第48話-偶然ではなく必然のように-
「私の名前は『ミナセ・フィーナベルク』、スティナの母親よ」
「……ミナセだと……?!」
リドラーさんも驚いていたが、一番驚いたのは私だ
あの時、お母さんは塵旋風に飲み込まれ
どこに飛ばされて行方不明になったのだから……
「お母さん……生きていたの?」
お母さんは笑顔で私のほうを向くとピースをしながら私に言う
「ふふふ、実はねー、飛ばされて落下した場所が別の村の屋根で
そこも藁家だったから衝撃和らげてくれて、そこで面倒見てくれたの」
「そ、そうなんだ……」
あいかわらずの運の良さと言うか、この人は死ぬ心配をしない方が
心臓に良いのかと思うほどである。
「あのミナセが、スティナの母親とは……だが、俺がお前に勝てば
国兵など簡単につぶせるって事だろ?」
「……あん? 雑魚の癖に調子に乗ると牙へし折るよ」
その時のお母さんからはいつもの優しさなどはなく、『殺気』が感じ取れるほど
怒っているようにも見えた、そう私が考えていると、お母さんがこちらを向き
笑顔で倒れている私の頭を撫でながら言う
「すぐ終わらせるから……そうそう、一応私の戦い方を見ておきなさい
少しでも勉強になるわ」
「うん、お母さん、頑張って」
お母さんは『任せなさい』と言うとリドラーさんに突撃する
その時のお母さん……ミナセはまるで踊るように武器を振るっていた
リドラーさんにミナセがツヴァイヘンダーで斬りかかると
それを腕のガード部分で受け止めた直後、ツヴァイヘンダーの背中に仕舞い
空いていた手にショートソードを持ち、横に薙ぎ払う
それをリドラーさんが後ろに避けると、ミナセはショートソードを仕舞い
腰にある投げナイフ1本をリドラーさんの心臓めがけて投げる
しかし……その攻撃をリドラーさんは左のバグナグのガード部分で受け止めると
その隙をついてミナセはショートソードで斬りかかろうとする
その時、リドラーさんは微笑みながらミナセに右拳を振るいながら言う
「もらった……!」
しかし、リドラーさんが捉えたのは『ショートソード』
拳によりショートソードは吹き飛ばされたが、ミナセはそこにいない
「チッ、どこだ?!」
「上よ、上……!」
ミナセの言葉にリドラーさんが対応するべく両手を上に構えるが、それもフェイク
既にミナセはリドラーさんの後ろに回っており、そこから剣を振るう
その時、リドラーさんは油断していたのだろう、『またショートソード』だと
そう思ったから、左手を後ろに回し、その攻撃を感覚で受け止めようとした
「……ちょっとだけ手加減してあげる」
しかし、ミナセが手に持っていたのは『ツヴァイヘンダー』であり
リドラーさんの背中を殴ったのは『ツヴァイヘンダー』の持ち手の柄部分
「ぐっ」
リドラーさんがその衝撃に少しよろめいた所にミナセの回し蹴りが飛ぶ
それも頭上めがけて……それを対処できないリドラーさんは直撃し
その場に倒れ込む
「ま、気絶程度でしょ……」
ミナセは余裕の表情でツヴァイヘンダーを背中の鞘に仕舞うと私に近寄り
笑顔で手を伸ばしながら言う
「ほら、早く立ちなさい……仲間があなたを待っているわ
私は昔の仲間を助けに行ってくるから……頑張って、スティナ」
お母さんは私が手に取った手を引っ張り私を抱きしめた後
走ってアイリスさんの方向へ行く
私は少し寂しく、お母さんに話したい事がいっぱいあったのに……と思いながら
私は皆を助けるため……母親と別方向へ走り出す。