第66話-ミナセの過去-11
ミナセとローラントはヘンデスヘルスが守っていた箱を開ける
するとそこには……鞘に収まった『ロングソード』と
石が数えた範囲で10個入っており
それを見たローラントは溜息混じりに言う
「なんだよ……ただのガラクタかよ……」
しかしミナセにはその剣がただのロングソードには見えず
剣の周りにある石も記憶にある事から、ローラントに言う
「ねぇ、ローラント、箱の中にある石なんだけど
これ、前に私がここに飛ばされてきた時に持ってた石かも」
そう言うとローラントは慌てた表情で箱の中にある石を1つ取り
凝視し始める……が、しばらくするとミナセに質問してくる
「で、その石だったとして……これはどうやって使うんだ?」
「さ、さぁ……?」
『その石に行きたい場所を念じろ、そうすれば飛べるぞ』
ミナセには不思議な声が聴こえたので不思議な顔で辺りを見回していると
ローラントにはその声は聴こえない様子でミナセの事を見ている
「どうした? 何かあったのか?」
「えっと……その石の使い方は行きたい場所を念じればいいのよ」
「そうなのか? まぁ……一応2つ持って試しに使ってみるか」
そう言ってローラントは箱の中の石をもう1つ持ち、石に頭を付けると
ローラントの姿がこの場所から消える
『言った通りだろ?』
「……どこにいるの? 姿を現しなさい」
ミナセ1人だけになった場所には剣と石と箱ぐらいしかない
そんな状況でミナセに話かけてくるとしたら……どこかに隠れているかだ
『さっきから目の前にいるぞ、お前が凝視している剣だ』
「へ?」
ミナセは驚き、箱の中にある剣を両手で持ち、鞘から抜こうとするが抜けない
『ミナセには抜けない……お前には『思い』が足りないからな」
「どうして……私の名前を知っているの?」
『さてな、お前達が箱を開け俺が目を覚ました時にはミナセ・フィーナベルク
その名前と顔を覚えてただけだ』
「……そうなんだ」
『それと、俺の名前だが……ヘ……思い出せないな』
その剣のその発言でミナセは理解した
この剣の中にある思念は『ヘンデスヘルス』なのだと
それをわかったのは今、この剣がヘと言った事と喋り方、声までが同じ
だからあの時、ヘンデスヘルスは私にこの剣を託したのだと
「名前覚えてないのね、じゃあ……変わりに私が付けてあげようか?」
『別に名前なんていらないが……お前が手にいれたんだ、自由で付けろよ』
「じゃあ、そうね……ロスト・ヘレン・ブレードなんてどう?」
『どういう意味だ?』
「ロストは失われた、ヘレンは愛称、ブレードは剣、遺跡の本で覚えたのよ」
『合わせて失われた剣の愛称か……まぁ、名前を忘れた俺にはちょうどいい』
「ところで、ロスト……どうして私にはその剣は抜けないの?」
『この剣を作った男は……剣の抜く人物の思いに同調して抜ける仕掛けを付けた
その思いは……よくわからないが、ミナセにはない物みたいだ」
「へぇ……私にない物……スティナにならあるのかな」
『スティナ? お前の家族か何かか?』
「そんな所……あ、でも……私、ダストデビルに巻き込まれてからここに来たんだ
ロストを渡すにしても渡せない……わね」
『なんだ? お前は俺をスティナとか言う奴に渡すつもりか?』
「そう、だって私に足りない物はきっと……娘のスティナが持っているはずよ」
『で……そいつに俺を渡せたらどうするんだ?』
「あなたにスティナを守って欲しいのよ」
『は? 剣の俺に人間を守れって無茶な事言う
まぁ、お前がそう言うのならそれに従ってやる』
「だけど……今頃、スティナがどこにいるかわからないし
過去に戻れたら楽なんだけど……」
そうミナセが言った時、ロストが微笑みながらミナセに言った気がする
『戻れるぞ? まぁ、俺の力……1回切りだが
俺を手に入れた褒美にお前に使わしてやるよ』
ミナセは嘘でしょ?と言った表情で剣を見るが……剣の表情は読めない
ミナセはそんな状況の中、沈黙していると剣が喋り出す
『お前が飛びたいと思う過去を念じろ、正しお前に起きる『内容』は変わらない
そのダストデビルとかに巻き込まれるのなら、石を余分に持つんだな』
ミナセは1つ箱から石取ると、剣に言う
「本当に過去に飛べるの? 嘘じゃないわよね?」
『当たり前だ、俺は古代の遺産だ……できない事はない』
そうロストが言った時……ミナセの目の前に驚きの光景が広がっていた
その光景はミナセがダストデビルに飲み込まれる数時間前
もちろん、剣を手に入れた記憶を持ったまま過去の自分の家にいる
『どうだ? 俺の事を信じたか?』
「ええ、すごいわね」
そうミナセとロストが話をしているとミナセの後ろから声をかけられる
「あれ? お母さん……もう起きてたの? 早かったね」
それは2年前のスティナ、まだ幼い表情をしておりミナセが剣を教えた頃だと思う
そんなスティナを見たミナセはスティナを抱きしめながら言う
「スティナ……ただいま」
急に抱きしめられたスティナは両手を上下に振りながらミナセに言う
「く、苦しいよ! お母さん、どうしたの?!」
スティナがそう言ってるのにも関わらず、ミナセは抱きしめている両手を離さない
そんな光景を地面に落とされたロストは喋らず心の中で思う
『本当は力を貸す気もなかったが……若きお前の友だ
ミナセに力を貸してやる、それでいいだろ?……過去の俺』