第79話-ステイラーの血縁-
中でミヤと長老の話が始まった頃、長老の家の外ではハンナがスティナに質問する
「どうして素直に……外に出たんだ?」
ハンナはミヤの過去話なら全員あの場所に居ても問題ないと思っていた
それはエステも同じ気持ちであり、4人の『報酬』となっていた
しかし……2人の考えと違い、スティナは真面目な顔で説明する
「だって……ミヤの大切なお話ですよね、それを私達が聴いちゃいけない気が
したんです、本人が聴いてそれでも話をしてくれるその時まで待ちましょう」
「……まぁ、元々はスティナが決めた事だしな、それに私は従うわ」
「わかった、俺もミヤが言ってくれるまで黙っている事にする」
2人は納得したように頷き、思い思いに言ってくれる
しかし……実際はそうじゃないのをスティナは知っていた
4人の報酬なのにミヤの話で合っても報酬なのだから聴きたいと思う心は
少なからず誰にでもあるはずだから……それでもスティナの言葉に納得
してくれたのは2人がスティナそして……ミヤを信頼していたからである
そうスティナは考えながら長老の家を離れ、休んでいいと言われた家に向かい
歩き始めた時……ミミナがスティナに近寄り、話かけてくる
「私が案内するわ、他の2人もそれでいいでしょ?」
ハンナとエステは頷き歩き始めた時、ミミナは小さい声で『外よりましよね』
と言ったのをスティナは聴き逃さなかった
そして……長老の家の中ではミヤが長老の話を聴いていた
「あなたはお父さんとお母さんの事は覚えていたかしら?」
「一応……家でぐうたらしてる父親と何時も病気がちなのかフード被っていた
母親だから……正直微妙な所だけど」
「……なるほどね、それであなた……いえ、『ステイラー』は元々
エルフ族の娘に付けられる言葉なのよ」
「と言う事は……私の親のどっちかがエルフ族って事?」
「そういう事ね、たぶんだけど……あなたの母親は『ミリティ・ステイラー』
じゃないかしら? 覚えていてくれると嬉しいのだけど」
「覚えているわよ……たしかにミリティだったけど、それが何かあるの?」
「ミリティは私の娘なのよ……ミリティがまだ若い時にあなたの父親と
駆け落ちと言うか……この村を抜けて外の世界に出て行ったのよ」
そう長老が言うと、ミヤは少しびっくりした顔で長老を見る
それは母親がエルフ族だったのと、父親がこの土地に来ていた事である
そうミヤが考えていた時、長老は話を続ける
「あなたの父親は船が沈没してこの土地に流れ着いたのそれをたまたま
散歩していたミリティが見つけて村まで運んできたのよ
昔はね、ミノタウロスもいなくて……平和な土地だったから
外の人物が珍しくても村の皆も外の人間にやさしかったのよ」
ミヤは長老の昔話を黙って聴き続ける……それはミヤの知らない親の話
ミヤ自身、両親に昔話を聴こうと思った事はなく、気づいた時には
抗争に巻き込まれ両親は土の中に眠ってしまったのだ
だから……今さらになってミヤはいなくなった親の話を聴けたのが少し嬉しかった
「そして時間が経つにつれ、あなたの父親は元気になり、村の皆との仲良くなった 頃、あなたの父親は自分の土地に戻ると言い出したのよ……その頃に船はなく
どうやってあなたの居た土地まで行ったかは知らないけど……消えてしまった
だから私達は2人が何かに巻き込まれて消えてしまったのだと思い込み
それから時間が経つ事に忘れそうになった時、ミヤ……さんに会ったのよ」
『消えてしまった』、ミヤにはその一言が気になってしかたなかった
船もなく移動手段はない、いかだなどを作ったとしても村の人間は気づく
ではどうして、ミヤ達の土地まで移動できたのかは……
それはミヤの母親が海辺で拾った1つの石に問題があった
それを見つけたのはミヤの父親であり、父親の仕事は『遺跡探索員』だった
それがどこの遺跡から見つかった物かは知らないがミナセは見つけた
『あの石』と同じ効果を持つ物であった、それを知ってか知らずか
ミヤの両親は使ってしまい、行方不明となった
これが……この話の真相であり、長老とミヤがわかるはずのない部分である
「……なるほど、私の父親が何の仕事をしていたかは知らないわ
基本的に家にごろごろしてたほうが多いし……
まぁ、母親がフードを被っていたのはエルフ族なのを隠していたのもわかった
それだけわかれば十分よ」
「そう? ああ……そうそう、2つほど私から良いかしら?」
「何かしら?」
「ミリティの娘と会えて嬉しかったわ……私の孫と会えたのだから
それとあなたの眼……たまに色が変わる事がなかったかしら?」
「眼の色?」
「そう……ステイラー家の血縁だけに流れる特殊な物でね
普段は黒だけど……何かを助けたいと思う時だけ蒼色に変わるのよ
それがなんだって言うのだけど……もしもミヤさんがそうなったら
守りたい人ができたって事よ、だからその人を大切にしてあげてね」
「……わかったわ、あと……『御婆ちゃん』、私の事はミヤで良いわよ
あなたの孫なのだから、遠慮されるとこっちが困るから」
そうミヤから長老にそう言った時、長老は驚きながら涙を流し
ミヤの両手を取ると笑顔で言う
「ありがとう……生きてこうやってあえて……これからも頑張ってね
ミロウ・ステイラーの孫、ミヤ・ステイラー……私の大切なお孫さん」
ミヤは握り締められた手を解くことなく、そのままの状態で
微笑みながら長老である、ミロウに言う
「ええ、ミロウお婆ちゃん、両親……の分まで生きて
そして、私の大切な人を守るわ」
そう言った後、ミヤはミロウの手を解き、立ち上がると外に出て行く
それを見送りながらミロウは小さな声で独り言を洩らす
「……ミリティ、あなたはもうこの世にはいないのね
ミヤは言わなかったけど、なんとなく予測は付いていたのよ
でも、あなたが外の世界で見つけた物はきっと無駄じゃなかったわ
それをミヤが証明してくれるから、見届けてあげてね」
ミロウは家の天井を少し見上げた後、眼を瞑り……今は亡きミリティに祈る