない
人みたく考え行動する能力は格段に少ない、ならばこちらが相手を翻弄すれば良い
だからこそ、エステはミノタウロスを挑発し、ココから目線を奪う
『ありがとうございます、エステさん』
ココは心の中で感謝を言いながら先程居た場所の反対側に渡ると
味方のエルフ達に指示を飛ばす
「アッコさん、矢３本まとめて撃てますよね？ それなら矢落としじゃなくて
ミノタウロスか後方の敵エルフを狙ってください！」
「りょーかい、ココ、矢の量が少なくなってきたから余っている子から
貰ってきてくれないかな？」
「もう用意しています、足元に置いといたので使ってください」
アッコは唖然とした、足元を少しだけ確認するとそこには矢の束が置いてあった
弓隊の中には片方……普通の矢と火矢、片方しか打たない者がいる
ココはそれをわかっており、瞬時にそれを悟り、自分の矢筒に詰めていたのだ
片方しか打たないのなら、その片方をだけを用意して味方の足元に置いて行けば
効率も上がる、もちろん……消費を抑える事はできないため
ココは前線を横切りながら当たらなかった矢を何本か拾い、それを味方に配る
それを行っていたのだ……その行動に気づいたのはエステ1人
だからこそ、ココが横切るタイミングでエステも前線を下げココを守っていた
「エーナさん、無駄打ちしすぎです！ 威力はあるんですからちゃんと狙って」
「相手は動いているんだ！ そんな事やってる余裕は……」
「大丈夫、その分は味方が弾幕はってくれてます、落ち着いて当ててください」
それだけ言うとココは走り出す、その光景を見たエーナは横目で少し嬉しそうに
ココに向かって独り言を洩らすと、弓を構える
『まったく……こんな時に成長しちゃって……負けてられないわね』
エステがミノタウロスを止め、弓隊と投擲隊がエステが攻撃したミノタウロスに
追撃をし、ココがそれを援護する……それは相手のエルフにもわかる光景
「嘘……彼奴らあんなに連携できたの？！ 私達も負けずに矢を撃つわよ！」
「あと少しで矢無くなるわよ！ そんなに持って来てないんだからさぁ」
それは慢心……ミノタウロスが強いから私達は後ろから援護してればいいや
と言う少し甘え、それが今、エルフ達にとって大打撃となった
もちろん……それだけがいけないわけではないが、全体的にミノタウロス側は
エルフは弱い存在で、簡単に蹂躙できて当たり前と頭の中で考えていたのだろう
そうミノタウロスの後方でエルフ達が言い争っていた時、1人のエルフの地面に
倒れる、どうして倒れたのか疑問に思ったのか、もう1人のエルフが近寄った時
後ろからナイフを突き刺される、それを見たエルフ達のリーダーらしく女が
その女性に声をかける
「お前……どこから来た？！」
その女性は指で上を指した……上と言っても木と空しかない
人間が空を飛んでくるわけがないし、それなら木から飛び降りたと言うのか
そう思った時にはもう……時既に遅かった
女性に話かけたエルフは心臓を刺され、地面に倒れる
心臓に突き刺さったナイフを抜き取るとナイフにこびりついた血を払い
その女性は姿を消す、その場に誰も聴こえない独り言を洩らし
『……これで十分でしょ、このままハンナの援護に行く』
それはミヤであり、敵の拠点を破壊した直後に木の上から敵のエルフが油断する
のも待っていた、そして……話だした直後、上空から飛び降り１人を殺し
さらに2人倒す事に成功した、それで十分な援護になり、エステがそれに気づく
「こっちの遊撃が相手の弓を止めてくれたぞ！ 後はミノタウロスだけだぞ！」
エステは敵の弓弾幕が無くなった事により、前へ走りだし、ミノタウロスを斬る
それも地面を蹴り飛び回るように斧を左右に回して行く
「削って削って……何時かはお前の心臓を削る……それが俺達のやり方だ」
細かな傷を付けられたミノタウロス達はエステを狙うが、エステの後方からの
矢の弾幕とブーメランを直撃し、何体ものミノタウロスが倒れて行く
そして気づいた時にはこちらは『31』名、負傷者0、死亡0
相手のミノタウロスは数えるほどの数しか立っている者はない
それは誰がどうみてもエステとエルフ達の勝利を示してくれている
生き残ったミノタウロスは後ろを向き、逃げて行く
それを追撃しようと走り出したエルフ達にエステは大声を上げる
「これ以上は意味ないさ……これ以上はただの暴力だ
これだけの恐怖を与えてやれば、次からは襲ってこないだろうよ」
エステは武器を納めると後ろを向き、ハーピーの拠点の方へ走り出す
それに従うように武器を構えていたエルフ達も武器を下げ、エステに付いていく
ココはその状況を確認すると、味方とは逆の方向の村を目指し走り出す
